相場展望11月10日号 米国株: 「米国労働市場の軟化は顕著」は本当か? インフレ再加速を念頭に利下げは慎重に 日本株: 物価対策なくして、実質賃金のプラスはあり得ない
2025年11月10日 13:55
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)11/6、NYダウ▲398ドル安、46,912ドル
2)11/7、NYダウ+74ドル高、46,987ドル
【前回は】相場展望11月6日号 米国株: クリスマス商戦がポイント、予測▲5%減⇒景気後退の恐れ 日本株: 今後しばらく、日経平均は「W型」で動く可能性
●2.米国株:「米国労働市場の軟化は顕著」は本当か? インフレ再加速を念頭に利下げは慎重に
1)「労働市場の軟化は顕著」は本当か? インフレ再加速を念頭に利下げは慎重に
(1)「労働市場が軟化は顕著で、金利は3%まで引下げるべき」論は、正しいか?
・現在の政策金利は3.75~4%のレンジにある。
・この金利を3%まで引下げるべきとの主張を次期FRB議長候補5人のうちの1人であるリーダー氏が取り上げている。つまり現行の金利から▲0.75~▲1.00%の引下げを提案した。
(2)「労働市場が軟化は顕著」は本当か?
・米国の就業者数は減少しているのは事実であろう。問題は、トランプ関税などの経済対策に、米国経済の先行き後退を懸念した企業経営者が身構えて雇用をあらかじめ減らしていることにある。トランプ政権による政府職員削減もある。そのため、労働市場の悪化を示唆する指標となっている。求人件数が悪化しているのは、米国経済が後退したためのものではない。企業がトランプ関税によるコストアップに備えて、事前に雇用人員を減じているだけであり、労働市場が軟化していると発信するのは誤りである。
(3)米国経済は現在は、後退していない。
・ただ、トランプ関税の影響でインフレが高止まりし、実質賃金がマイナスという現実から、クリスマス商戦の悪化が予見される。調査によると昨年比▲5%もの減少を見込むリポートがある。クリスマス商戦次第では、米国景気の後退が現実化する可能性がある。
(4)利下げは慎重に。
・次期FRB議長候補者の発言は「雇用悪化のため金利引下げ」に集約される。これはFRB議長指名権のあるトランプ大統領の意見に迎合した発言である。
・米国の雇用悪化の要因は、「トランプ関税」にある。米国企業は、トランプ関税によるコスト増に対処するため、あらかじめ雇用人員数を絞っている。
・「トランプ関税の負」を「金利低下で補う」という発想は本末転倒と思われる。
・インフレが高止まりしているなか、金利低下を実行すれば、インフレの再加速につながる。
2)7~9月期の好決算発表シーズンも終盤、次は2026年12月期決算に目が映る展開か
3)11/7、NYダウは▲400ドル程度下落も、政府機関の閉鎖終了期待から+74ドル高
・シューマー民主党院内総務が「つなぎ予算」可決への要求を緩和させたとの報道を好感して買いが入り、MYダウは▲400ドルあまり下落⇒終値は+74ドルに上昇した。
・ただ、与党・共和党は民主党に対して強硬的であり、妥協のそぶりも見せていない。この観点から、11/7の政府機関閉鎖「期待」でNYダウは反発して+74ドル高に上昇したが、先行き不透明感が続くと思われる。NYダウの底入れを期待するのは無理筋であろう。
●3.トランプ大統領が関税収入を財源に国民1人当たり30万円支給と投稿(FNN)
1)関税反対は「愚か者」とも。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)11/6、上海総合+38高、4,007
2)11/7、上海総合指数▲10安、3,997
●2.中国10月の物価統計は、生産者物価指数(PPI)が下落率縮小、消費者物価指数(CPI)は上昇に転じた(ロイター)
1)PPIは前年同月比▲2.1%下落し、予想▲2.2%だった。CPIは前年同月比+0.2%上昇し、3カ月ぶりにプラスに転じ、予想の横ばいを上回った。
2)10月の物価統計は、過剰な競争を抑制する政府の取り組みが物価安定に寄与していることを示すが、内需低迷や地政学的緊張が引き続き景気見通しに影を落としている。
3)変動の激しい食品と燃料価格を除いたコアインフレ率は、前年比+1.2%と、9月の+1%から加速し、1年8カ月ぶりの高水準となった。
●3.中国、レアアース規制強化を2026年11月まで1年延期(朝日新聞)
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)11/6、日経平均+671円高、50,883円
2)11/7、日経平均▲607円安、50,276円
●2.日本株:物価対策なくして、実質賃金のプラスはあり得ない
1)物価対策なくして、実質賃金のプラスはあり得ない
・9月実質賃金は9カ月連続のマイナス
9月名目賃金の上昇率 1.9%上昇
9月物価上昇率 3.4%上昇
差引 実質賃金の伸び率 ▲1.4%低下
・実質賃金がマイナスは、「物価上昇に、賃金の上昇が追いついていない」ということ。つまり、インフレの伸びが高く、賃金の上昇率が負けている。
・岸田・元首相、石破・前首相は、「賃上げ率の大きさ」を自慢していた。そして、首相としてのミッションを果たしたと胸を張っていた。彼らの視点に「物価上昇以上に高い賃上げ」を獲得という目標がなかった。さらに、物価上昇に大きな影響を及ぼす「円安」を放置してきた。岸田氏にいたっては、「外交の岸田」と自慢しながら「外交で成果を上げたという成果」は認められない。流さられてきた外交だったように見受けられる。「新しい資本主義」を標榜したが、検討員会を立ち上げただけに終わった。総裁選挙で、薄い手帳をかざし「ここに国民の声がつまっている、政策がある」と強く主張していたが、首相に選任された後、その手帳の話は消えた。岸田・石破政権時代の実質賃金は「ほぼ一貫してマイナス」が続いた。そして、インフレが進み、財務省主導で(1)税収増(2)政府支出の増大をしただけであった。石破氏は、岸田氏のコピー政権にすぎなかった。つまり、「国民の生活を向上させる」という使命がなかったことの証左である。
・高市政権は、国民生活と日本国が豊かになる政策実現を期待したい。
2)日経平均寄与度上位
(1)11/6、日経平均+671円高に占める寄与上位5銘柄シェアは+451円高・+67.2%
・日経平均寄与上位5銘柄 寄与度 株価上昇幅
アドバンテスト +172円高 +645円高
ソフトバンクG +132 +660
フジクラ +64 +1,910
ダイキン +47 +1,395
ファーストリテイ +36 +450
合計 +451
(2)11/7、日経平均▲607円安に占める下落寄与上位5銘柄で▲763円・▲125.7%
・日経平均寄与上位5銘柄 寄与度 株価下落幅
ソフトバンクG ▲321円安 ▲1,600円安
アドバンテスト ▲313 ▲1,170
味の素 ▲47 ▲700
東京エレクトロン ▲45 ▲450
フジクラ ▲37 ▲1,110
合計 ▲763
・米国でAI関連銘柄が売り込まれたのを受けて、東京市場でもAI関連株が大きく売られ一時▲1,200 円を超えて下落した。午後に、国会での高市・首相の積極財政の発言を受け、海外短期筋が先物を中心に買い戻しを入れたため、日経平均は下げ渋り終値は▲607円安となった。
(3)日経平均は、海外短期筋による先物売買と、少数の値がさハイテク株に振れる
・日経平均が荒れ模様を強めている。アドバンテストは先週の騰落率が▲14%安となるなど、値動きの荒い展開となった。このほかの銘柄でも、値幅制限(ストップ高・安水準)一杯まで値が動くのが目立つようになった。
・株式相場の転換期に訪れる株価の値動きに似ている。慎重さが求められる。
●3.川崎重工、水素航空機向け燃料タンクの液化水素重点試験に国内初成功(財経新聞)
●4.トヨタ、2025年度通期の最終利益2兆6,600億円⇒2兆9,300億円に上方修正(FNN)
1)トランプ関税の影響で営業利益は1兆4,500億円押し下げられる。
●5.スズキ、4~9月期純利益1,927億円、前年同期比11.3%減(ロイター)
●6.日産自、4~9月期純損益▲2,219億円赤字、トランプ関税の影響も(朝日新聞)
●7.テレビ東京、2026年3月通期営業利益90⇒110億円、前年同期比41.2%増に引上げ(株式新聞)
●8.三菱製鋼、2026年3月通期営業利益、従来74⇒44億円(前年同期比33.0%減)に下方修正(TradersWeb)
●9.GSユアサ、4~9月期営業利益187億円、前年同期比19.1%増、通期見通しは据え置き(TradersWeb)
●10.日本製紙、2026年3月通期、従来340⇒300億円、前期比52.2%増に下方修正(TradersWeb)
1)上期営業利益90億円、前年同期比4.4倍。
●11.IHI、2026年3月通期、営業利益は予想1,500⇒1,600億円、前期比+12%増(Quick)
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・4443 Sansan 業績好調
・4911 資生堂 黒字転換
・9508 九州電力 業績好調T
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