なぜ白い象が「無用の長物」に? シャムの王様の逸話から生まれた英語イディオム
2026年6月27日 12:50
「a white elephant」という英語表現を聞いたことがあるだろうか。直訳すれば「白い象」だが、実はこれ、「持っていても困るばかりの厄介な代物」を意味するイディオムだ。
なぜ白い象が厄介者なのか。そこには、東南アジアの王にまつわる意外な物語が隠されている。
■「無用の長物」を意味する英語表現
「a white elephant」という表現は、現代でも報道などでよく使われている。たとえば、莫大な費用をかけて建設したのに利用されないまま放置されている競技場などを指して、「white elephant」と呼ぶ。
The town's new stadium turned out to be a white elephant.
豪華で立派に見えるのに、実際には金ばかりかかって誰も得をしない。そんな対象を、英語ではこの一言で言い表すことができる。
■白い象はなぜ「厄介者」なのか
では、なぜ「白い象」がこのような意味を持つようになったのか。その背景には、シャムやビルマ(現在のタイ、ミャンマー)、ラオス、カンボジアといった東南アジアの文化がある。
これらの地域では、白い象は古くから神聖な存在として崇められてきた。白い象を所有することは、王が正義と力を持って国を治め、国土が平和と繁栄に恵まれている証とされた。
実際、ビルマの王の中には「白い象の主」を意味する称号を名乗った者もいたほどだ。
ところが、白い象は聖なる存在であるがゆえに、労働に使うことが許されない。
普通の象のように荷物を運ばせたり、木材を引かせたりはできないのだ。それでいて、巨大な体を維持するための餌や世話には莫大な費用がかかる。
つまり、何の役にも立たないのに、とてつもなく金がかかる存在だった。
ここから、有名な逸話が生まれた。シャムの王は、気に入らない家臣がいると、その者にわざと白い象を下賜したというのだ。
贈られた側は、王からの神聖な贈り物を無下に断ることもできず、売り払うことも働かせることもできないまま、その維持費にじわじわと財産を食いつぶされ、やがて破産してしまう。栄誉に見せかけた、巧妙な罰というわけだ。
ただし、これはあくまで逸話であり、こうした事実があったという証拠はない。
■英語に定着するまで
この表現が英語で使われ始めたのは、19世紀半ばのことだ。記録に残る最初期の用例は1850年代初頭の英語文献にさかのぼる。
その後、19世紀後半には、教会のバザーで不用品を売る催しが「white elephant sale」と呼ばれるようになった。
この習慣は現代にも受け継がれており、今も英語圏では、持ち寄った不用品を交換し合う「white elephant swap」というパーティーゲームが楽しまれている。(記事:ムロタニハヤト・記事一覧を見る)