冨士ダイス、27年3月期は減益予想も大幅増収見込む、新合金サステロイSTN30とリサイクル事業に期待

2026年6月1日 07:51

 冨士ダイス<6167>(東証プライム)は超硬合金製耐摩耗工具(工具・金型)のトップメーカーである。成長戦略として経営基盤強化、生産性向上・業務効率化、海外事業の飛躍、脱炭素・循環型社会への貢献、新事業確立を推進している。レアメタルの使用量を大幅に削減した新合金「サステロイSTN30」も有望だ。また5月15日にはダイジェット工業<6138>と、重要鉱物であるタングステンとコバルトの使用量を削減した合金に関する業務提携の検討開始を発表した。27年3月期は大幅増収だが、原材料価格高騰の影響などを考慮して減益予想としている。ただし保守的だろう。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は反発力が鈍く小幅レンジでモミ合う形だが、高配当利回りなども支援材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。

■超硬合金製耐摩耗工具(工具・金型)のトップメーカー

 同社は超硬合金製耐摩耗工具(工具・金型)のトップメーカーである。グループは同社および子会社7社(国内2社、海外5社)で構成され、海外は生産・営業拠点としてタイ、インドネシア、営業拠点として中国・上海、マレーシア、インドに展開している。インドについては現地の経済環境などを鑑みて16年8月から事業を休眠しているが、今後は市場調査を行い、26年中の事業再開を目指している。

 生産拠点は、国内が郡山製造所・郡山第2工場(福島県郡山市)、秦野工場・秦野第2工場(神奈川県秦野市)、名古屋工場(愛知県名古屋市)、岡山製造所(岡山県倉敷市)、熊本製造所(熊本県玉名郡)、子会社の新和ダイス(山梨県甲州市)、冨士シャフト(福島県二本松市)で、海外がタイとインドネシアとなっている。

■超硬合金とは

 超硬合金というのは、炭化タングステンに代表される硬質の金属炭化物と、コバルトなどの鉄系金属を粉末状にして混ぜ合わせ、型に入れて圧縮・成型し、粉末冶金法(融点より低い温度で焼いて固める方法)によって製造される金属材料である。ステンレスや鋼鉄を凌ぐ硬さを持ち、耐摩耗性に優れるという特性があり、高い精度が求められる金型や工具の材料として適しているため、輸送用機械、鉄鋼、非鉄金属、金属製品、電気・電子部品など幅広い産業分野で使用されている。

 製品としては精密加工が施されて、主に塑性(切屑の出ない)加工に用いられる高精度かつ耐摩耗性に優れた超硬合金製耐摩耗工具となるほか、一部は中間製品である超硬合金チップとしても販売される。なお、超硬合金製耐摩耗工具の性能や寿命に関しては、顧客の設計思想や生産プロセスが色濃く反映されるため、超硬合金製耐摩耗工具の大部分は顧客ごとのカスタムメイドとなっている。

■幅広い産業分野に多品種少量の高付加価値製品を提供

 同社の製品分類は、超硬製工具類(線材やパイプの生産用工具として使用されるダイス・プラグ、鉄鋼向けの熱間圧延ロール、人工ダイヤモンドやcBNの生産用工具として使用される超高圧発生用工具など)、超硬製金型類(自動車部品製造用金型、飲料缶や食用缶などの製缶金型、車載電池用金型、ガラスレンズ生産用の光学素子成形用金型、半導体・電子部品用金型など)、その他の超硬製品(超硬合金チップなど)、超硬以外(鋼製品、セラミック製品など)としている。

 26年3月期の製品別売上高は、超硬製工具類が43億40百万円、超硬製金型類が46億69百万円、その他超硬製品が48億97百万円、超硬以外の製品が35億40百万円だった。主力製品は、超硬製工具類のダイス・プラグ、熱間圧延ロール、超高圧発生用工具、超硬製金型類の自動車部品製造用金型、製缶金型、車載電池用金型、超硬製品の超硬合金チップなどとなっている。

 産業分類別売上高(単体ベース)は、輸送用機械が28.2億円、鉄鋼が23.6億円、非鉄金属・金属製品が21.0億円、生産・産業用機械が19.3億円、電機・電子部品が17.0億円、金型・工具向け素材が33.8億円だった。取引社数は約3000社に達し、国内の超硬耐摩耗工具市場で長期に亘ってトップシェア(同社推定30%以上)を維持している。

 同社は顧客ニーズを的確に捉えて、個別カスタマイズの多品種少量生産に対応する研究開発~生産~営業体制を構築し、高品質の製品を顧客に提供している。そして、超々微粒から中粒や超粗粒まで顧客ニーズに最適な粒子径や硬さの材種を提供できる新材料開発・粉末冶金技術・加工技術・品質対応力、設計~原料粉末調粉~焼結~機械加工~製品検査の一貫生産体制、豊富な製品ラインナップ、特定の業界・顧客に依存しない収益安定性などを特長・強みとしている。また25年10月より超硬耐摩耗工具・金型のリサイクル事業を立ち上げ、タングステンを含む原料調達リスクの低減を図っている。

 25年10月には新合金「サステロイSTN30」をリリースした。同社は地政学リスクが懸念されるタングステンとコバルトを極力減らした合金を作るというコンセプトで23年3月に「サステロイST60」を開発したが、さらに材料設計を見直して「サステロイSTN30」を開発した。ニオブカーバイドを主成分としたことにより耐摩耗性を向上させた。軽量でありながら超硬合金と同等の耐摩耗性を実現し、地政学リスクが懸念されるレアメタルの使用量を大幅削減した新合金である。耐摩耗性が求められる一方で重量のある超硬合金の使用が難しい分野(回転工具、混錬工具など)での利用が見込まれる。また5月15日にはダイジェット工業<6138>と、重要鉱物であるタングステンとコバルトの使用量を削減した合金に関する業務提携の検討開始を発表した。

 新規事業としては、超硬耐摩耗工具・金型のリサイクル事業を開始した。スクラップ回収に必要な各種申請手続きを完了し、モデル地域を定めて25年10月より試験的な回収を開始した。今後は対象地域を全国に拡大し、超硬耐摩耗工具・金型の国内循環型リサイクルの実現を目指す。

 さらに同社は、競合が少ない超硬合金製耐摩耗工具で多品種少量の高付加価値製品を提供しているため、切削工具・素材メーカーが多い業界平均に比べて販売単価が高く、販売価格が安定的に推移していることなども特長としている。また財務面では、25年3月期末の自己資本比率81.0%と盤石の財務基盤を構築していることも特長だ。

■中期経営計画(25年3月期~27年3月期)

 24年5月策定の中期経営計画2026(25年3月期~27年3月期)では、中期方針に「変化に対応できる企業体質への転換」を掲げ、成長戦略として経営基盤の強化、生産性向上・業務効率化、海外事業の飛躍、脱炭素・循環型社会への貢献、新事業の確立に取り組むとしている。

 目標数値には最終年度27年3月期の売上高200億円、営業利益20億円、経常利益21億円、経常利益率10.5%、当期純利益15億円、ROE7.0%を掲げている。また、成長投資と株主還元の両方を追及する観点から配当方針を見直し、中期経営計画2026の期間における配当を、株主資本配当率(DOE)4%を目途とすることに加え、積極的かつ機動的な自己株式取得を行うことで利益還元を強化する方針とした。

 なお25年7月には100年企業に向けてグループ企業理念を見直し、新たなグループ企業理念として「社員一人ひとりの幸せを尊重し、事業を通じて広く社会に貢献する」、ビジョンとして「人と素材と技術の力で「感動体験」を」、行動指針として「誠実・好奇心・スピード、挑戦・一体感」を策定・公表した。

■27年3月期減益予想だが保守的

 27年3月期の連結業績予想は、売上高が前期比49.0%増の260億円、営業利益が14.9%減の7億円、経常利益が11.7%減の7億80百万円、親会社株主帰属当期純利益が9.3%減の5億20百万円としている。配当予想は前期と同額の40円(期末一括)としている。予想配当性向は150.6%となる。

 主要産業別の動向として、輸送用機械は新型モデル投入などの開発案件に加え、ハイブリッド車の量産拡大などにより前期並みを見込む。鉄鋼は国内が前期並みまたはやや減少、海外が熱間圧延ロール向けの受注増加を見込む。非鉄金属・金属製品はエアコン関連工具・金型および缶器とも前期並みまたはやや減少を見込む。生産・産業用機械は半導体製造装置向けが引き続き低調、光学関連が既存材種からの置き換えや新製品への適用により増加、高圧関係が引き続き堅調推移を見込む。

 電機・電子部品は電池関連が車載向けやデータセンター向けに増加を見込み、封止材が下期以降の回復を見込む。金型・工具向け素材は、原料調達に遅れが生じている銅タングステンの受注見送りが続くなど、タングステンの需給動向や価格改定などの動向により影響を受ける可能性が高く、見通しの把握が困難としている。

 27年3月期は、売上高が原材料価格高騰を価格転嫁して大幅増収だが、利益面は原材料価格高騰の影響や価格改定に伴う販売数量の減少などを考慮して減益予想としている。ただし保守的だろう。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。

■株価は調整一巡

 株価は反発力が鈍く小幅レンジでモミ合う形だが、高配当利回りなども支援材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。5月29日の終値は1004円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS26円56銭で算出)は約38倍、今期予想配当利回り(会社予想の40円で算出)は約4.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1044円28銭で算出)は約1.0倍、そして時価総額は約201億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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