相場展望8月21日号 米国株: NYダウ「小動き」続くなか、半導体・ハイテクが売られる傾向 日本株: テクニカル分析と信用取引額の縮小は、黄色信号が点滅
2025年8月21日 12:44
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)8/18、NYダウ▲34ドル安、44,911ドル
2)8/19、NYダウ+10ドル高、44,922ドル
3)8/20、NYダウ+16ドル高、44,938ドル
【前回は】相場展望8月18日号 米国株: 9月利下げの判断で重要な、パウエルFRB議長8/22講演に注目 日本株: 他国の財務長官から指摘された、日銀の「インフレ対策の後手」
●2.米国株:NYダウ「小動き」続くなか、半導体・ハイテクが売られる傾向
1)NYダウは最高値接近で、持ち高調整の売りが出て5営業日連続の「小動き」
・NYダウの推移
8/14 ▲11ドル安
8/15 + 34ドル高
8/18 ▲34ドル安
8/19 + 10ドル高
8/20 + 16ドル高
・「小動き」の要因
・ジャクソンホール会議を控え様子見。
・小売決算待ち。
・高値警戒。
・一方、割安感のあるディフェンシブ株には物色買いが入り、相場を下支え。
・ただし、半導体・ハイテク株は8/13をピークにして下落傾向にある。
・米国主要株価指数の推移
8/13 8/20 差異 騰落率
ナスダック総合指数 21,713 21,149 ▲564 ▲2.59%
半導体株指数(SOX) 5,892 5,594 ▲298 ▲5.05
S&P500種株価指数 6,466 6,390 ▲ 76 ▲2.17
NYダウ 44,922 44,931 + 9 +0.02
2)トランプ政権の「株式市場」「金融市場」などの市場介入が目立ち、懸念が増す
・株式市場: インテル、TSMC、サムスン電子などの株式取得で意図不明。
・金融市場: FRBへの利下げ要求と、人事介入。
・企業 : 分野別関税(鉄鋼・アルミ、銅、半導体、医薬など)
●3.トランプ氏、2期目就任後に合計1億ドル超の債権を購入、政策恩恵の分野も(ロイター)
1)実業家のトランプ氏は、自身の子供が運営する信託に事業を移管したと説明している。ただ、今月6月に公表された2024年資産報告書では、さまざまな収益が最終的にトランプ氏に帰属することが示され、利益相反との批判につながっている。
●4.米国マクドナルド、人気セットメニューで▲15%値下げへ(ロイター)
1)米国外食大手マクドナルドと傘下のフランチャイズ店は、人気セットメニュー8品の価格を▲15%引き下げる他、5ドルの朝食メニューと8ドルのスペシャルコンボを提供する。消費意欲が低下した顧客の呼び戻しを図るねらいがある。
2)マクドナルドが8/6発表した4~6月期決算は、低価格戦略が奏功し、世界既存売上高が市場予想を上回った。
●5.トランプ氏、鉄鋼・アルミ関税を拡大、ベビー用品やオートバイなど400品目超が対象(ロイター)
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)8/18、上海総合+31高、3,728
2)8/19、上海総合▲0.74安、3,727
3)8/20、上海総合+38高、3,766
●2.中国、7月の若者失業率17.8%、前6月14.5%から増加、雇用情勢が悪化(TBS)
1)7月の16~24才の失業率は17.8%、25~29才は6.9%、30~59才は3.9%。若い世代の雇用情勢が一段と厳しさを増した。また、若者層の失業率が目立って悪い。
●3.中国の財政支出が拡大、3年ぶりハイペース、景気浮揚につながらず(ブルームバーグ)
1)ブルームバーグの推計によると、1~7月の歳出総額は前年同期比+9.3%増の約441兆円と、2022年8月以来の高い伸び率を記録した。その結果、広義の財政赤字は▲114兆8,600億円に達し、前年同期から+49%拡大。
2)インフラ投資や公務員の給与を含む財政刺激策を加速したにもかかわらず、予想外に大きく減速した。当局は、建設作業を妨げた異常気象と、地方政府による消費者補助金制度による一時的な資金不足が原因だと説明している。
●4.米国、中国の鉄鋼・銅などに新たな輸入規制、ウイグル強制労働への対応(ロイター)
●5.中国、インドのレアアース需要への対応を約束=印関係筋(ロイター)
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)8/18、日経平均+336円高、43,714円
2)8/19、日経平均▲168円安、43,546円
3)8/20、日経平均▲657円安、42,888円
●2.日本株 : テクニカル分析と信用取引額の縮小は、黄色信号の点滅
1)夏枯れ相場で、空売りが低水準のなか、海外短期投機筋の活躍で日経平均は最高値
・日経平均の推移
8/4 8/19 上げ幅 8/21 下げ幅
日経平均 40,290円 43,714 +3,424高 42,888 ▲826円安
+8.49%高 ▲1.88%安
・海外短期投機筋は、商品投資顧問(CTA)を軸に「相場の流れに従い」相場を増幅させてうごめく。CTAの資金力は大きく、相場の流れを一色に染めるパワーがある。ただ、投資というよりも投機であるため、一瞬の間に反対売買を行う特色がある。それは、「海の引き潮」のように、押し寄せては引き下がることを繰り返しながら潮が引いていくのである。引き下がる時の方がエネルギーが大きい。
2)テクニカル分析は「過熱感」を示す
8/4 8/19 8/20
・ストキャスティクス
FAST 52 94 85
SLOW 51 91 90
・騰落レシオ25日 135 146 143
3)信用取引額の縮小は、相場の黄色信号を点灯のサイン
・信用取引の推移
7/18 8/1 8/8 8/18 7/18⇒8/18
信用買残 40,331億円 38,987 38,905 37,786 ▲2,545減
信用売残 8,722 9,274 10,033 11,052 +2,330増
差引 31,609 29,713 28,872 26,734 ▲4,875減
・個人投資家は、「買いを縮小・売りを拡大」し、差額でも「減少」させている。
・信用投資は7/18⇒8/18で、▲4,875億円縮小・▲15.4%減となった。
・信用取引のマーケットは縮小しており、相場から撤退していることを表す。
相場への高値警戒感を示唆したと思われる。
・日経平均の市場参加者が減少しているなか、売り方が増えている。海外投資家のなかで、現物株の買い方は売り転換し、先物も売りに転換した。
・商いが閑散するなかでの下落は「まだ本気の売り」とはいえない。「商いが膨らむなかでの下落株安」となれば「本気の売り」となろう。
・海外投資家の現物株買い筋と先物買い筋は、ともに7/4週までは買いが続いたが、7/5週(~8/1)から売りに転換した。しかし、海外短期投機筋で膨大な資金を保有する商品投資顧問(CTA)の強引な先物買いで、日経平均は最高値を更新した。それだけに、CTAの動向に目が離せない。
・日経平均は8/19に▲168円反落し、8/20に▲657円と大幅続落した。
4)8/20、日経平均▲657円安は、前日の米国株のハイテク株下落を受けて反落したに過ぎず
・8/20日経平均下げの寄与は3銘柄の下落による
銘柄 下落幅 下落率 下落寄与
ソフトバンクG ▲1,145円安 ▲7.1%下落 ▲231円安
アドバンテスト ▲645円安 ▲5.6%下落 ▲174円安
東京エレクトロン ▲295円安 ▲1.3%下落 ▲29円安
日経平均下落合計 ▲434円安
・3銘柄で日経平均の下落幅▲657円の約66%を占めた。つまり、8/20の日経平均の下落幅は大きかったが、3銘柄を除くと大した下落ではない。前日の米国ハイテク株安を受けて少数の銘柄が下げたに過ぎない。
5)8/21も米国ハイテク株安の流れを受け、日経平均は売り優勢の展開を予想
・「潮の満ち引き」から想像すると、今日は前日の米国ハイテク株下げを受け朝方は続落で始まるものの、「潮の満ちる」番だとすると反発高もあり得る。海外短期投機筋の商品投資顧問(CTA)の動き次第にかかっている。
・CTAが米国株(NYダウは小動き・ハイテク株は下落)の動きを、どのようにみているのか? 試される8/21の値動きとなろう。
●3.三菱商事、米国銅鉱山に45年ぶり870億円出資、EVやデータセンター向け需要を狙う(産経新聞)
●4.ソフトバンクG、米国インテルに2,960億円出資へ、AI強化で半導体投資(NHK)
●5.上場企業、2026年3月期純損益44.9兆円黒字、前期比▲7.8%減の見通し(共同通信)
●6.レアアース、中国の輸出規制強化で日本国内の調達滞る(NHK)
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・2685 アダストリア 業績好調
・2801 キッコーマン 業績回復期待
・4523 エーザイ 業績好調