相場展望9月1日号 米国株: トランプ「米国の王様」の最終目的は「ノーベル平和賞」授章 日本株: 個別銘柄のチャートで、多くの銘柄に「売り」サインが目立つ
2025年9月1日 15:50
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)8/28、NYダウ+71ドル高、45,636ドル
2)8/29、NYダウ▲92ドル安、45,544ドル
【前回は】相場展望8月28日号 米国株: トランプ氏のFRB圧力は、金利上昇と財政赤字増大につながる 日本株: 海外短期筋は、朝元気⇒後場買いが引っ込むという流れに変化
●2.米国株 : トランプ「米国の王様」の最終目的は「ノーベル平和賞」授章
1)NYダウは8/28、予想上回る堅調な成長や雇用指標を好感して最高値
・ただ、関税に伴う懸念は根強いものがある。
2)利下げは9月・▲0.25%利下げ実施が濃厚だが、積極的な利下げは困難
・株式市場の期待は、▲0.50%の大幅利下げ・9月決定である。
・しかし、米国経済指標は底堅い。
・また、労働市場の悪化は、トランプ政権が強引に進めた移民対策で検挙されるのを恐れて就労希望者が減少したという経緯がある。また、採用企業の方もトランプ関税による景気後退を見越して雇用に慎重なスタンスを進めている。
・以上の理由で、労働市場の悪化が雇用統計上では出ていたが、内容は景気後退による労働市場の悪化ではない。
・独裁的様相を深めるトランプ米国大統領により、「FRBに利下げ要求」が過激化している。ベッセント財務長官も大幅利下げ要求をし始めた。トランプ氏の推挙でFRB理事に就任した2名までも、これまでの姿勢を反転して「利下げ」を主張し始めた。次期FRB議長候補までも「利下げ」発言が目立つ。トランプ氏への「くじゃく派」が増えて、多数派になろうとしている。
・このようにパウエルFRB議長を取り巻く状況は、厳しくなっている。8/22のジャクソンホール会議でのパウエル議長の講演内容が「利下げ容認」とも受けてめられるものに変化していた。
・9月のFRBの連邦公開市場委員会(FOMC)では、「▲0.25%利下げ」を決定する可能性が高まっている。さすがに、GDP成長率の好調さをみるに、▲0.50%利下げは出来ないと思われる。▲0.50%利下げの場合、米国物価上昇にアクセルを踏む可能性が高い。
・トランプ大統領の利下げ視点は「米国財政赤字の拡大防止」にあるため、▲0.25%利下げでは、不満の怒りを爆発させるだろう。
3)トランプ「米国の王様」の最終目的は「ノーベル平和賞」授章
・トランプ米国大統領による利下げを求めて、FRB攻撃は過激化している。パウエルFRB議長にとどまらず、クック理事の解任、FRB建物の改修費用などへのクレームなど攻撃を広げ強めている。もともとは、民主党員のパウエル氏をFRB議長を再任したのはトランプ氏の1期目のことであった。共和党員でないため、再任されないと見込まれていた。
・トランプ大統領の1期目は、共和党重鎮などの意見を取り入れるなど慎重なスタンスで政治を推し進めていた。ところが、2期目は、「米国の王様」として独裁的手法を炸裂させている。共和党の重鎮の抑えが効かなくなり、トランプ共和党に豹変したのである。
・今までの米国が仮想敵国としてきたのは「ロシア、中国」であった。とろろがトランプ氏の指向姿勢は、「覇権国・ロシアのプーチン大統領」、「中国産党一党独裁の習近平・国家主席」と同類である。
・トランプ関税、FRB攻撃、同盟国への敵対的スタンスと搾取などとどまることがない。最近の最大のターゲットは、FRBに対する利下げ攻撃となっている。
・「ノーベル平和賞」授章に執着。
・ウクライナ侵略をしたロシアのプーチン氏へのアプローチをみて明らか。「侵略されたウクラウへのロシアへの領土譲渡」の提案をしている。要するに、「戦争を止めた」という実績だけが欲しいのである。
・イスラエルによるガザ地区の侵略も、イスラエル寄りの和平提案である。
・インドvsパキスタン紛争への停戦仲介の成果主張もそうである。パキスタンはトランプ大統領に感謝し、ノーベル平和賞授章に賛成を表明した。ところが、インドは停戦仲介はなかったと主張。トランプ氏は、ロシア産原油の輸入を理由に、インドへの関税50%引上げを実行した。ロシア産原油の最大輸入国の中国には、関税引上げは音無しである。
・ノーベル賞を決めるノルウェーの大臣に、予定なく電話して「ノーベル平和賞を受賞したい」との報道があった。それぐらい、ノーベル平和賞が欲しいのだ。世界の各国・地域に対しても「授章賛成の表明」を求めているぐらいだ。米国との関税交渉において、ノーベル賞受賞賛成を材料に使う国々が目立つ。
●3.米国連邦高裁もトランプ関税は「違法」判断、大統領は上告の意向(毎日新聞)
1)最高裁が判決を出すまではトランプ関税が有効とみなされる。
2)米国連邦高裁は8/29、トランプ政権が4月に国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき発動した「相互関税」を違法とする1審の国際貿易裁判所の判決を支持する判断を示した。高裁判決の発行は10/14で、最高裁で違法判断が示されるまで日本などへの相互関税は継続される。高裁の判事11人中、7人が判断に賛成し、4人は反対した。
3)合成麻薬の米国への流入対策に不備があるとして、カナダ・メキシコ・中国に課している制裁関税もIEEPAを根拠にしている。
4)今回、違法判断が争われているのはIEEPAに基づく関税のみで、海外依存度の高まりによる国家安全保障上の脅威を理由にした鉄鋼・アルミニウム、自動車への関税は対象外である。
●4.サンフランシスコ連銀総裁、9月の利下げに柔軟姿勢、関税インフレは「一過性」(ブルームバーグ)
●5.米国8月ミシガン大学消費者信頼感指数は58.2、予想58.6を下回る(フィスコ)
●6.米国7月個人消費支出(PCE)は前年同月比+2.9%上昇、2月以降で最大の伸び
1)消費支出が4ヵ月連続で最大の伸びとなった。(ブルームバーグ)根強いインフレの中でも、底堅い需要が続いていることが示唆された。
2)米国の消費者は現時点では、支出を続けているものの、物価上昇と雇用市場減速のなかで、その勢いがどの程度続くかは不透明だ。
●7.キャタピラー、関税の影響予想額を引上げ、最大18億ドルの可能性(ブルームバーグ)
1)鉄鋼とアルミニウムに対する関税が主な理由で、影響額は最大2,650億円。
●8.テスラ、7月の欧州市場の販売が前年同月比▲40%減(money world)
1)▲23%減だった6月から減少率が拡大した。
●9.米国が国際小包の免税措置を終了、中小企業に打撃、価格転嫁も(AFPBB)
1)トランプ政権は800ドル(約11.7万円)以下の低額輸入品が関税回避や薬物の密輸に悪用されているとして、これまでの免税措置を撤廃した。今後は荷物の発送国に応じて課税され、場合によっては1点につき80~200ドル(約1.17~2.94万円)の特定関税が課される。
2)日本・フランス・ドイツ・イタリア・インド・オーストラリアなどの郵便事業者は、米国向け小包の取り扱い停止を発表した。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)8/28、上海総合+43高、3,843
2)8/29、上海総合+14高、3,857
●2.中国大手銀行が上期決算を発表、利ザヤ縮小し苦戦、景気低迷が逆風 (ロイター)
●3.中国の景況感5ヵ月連続で節目の50割れ、8月は0.1改善も49.4、内需・外需も勢いなく
1)トランプ政権との貿易摩擦による対立は小康を保っているが、先行きが不透明なため、外需の回復に勢いがない。内需も不動産不況で力強さがなく、企業の景況感の回復が進んでいない。(産経新聞)
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)8/28、日経平均+308円高、42,828円
2)8/29、日経平均▲110円安、42,718円
●2.日本株 : 個別銘柄のチャートで、多くの銘柄が「売り」サインが目立つ様相
1)個別銘柄のチャートでは、多くの銘柄に「売り」サインが目立つ様相
・夏季休暇で相場は「夏枯れ」となっていたが、市場参加者が市場に戻りつつある。出来高が4億円程度と市場参加者が少ない相場は、底堅く動くという習性がある。9月相場に入り、市場メンバーが戻ると、相場が動きやすくなる。
・個別銘柄のチャートを見ると「株価が伸びきって、気迷い」が見受けられる銘柄が目立つ。
ソニー、日立、ダイキン、ダイフク、リクルート、バンダイナムコ、神戸物産、信越化、野村総研、DGM森精機、コマツなど。
しっかりは住友電工、三井金属、ニデック、堀場製作所、東急不動産など。
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・6869 シスメックス 業績堅調
・7609 シマノ 業績回復期待
・7952 河合楽器 業績好調
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