AI株への資金シフトでビットコインETFから45億ドル流出か、ハッシュデックスとシュワブが予測する反転のシナリオ
2026年7月7日 11:34
2026年上半期、ビットコインは厳しい局面を迎えた。米国スポットビットコインETFからは6月単月で45億ドル(約7245億円)の純流出が記録されたが、ハッシュデックスとチャールズ・シュワブの大手金融2社は、これが構造的な崩壊ではなく、一時的な「AI分野への資金循環(ローテーション)」であると分析している。本記事では、この下落の背景と、2026年後半に予測される反転のシナリオについて解説する。
■「資金は関心に従う」――AIに奪われた投資家の視線
暗号資産(仮想通貨)運用会社ハッシュデックス(Hashdex)の最高投資責任者(CIO)であるサミール・ケルバージュ氏は、7月2日付のCIOノートで、現在の暗号資産市場の弱さは「デジタル資産エコシステムの健全性よりも、投資家がどこに資金を配分しているかを示している」と指摘した。この内容は7月4日にCoinDeskでも報じられている。
同氏の指摘によれば、生成AIという強力なテーマの登場により、投機的資金がそちらに集中しているという。米国の主要テック企業(マイクロソフト、アマゾン、アルファベット、メタ)は2026年に合計6500億ドル(約104兆6500億円)以上の設備投資を予定しており、その大半がAI向けとされる。また、投資情報誌『The Kobeissi Letter』によると、半導体ETFに約200億ドル(約3兆2200億円)が流入した一方で、ゴールドやビットコインのファンドからは120億ドル(約1兆9320億円)が流出したと報告されている。
しかし、ハッシュデックスのデータ(Messari提供)によると、2026年第2四半期の暗号資産エコシステムにおける取引数は過去最高を記録。ステーブルコインの取引量や現実世界資産(RWA)のトークン化も急成長している。ケルバージュ氏は、ビットコインの時価総額とオンチェーン活動の乖離は過去最大に達しており、「ローテーションは定義上、いずれ反転する」と主張している。
■シュワブの分析:半減期モデルが示す9万5000ドルの回復天井
大手金融チャールズ・シュワブ(Charles Schwab)も、異なるアプローチから同様の結論に至っている。同社のデジタル通貨研究・戦略ディレクターであるジム・フェライオーリ氏は、6月24日の分析レポートで、現在の弱気相場は過去の半減期サイクルと概ね一致していると指摘した。
Glassnodeの2026年5月31日時点のデータによると、最も効率の悪いマイナーの生産コストは約9万5000ドル(約1529万5000円)である。過去の回復期において、ビットコインがこの基準をクリアするには市場の底打ちから1年以上かかっており、それまではマイナーによる売り圧力が価格の上値抵抗線(天井)として機能するという。
また、一般投資家の平均取得コストは約8万ドル(約1288万円)付近であり、損失を取り戻そうとする保有者による売り圧力も存在する。フェライオーリ氏は、4年周期の半減期サイクルがトレーダーの心理に深く組み込まれ、「自己実現的な予測」として機能していると分析。さらに、ボラティリティ(価格変動性)がサイクルごとに低下していることは、市場の成熟を示していると付け加えた。
■逆風の実態:45億ドルの流出とシティグループの悲観シナリオ
一方で、ビットコインが直面している逆風は依然として深刻である。6月のETF純流出額45億ドルは月間ベースで過去最悪を記録し、資産規模最大の「ブラックロック・IBIT」がその約75%を占めた。
シティグループは7月1日、今後1年間のビットコイン目標価格を従来の11万2000ドルから8万2000ドル(約1320万2000円)へと引き下げ、今後のETF純流入予測を「ゼロ」とした。シティの分析によると、ETFからの1億ドルの流出は、当日のビットコイン価格を約53ベーシスポイント押し下げる効果があるという。シティが想定する弱気シナリオでは、価格は5万3000ドル(約853万3000円)まで下落するとみられている。
さらに、著名投資家ジェレミー・グランサム氏は6月26日のCNBC番組で、ビットコインを「無用で投機的な仕組み」と呼び、長期的には衰退していくと厳しい見方を示した。
■2026年後半に反転を促す3つの触媒
ハッシュデックスとシュワブの両社は、2026年後半の回復を促す要因として以下の3点を挙げている。
1つ目は「規制の明確化」だ。米上院で審議中の「CLARITY法案」が可決されれば、法的な不確実性を嫌って静観していた機関投資家の資金が流入する可能性がある。2つ目は「FRB(米連邦準備制度理事会)の政策転換」である。利下げの兆候が見られれば、金利を生まない資産であるビットコインの保有コストが下がり、需要が回復しやすくなる。3つ目は「AI取引の沈静化」だ。過熱したAI関連株のバリュエーションが調整局面を迎えれば、投機的資金が再び暗号資産市場へと還流することが期待される。
取引所のビットコイン保有量が2017年12月以来の低水準(約221万BTC)に達しているなど、供給側のデータは歴史的な逼迫を示している。需要の触媒が予定通り現れるかどうかが、今後の回復の鍵を握ることになりそうだ。
■注目ポイントQ&A
●なぜ2026年のビットコインは、好調な株式市場に反して低迷しているのですか?
ハッシュデックスとシュワブの分析によると、主な原因はビットコイン自体の問題ではなく、資金がAI(人工知能)分野へシフトしているためです。2026年には主要テック企業による多額のAI設備投資やSpaceXなどの大型IPOが注目を集め、これまで暗号資産に向かっていた投機的資金を吸収しています。また、6月だけで45億ドルのETF資金流出が発生したことも、直接的な価格押し下げ要因となっています。
●2026年後半にビットコインが回復するための条件は何ですか?
主に3つの触媒が挙げられています。第一に、米国の「CLARITY法案」可決による規制の明確化。第二に、FRB(米連邦準備制度理事会)の利下げへの転換。第三に、過熱するAI株取引の沈静化とそこからの資金還流です。供給面では取引所の在庫が7年ぶりの低水準に達しており、需要さえ戻れば価格が急回復しやすい環境は整っているとされています。
元記事: AI Stocks Pulled $4.5B From Bitcoin ETFs: Hashdex and Schwab Forecast Reversal