「数」では満足できない! 満足度調査が示す、支援に対する「実感」の欠如と地方創生の新視点
2025年12月21日 18:22
持続可能な地域社会を築く上で、急速な少子化の進行と人口流出は地方創生における最も深刻な課題だ。子育て世代の定住・移住を促すためには、子育て世代の生活に寄り添った「子育て支援策」が重要なカギとなっている。そこで、多くの自治体が独自の手厚い制度を打ち出しているが、住民にとって「多数の制度=魅力」とは必ずしもなっておらず、そもそも「制度を知らない」「使えていない」という支援の届き方格差が深刻化している。
こうした背景のもと、マタニティ&ベビー・キッズ用品の専門店・アカチャンホンポを運営する株式会社赤ちゃん本舗は、政策連携を目指すチーム「Public Account Unit(パブリック・アカウント・ユニット)」をメディア開発部内に作り、子育て世帯と自治体の双方の声に耳を傾け、「子育てする人」と「サポートする人」のハブとなる「子育て支援meetsプロジェクト」を始動した。また、その活動の第一歩として、全国約1万人の子育て世帯を対象とした「子育て満足度調査」を実施し、その結果を「「子育てしやすい街リポート」として発表している。この大規模な民間データは、行政と住民の間にあるギャップを可視化する、極めて価値の高い指標となりそうだ。
同調査の結果、子育て世帯の満足度を左右するのは「支援の数」ではなく、「使えるか」「生活に合っているか」「情報が確実に届いているか」といった「質」と「届け方」であることが明らかになった。
例えば、子育てまんぞく度ランキングで1位を獲得した愛知県安城市(86点)などの、高い満足度を誇る自治体では、行政施設を活用した交流イベントの開催や、行政発信による情報伝達が円滑に行われるなど、支援のネットワーク(人・場・情報)が一貫して機能している好循環が見られた。また、満足度の高い項目と改善を望む項目がよく似ていることや、A市では「金銭的支援」が評価されるのに対し、B 市では「施設環境」や「生活環境」が評価されるなど、同じ点数の自治体でも、地域特性によって満足度の構成要素が異なることから、各自治体が「その街らしい満足の形」を築くことが重要であることなどが浮き彫りとなった。
さらに、約1万件に上るコメント分析では、支援内容そのものよりも、その「伝え方や親和性(自治体への愛着)」が、不満・満足を左右する大きな要因のひとつとなっていることが判明。「制度があるのに情報が届かない」という情報格差が、子育て支援に対する「実感」を欠如させている実態が浮かび上がっている。一方で、近年の猛暑の影響による「室内の遊び場」の整備需要や、子育てしやすいと評判の街に転入者が集中することで、保育所などのインフラ整備が追いつかない「人気ゆえの不足」など、人気自治体の抱える課題も同時に表出していることは興味深い。
赤ちゃん本舗が提供するこの「子育て支援meetsプロジェクト」は、住民の「実感」を軸に子育て環境を評価する新しい視座を自治体などに提供するものとして、今後の展開に注目が集まっている。赤ちゃん本舗は2025年10月現在、全国39都道府県で130店舗のアカチャンホンポを運営しており、同社のアプリユーザー数は約300万人を誇る。(2025年2月時点)しかも日本国内の出生数のうち、55%の方が「アカチャンホンポ アプリ」への会員登録を行っているため、ダイレクトに情報を届けたり、広範なニーズ調査を行うことができるのが強みだ。同社では、この調査データを自治体向けに詳細レポートとして提供し、政策立案から成果検証までを民間視点でサポートする構想を立てている。今後、施策効果の現状把握や成果の検証、子育て環境の「実感」を測る貴重な地方創生データとして、全国の自治体や民間企業、団体などが参照し「見える化」する新たな基準になり得るのではないだろうか。
子育て支援は今、制度を増やす時代から、支援を「実感させる」時代へと転換している。
子育て支援の輪を広げることは、施策を闇雲に増やすことではなく、本当に必要な支援策を立案し、それを認知させ、活用、実感してもらわなければ意味がない。子育てを取り巻く社会環境をバージョンアップし、子どもを産み育てたいという希望を後押しできる社会の実現のため、「子育て支援meetsプロジェクト」の活用と今後の展開に大いに期待したい。(編集担当:藤原伊織)