相場展望8月18日号 米国株: 9月利下げの判断で重要な、パウエルFRB議長8/22講演に注目 日本株: 他国の財務長官から指摘された、日銀の「インフレ対策の後手」

2025年8月18日 13:21

■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)8/14、NYダウ▲11ドル安、44,911ドル
 2)8/15、NYダウ+34ドル高、44,946ドル

【前回は】相場展望8月14日号 米国株: トランプ関税で、財政赤字縮小でなく拡大、関税負担は消費者へ 日本株: 海外短期投機筋の先物買い相場だけに、急落に注意

●2.米国株:9月利下げの判断で重要な、パウエルFRB議長の8/22講演に注目

 1)米国7月卸売物価指数(PPI)、市場予想を上回る3年ぶりの急伸⇒株価にはマイナス
  ・PPIは6月と比べ+0.9%上昇となり、市場予想の+0.2%上昇を大きく上回った。急伸の要因は、野菜・牛肉など食料品やテレビなど家電製品、サービス価格の上昇したこと。

  ・それは、トランプ関税が影響し始めたとみられる。

  ・7月PPIの急伸を受け、米国長期金利は上昇し、利下げ期待が後退。
     米国債利回りの推移
         2年国債利回り  10年国債利回り
      8/13  3.675%      4.233
      8/15  3.755       4.320
  ・そのため、インフレ懸念が再び懸念され、9月の利下げ観測が後退する可能性が浮上すると予想する。

  ・米国株式相場は、このところの金利引下げ確率が100%となるなど、利下げ期待が強く、最高値圏にある。しかし、今回のPPIの急伸は、株価が下押しする可能性を示唆したと思われる。

  ・米国7月小売業の売上高は前月比+0.5%上昇、個人消費が堅調を維持。

  ・ミシガン大学調査、トランプ関税でインフレ期待が上昇し、物価上昇への懸念が深まる。米国消費者心理が悪化へと動く芽が出てきている。

 2)利下げには、9月発表の物価動向がキー
  ・株式相場は、利下げ期待が膨らんでいる。9月の利下げ確率を100%とみて、我先に株価を買って押し上げている。
  ・しかし、パウエルFRB議長は「インフレ退治」を優先させて、金利引下げ措置を先延ばしにしてきた。
  ・だが、最近のFRB理事や地区連銀の総裁のなかで、「利下げ」支持派が増えてきている。雇用を心配させる指標も出てきた。
  ・徐々に、パウエルFRB議長を取り巻く環境は厳しさを増している。だが、インフレ進行の指標もあり、情勢は混とんとしている。
  ・いずれにしても、9月発表の物価動向に注目したい。9月利下げ論議の決着は、それ次第となろう。

 3)NYダウは8/14~15、小動き
  ・NYダウの推移
    8/14  ▲11ドル安
    8/15  + 34ドル高
  ・米国・ロシア首脳会談を前に、様子見ムードが出た。
  ・小動きの背景には、PPIの急伸によるインフレ懸念の強まりがある。

 4)ジャクソンホール会合でのパウエルFRB議長の講演が焦点
  ・ジャクソンホール会合は8/21~22に開催される。パウエル議長の講演は8/22に予定されている。注目は、「利下げ幅」への言及である。
  ・株式市場は「▲0.50%の利下げ」を期待する観測が広がっている。米国株は▲0.50%利下げを織り込んだ高値圏にある。
  ・しかし、利下げへの懸念材料が出てきた。それは、インフレ懸念の再燃である。
   その要因。
     ・PPIが大幅に上昇。
     ・ミシガン大学調査の期待インフレ率が上昇。
     ・輸入物価指数がプラスに反転上昇し、関税によるインフレへの影響が強まりつつあること。
  ・パウエル議長が9月のFOMC会合で、インフレ対応を理由として「▲0.25%」の利下げをした場合、株式市場で材料出尽くし感が出ると警戒される。まして、「金利据え置き」となれば、株式相場に波乱が起こる可能性がある。

●3.プーチン氏の「外交的勝利」の見方、大幅譲歩なく時間稼ぎに成功(読売新聞)

 1)トランプ氏は関税発動に触れず。握手短く、険しい表情、トランプ大統領は結果出せず。
 2)ボルトン元米国補佐官「ウクライナ停戦実現へ具体的な道筋を描けなかった。追加会談のほかにトランプ氏が得たものは何もなかった」と述べた。(共同通信)

●4.米国7月輸入物価+0.4%上昇とプラスに反転、消費財の価格上昇で(ロイター)

 1)米国政権による関税措置の影響でインフレが加速する兆候が示された。

●5.米国8月ミシガン大学消費者信頼感指数は58.6、予想62.0に反し悪化、インフレ期待は上昇

 1)トランプ政権の関税措置の影響で物価上昇が重しになった。(ロイター)
 2)1年先の期待インフレ率は4.9%と、7月の4.5%から上昇した。

●6.米国7月小売売上高は前月比+0.5%増、2ヵ月連続プラス(共同通信)

 1)自動車・部品の売上が伸びて、全体を牽引した。市場予想は+0.6%増を下回った。(ブルームバーグ)
  2)月ごとの変動が大きい自動車・同部品を除いた売上高は+0.3%増だった。

●7.米国7月生産者卸売物価指数(PPI)は前年同月比+3.3%と大幅上昇、予想+2.5%

 1)6月は+2.3%上昇だった。(ブルームバーグ)
 2)前月比では+0.9%上昇。
 3)関税に関連する輸入コストの上昇を、企業が価格に転嫁しつつあることを示唆している。

●8.米国失業保険申請件数は▲0.3万人減の22.4万人、予想22.5万人、人員削減広がらず  

 1)雇用主が人員削減について、引き続き消極的なことが示唆された。(ブルームバーグ)
 2)継続受給者は195.3万人と高止まり

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)8/14、上海総合▲17安、3,666
 2)8/15、上海総合+30高、3,396

●2.逆風強まる中国製造業の労働者、デフレと米国関税が個人所得を直撃(ロイター)

●3.中国経済が減速、7月の指標は軒並み予想を下回り、先行き警戒(ブルームバーグ)

 1)中国経済が8/15発表した7月の小売売上高は前年同月比+3.7%増加、予想は+4.6%だった。6月は+4.8%増加していた。7月の工業生産は前年同月比+5.7%増と、昨年11月以来の小さな伸びだった。6月は+6.8%増えていた。1~7月の固定資産投資は前年同期比+1.6%増で、予想は+2.7%を見込んでいた。不動産セクターでのマイナス幅が拡大した。今回の指標は中国国内経済が勢いを失っていることを示している。

 2)中国政府は景気押し上げに向けた大規模な対策には踏み切らず、最近では企業間の過当競争を抑制する取り組みを強化している。鉄鋼や太陽光発電、電気自動車(EV)など幅広い業界で企業収益に影響する恐れもあるため、投資家の注目を集めている。

 3)米国との対立が激化するなか、長期的には外需への依存を減らすため、当局は国内消費の底上げを模索している。
 4)中国経済は景気減速のさらなる兆しが示される可能性が高く、向こう数ヵ月でそのペースが一段と加速するかもしれない、との見方がある。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)8/14、日経平均▲625円安、42,649円
 2)8/15、日経平均+729円高、43,378円 

●2.日本株:他国の財務長官から正論で指摘された、日銀の「インフレ対策の後手」

 1)決算発表の内容次第で、株価は急伸・急落と明暗がハッキリする相場展開が目立つ
  ・マツモトキヨシココカラ、4~6月期純利益+11%増も材料出尽くしで大幅下落。
  ・ソフトバンクG、株価急騰
     ・ソフトバンクG株価の推移
        4/07  5,835円
        8/15  16,520
        差異 +10,685円高

 2)米国財務長官の8/13発言「日本はインフレ対策で後手」⇒日本金利上昇⇒円高へ
   ・日本10年国債利回りの推移
        8/08  1.489%
        8/13  1.516
        8/15  1.573
   ・円相場の推移
        8/12  148.29円
        8/13  ベッセント米国財務長官発言
        8/14  146.44
        8/15  147.07
   ・日銀は黒田~植田総裁と「物価上昇に眼を向けず、低金利・円安政策」を進めてきた。円相場は、115円⇒150円超となった。結果、円安で食料・エネルギー価格は急伸⇒物価上昇率は3%台と家計を苦しめている。にもかかわらず、植田総裁は「物価上昇は2%未満」とうそぶく。追い打ちをかけるように賃金上昇も物価高を下回り、実質賃金マイナスが岸田政権から石破政権へと連続している。経済音痴の石破政権の下では「家計が楽になる」道筋が見えない。選挙で、自民党・与党が何回負けたら気が付くのだろうか?18~29歳・30歳台・40歳台の働く世代で、自民党支持率がすべて10%未満の1ケタとなっている。

 3)予想上回るGDPを好感し、日経平均は8/15に史上最高値を更新
  ・日経平均8/15、+729円高・43,378円

 4)日経平均は急騰で、米国NYダウに比べ「割高感」が目立つ
  ・NYダウと日経平均の推移
      NYダウ     日経平均
    8/04終値 44,173ドル   40,290円
    8/15終値 44,946     43,378
    差引   + 773ドル高   +3,088円高
    値上がり率+1.75%    +7.66%

 5)日経平均は「海外短期投機筋」次第の相場
  ・海外短期投機筋は、現物株ではなく株価指数先物を中心に株価操縦を続けている。このため、先物の動向が株式相場を決める様相となっている。

●3.4~6月期GDPは年率1.0%増、5四半期連続でプラス(TBS)

 1)トランプ関税で影響も、「輸出」がプラス成長を支える。
  ・日本車メーカーが関税コスト分を負担する形で値下げし、輸出台数を維持したことなどでプラスになったとみられる。

●4.ベッセント米国財務長官、植田・日銀総裁に「インフレ抑制で後手」と指摘(ブルームバーグ)

 1)日本はインフレ問題を抱えているが「日銀は後手に回っており利上げするだろう」と日銀の早期利上げを指摘した。

●5.電通、今期▲754億円の最終赤字、海外で3,400人の人員削減(日経新聞)

●6.SOMPO、4~6月期純利益▲17%減、円高で外債含み益が減少(日経新聞)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・2928 RIZAP      業績回復期待
 ・4301 アミューズ    業績好調
 ・4502 武田薬品     業績好調

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