GSユアサ:AIデータセンター需要追い風、再エネ・防衛向け投資で成長加速へ
2026年6月19日 16:37
*16:37JST GSユアサ:AIデータセンター需要追い風、再エネ・防衛向け投資で成長加速へ
ジーエス・ユアサ コーポレーション<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0667400?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><6674></a>は、自動車用鉛蓄電池を主力とする国内最大級の電池メーカーだ。2004年に日本電池とユアサコーポレーションが経営統合して誕生し、現在は自動車電池、産業電池電源、車載用リチウムイオン電池、特殊電池を展開している。国内の自動車用鉛蓄電池市場では約7割のシェアを持ち、長年にわたり販売店や自動車メーカーとの強固な関係を構築してきた。海外でも東南アジアを中心に高いシェアを有しており、安定した収益基盤となっている。
2026年3月期は売上高6,089億円(前期比4.9%増)、営業利益601億円(同20.3%増)と増収増益で着地した。増益の主因は、産業電池電源事業と車載用リチウムイオン電池事業の成長だ。産業電池電源事業は売上高1,240億円(前期比9.7%増)となり、ESS(蓄電システム)向け電池の需要拡大や非常用電池電源装置の大型案件獲得が寄与した。特にデータセンター向けのバックアップ電源需要が拡大しており、同社の非常用電池電源事業には追い風となっている。非常用電池電源は一度導入されると定期的な交換需要が発生するため、利益率が高く収益の安定性にも優れる。
車載用リチウムイオン電池事業も大きく改善した。売上高は899億円(前期比8.6%増)、セグメント利益は49億円(同3.5倍)となった。ホンダ向けHEV用電池の価格改定や販売数量増加が寄与しており、これまで課題だった収益性が改善している。HEV市場は世界的に拡大が続いており、同社の主力顧客であるホンダやトヨタ向け需要も堅調だ。今後もHEV向け需要拡大が期待される。
一方、主力の自動車用鉛蓄電池事業も堅調だった。国内外合計の売上高は3,725億円(前期比2.9%増)、セグメント利益は361億円(同23.1%増)となった。国内では販売価格是正、海外では東南アジアや欧州での販売数量増加が寄与した。補修用電池は3~4年で定期交換需要が発生するため景気変動の影響を受けにくく、同社の収益を下支えしている。
2027年3月期会社計画は売上高6,600億円(前期比8.4%増)、営業利益600億円(同0.3%減)を見込む。売上高は過去最高を更新する計画だが、利益面は横ばいを予想している。背景にはESSやAIデータセンター向け事業の拡大がある。これらの成長市場は売上拡大余地が大きい一方、立ち上がり段階では利益率が既存事業より低くなりやすい。また、中東情勢や物流コスト上昇などの地政学リスクも織り込んでおり、会社計画は比較的保守的な印象だ。実際には鉛電池事業の価格改定効果も進んでおり、上振れ余地を期待する見方もある。
競争優位性としては、モビリティ分野と社会インフラ分野の両方に強固な事業基盤を持つ点が挙げられる。国内の鉛蓄電池市場では圧倒的なシェアを持ち、産業電池分野でも非常用電源市場で高い競争力を有する。また、特殊電池分野では潜水艦向けリチウムイオン電池を手掛けるなど、防衛分野で独自のポジションを確立している。防衛関連需要は今後の国家安全保障政策を背景に拡大が見込まれており、同社は潜水艦向けリチウムイオン電池や特殊飛翔体向け熱電池の増産投資を進める方針だ。
中長期では第七次中期経営計画が注目される。同社は社会インフラ事業を新たな成長の柱と位置付け、850億円の成長投資を計画している。なかでもESS事業への期待は大きく、新工場建設を進めており、中期経営計画終盤から本格稼働する予定である。加えて、防衛向け電池事業も成長を目指している。
同社が掲げるVision2035では、現在のモビリティ中心の事業構成から、社会インフラ事業の比率を高めて、営業利益率の割合を50対50に変革していく方針を示している。AIデータセンター、再生可能エネルギー、防衛といった国家レベルで重要性が高まる分野への展開を進めており、単なる自動車電池メーカーから社会インフラを支える電池メーカーへの転換を目指している。
株主還元にも積極的だ。DOE3%を目安とする累進配当方針を導入し、2026年3月期は年間90円配当、2027年3月期は98円配当を予定している。加えて、政策保有株式の縮減や自己株取得も選択肢としており、株主還元強化への姿勢は評価できる。
総じて同社は、安定収益源である鉛蓄電池事業を基盤に、AIデータセンター、ESS、防衛向け電池といった高成長分野への投資を進めている。短期的には先行投資による利益率低下も想定されるが、中長期では社会インフラ分野の拡大による収益成長余地が大きく、事業ポートフォリオ転換の進展が今後の企業価値向上の鍵を握るだろう。《YS》