新NISAに国内投資枠は必要か? 国会で議論も

2025年11月24日 17:44

 2025年11月10日の衆議院予算委員会では、新NISAを通じた「資産の海外流出」がテーマとなり、国内投資をどう促すかが議論された。

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 日本維新の会・斎藤アレックス政調会長は、新NISA口座の資産残高の約6~7割がオルカンやS&P500など海外資産に投じられていると指摘した。国民の貴重な金融資産が海外インデックスに偏り、このままでは日本の成長に回る資金が足りなくなるのではないか、という問題意識を指摘している。

 斎藤氏は、本来は国民の資産形成を自国の経済成長につなげることが世界の常識だとして、NISAの枠を拡充すると同時に、国内の成長分野に資金が還流するような「国内投資枠」や、国内投資に対する税制優遇の導入を提案した。

 具体例として、投資対象をEU域内企業にほぼ限定しているフランスのPEAや、投資額の7割以上をイタリア経済に直接つながる企業への投資とするイタリアのPIRなど、海外の制度を引き合いに出している。

 一方で、日本の新NISAはすでに約2,700万口座・普及率約25%とされ、投資対象が限定的なフランス(普及率約10%)やイタリア(普及率数%程度)と比べても広く浸透している。

 イタリアの制度が伸び悩んでいる背景には、「投資先が絞られすぎていること」があるとも指摘されており、投資先制限が制度の魅力や利用者数を損なうリスクも見えてくる。

 片山さつき金融担当大臣は、NISAが老後資金づくりの基盤として急速に拡大したことを評価しつつ、国民の選択の結果としてオルカンやS&P500が選ばれているのは、正直残念な部分もあるが、堅実な実績があるのも事実とした。

 その上で、本来は日本企業自身が日本株や国内投信が選ばれる存在になっていくことが重要だと指摘している。

 制度で投資家を縛る前に、企業側が変わり、自然に資金が向かう流れを作るべきだという考え方である。

 投資制限には慎重論も根強くある。新NISAはあくまで安定的な資産形成を支える制度であり、多くの個人が世界分散投資を通じてリスクを抑えようとしている中で、投資対象を国内に偏らせれば、投資家の自由度を損ない、制度への不信感や「また預貯金に戻る」動きを招きかねない、という懸念だ。

 片山大臣は国内投資を後押しする枠や優遇措置について検討する意向を示しつつも、現時点では具体的な制度設計は決まっていないとし、今後は投資教育の普及状況なども踏まえて、NISAをよく育てていきたいとした。

 将来的に国内投資枠が導入される場合には、現在の生涯投資枠1,800万円とは別枠で設けるべきだという期待もあり、「国民の選択の自由」と「国内成長への資金還流」をどう両立させるかが、今後の大きな論点になるであろう。

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