日本エム・ディ・エム、27年3月期は減益予想も下期回復基調、製品供給体制の強化と新製品展開が牽引
2026年5月20日 07:33
日本エム・ディ・エム<7600>(東証プライム)は人工関節製品など整形外科分野を主力とする医療機器メーカーである。米国子会社オーソデベロップメント(ODEV)社製品を主力に、商社機能と開発主導型メーカー機能を融合した独自のビジネスモデルを展開している。27年3月期は製品供給体制の強化により売上高の回復を図るが、各利益は人件費の増加や為替変動の影響などにより減益予想としている。ただし下期偏重の計画である。積極的な事業展開で下期回復基調だろう。なお同社が非公開化に向けて入札プロセスを開始した旨の一部報道に対して、同社は5月14日付で「当社が発表したものではない」とリリースした。株価は一部報道を材料視して急伸している。
■整形外科分野の医療機器メーカー、米国子会社製品が主力
人工関節製品、骨接合材料、脊椎固定器具など整形外科分野を主力とする医療機器メーカーである。米国子会社ODEV社製品を主力に、商社機能と開発主導型メーカー機能を融合した独自のビジネスモデルを展開している。なお22年1月に三井化学<4183>が筆頭株主(25年3月31日現在の議決権所有割合30.01%)となっている。
海外展開として、米国では販売体制強化と人工関節分野新製品導入による2桁成長を目指している。中国では21年5月に、米国ODEV社が中国WASTONと中国現地生産品の製造・販売を目的として合弁会社WOMA社を設立した。米国ODEV社製品の輸入販売拡大と中国現地生産品の製造・販売開始を目指している。
26年3月期のセグメント別の業績(セグメント間取引・全社費用等調整前)は、日本が売上高131億09百万円で営業利益7億17百万円、米国が売上高154億12百万円で営業利益84百万円の損失だった。なお米国の外部顧客向け売上高は米ドルベースで71百万米ドル、円換算後で108億07百万円だった。米国売上の為替換算レートは1米ドル=150円98銭だった。
製品別売上高(セグメント間取引相殺消去後、日本は販売促進費控除前、米国は円換算後)は、人工関節が日本49億04百万円、米国107億74百万円、骨接合材料(日本)が44億44百万円、脊椎固定器具(日本と米国の合計)35億25百万円だった。全体の自社製品売上比率は79.2%だった。
収益面の特性として、医療機器償還価格の影響や為替変動の影響を受けるほか、整形外科医療機器の販売は下期が繁忙期となる傾向があるため、業績も下期の構成比が高い特性があるとしている。
■新製品の開発拡大
新製品としては、米国ODEV社との日米共同開発による適応症例拡大に向けたインプラント開発や、新素材インプラントや手術支援システムなど外部調達によるビジネス拡大を推進している。
24年3月にはODEV社製造の人工膝関節製品BKS(Balanced Knee SYstem)に関して、中国の合弁会社WOMA社が中国における薬事承認を取得し、中国での製造を本格的に開始した。また、ODEV社の人工股関節新製品「Trivicta Hip Stem」が米国食品医薬品局(FDA)薬事承認を取得し、米国での販売を開始した。
24年7月には、ODEV社製造の人工股関節大腿骨ステムOvation Tribute NEOシステムの薬事承認取得を発表した。24年8月には、人工股関節用フェモラルヘッドの新商品JMDM BIOCERAM AZUL セラミックヘッド(京セラに開発・製造委託)を発表した。
■長期ビジョンおよびローリングプラン2028
長期VISION「RT500」(25年3月期~33年3月期)では、定量目標に最終年度33年3月期の売上高500億円、営業利益率15%以上、ROE10%以上、ROIC8%以上、配当性向30%以上を掲げている。
また経営計画のローリングプラン2029(26年3月期~29年3月期)では、最終年度29年3月期の目標値(為替前提1米ドル=155円)として売上高300億円(国内145億円、米国1.0億米ドル)、営業利益15億円、当期純利益10億円、ROE3.9%、ROIC3.3%を掲げ、配当は安定配当・配当性向30%以上とした。
重点施策としては、27年3月期を収益性改善に向けた転換点と位置づけて、米国での新製品導入と症例数回復による売上成長の再加速を図るほか、製造原価低減・販管費効率化を通じて29年3月期に向けた収益性改善を目指す。また26年6月19日開催予定の第54回定時株主総会における承認を条件に、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行する。なお東証プライム市場上場維持基準の不適合対策として、改善期間内の基準充足に向けた取り組みを継続しつつ、東証スタンダード市場への上場申請準備を進める。
サステナビリティの取り組みも強化している。22年3月にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明するとともに、同提言に賛同する企業や金融機関からなるTCFDコンソーシアムに参画した。22年6月には国際連合が提唱する「国連グローバル・コンパクト(UNGC)」に署名し、参加企業として登録された。併せて、UNGCに署名している日本企業などで構成される「グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン」に加入した。
24年7月にはFTSE Russellにより構築された日本株ESG指数「FTSE Blossom Japan Sector Relative Index」の構成銘柄に2年連続で選出された。25年12月には、国際的な環境評価の情報開示システムを運用するCDPから、気候変動によるリスクや影響を管理している企業として昨年に続いて「B」スコア(マネジメント)に認定された。水セキュリティに関しては「自社の環境リスクや影響について把握し、行動している」と評価されたことを示す「B-」スコア(マネジメント)に認定された。
■27年3月期減益予想だが下期回復基調
26年3月期の連結業績は売上高が前期比4.8%減の239億17百万円、営業利益が63.1%減の5億74百万円、経常利益が64.1%減の5億34百万円、そして親会社株主帰属当期純利益が2億63百万円(前期は4億61百万円の損失)だった。配当は前期比2円増配の17円(期末一括)とした。連続増配で配当性向は157.4%となる。
減収、営業・経常減益(当期純利益は特別損失が減少して黒字転換)だった。売上面は外部に製造委託している米国の人工膝関節再置換製品の納期遅延に伴う供給制約などが影響し、利益面では米国相互関税影響による調達コストの上昇、供給優先対応に伴う労務費等の製造間接費の増加、日米双方での賃上げによる人件費増加なども影響した。なお特別損失では前期計上の和解関連費用15億55百万円が一巡した。
セグメント別(セグメント間取引・全社費用等調整前)に見ると、日本は売上高が3.8%減の131億09百万円で営業利益が9.6%減の7億17百万円、米国は売上高が0.6%減の154億12百万円で営業利益が84百万円の損失(前期は5億90百万円)だった。なお米国の外部顧客向け売上高は米ドルベースで4.9%減の71百万米ドル、円換算後で5.9%減の108億07百万円だった。米国売上の為替換算レートは1米ドル=150円98銭(前期は1米ドル=152円50銭)だった。
製品別売上高(セグメント間取引相殺消去後、日本は販売促進費控除前、米国は円換算後)は、人工関節は日本が人工膝関節置換術の獲得症例数減少などで6.4%減の49億04百万円、米国が人工膝関節再置換製品の供給制約の影響で5.9%減の107億74百万円、骨接合材料(日本)は製品ポートフォリオ見直しに伴う販売中止予定製品の影響などで4.5%減の44億44百万円、脊椎固定器具(日本と米国の合計)は「KMC Kyphoplastyシステム」が2桁成長した一方でPedicle Screw等の獲得症例数減少により1.4%減の35億25百万円だった。全体の自社製品売上比率は1.5ポイント低下して79.2%となった。
なお全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高59億20百万円で営業利益1億50百万円、第2四半期は売上高56億90百万円で営業利益58百万円、第3四半期は売上高63億18百万円で営業利益3億10百万円、第4四半期は売上高59億89百万円で営業利益56百万円だった。
27年3月期の連結業績予想は売上高が前期比6.1%増の253億70百万円、営業利益が25.1%減の4億30百万円、経常利益が73.8%減の1億40百万円、親会社株主帰属当期純利益が77.2%減の60百万円としている。配当予想は前期と同額の17円(期末一括)としている。予想配当性向は746.5%となる。
製品供給体制の強化により売上高の回復を図るが、各利益は人件費の増加や為替変動の影響などにより減益予想としている。業績予想の前提として、想定為替レートは1米ドル=155.0円(前期実績は1米ドル=150.9円)で、為替感応度は1円当たり営業利益30百万円、償還価格引き下げ影響は50百万円(0.4%)悪化、米国相互関税影響は1.5百万円米ドルとしている。
売上高の計画については、日本国内が1.1%減の129億70百万円(人工関節が1.1%減の48億50百万円、骨接合材料が0.6%増の44億70百万円、脊椎固定器具が3.0%減の33億90百万円、その他が6.4%減の4億60百万円、売上高控除が▲2億円)で、米国が14.7%増の124億円(人工関節が15.1%増の124億円、脊椎固定器具が0百万円)としている。また米国の外部顧客向け売上高は米ドルベースで11.8%増の80百万米ドル、自社製品売上高は18.2%増の225億50百万円、自社製品売上比率は9.7ポイント上昇して88.9%としている。
重点施策として、新製品「Trivicta HIP Stem」の全米展開による販売拡大、中国事業(中国製人口股関節の薬事承認取得、現地製造開始)の立ち上げ、日本の専門性強化により売上成長を図るほか、主要サプライヤーとの契約・供給管理を強化して供給制約の再発防止と安定供給体制の構築を推進する。またSAICOプロジェクトを通じ、調達先の多様化などによる製造原価低減を推進する。
なお半期別に見ると、上期は売上高が116億70百万円で営業利益が2億60百万円の損失だが、下期は売上高が137億円で営業利益が6億90百万円の計画としている。通期ベースでは減益だが、下期偏重の計画であり、積極的な事業展開で下期回復基調だろう。
■株価は急伸
株価は「同社が非公開化に向けて入札プロセスを開始した」という一部報道を材料視して急伸している。5月19日の終値は720円で、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS2円28銭で算出)は約316倍、今期予想配当利回り(会社予想の17円で算出)は約2.4%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS963円82銭で算出)は約0.7倍、時価総額は約191億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)