相場展望7月17日号 米国株: 金利が上昇し株価に割高感、主力株の株価がまちまち 日本株: 日本の参院選挙と、米国のFRB議長の去就がポイントと予想

2025年7月17日 13:14

■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)7/14、NYダウ+88ドル高、44,459ドル
 2)7/15、NYダウ▲436ドル安、44,023ドル
 3)7/16、NYダウ+231ドル高、44,254ドル

【前回は】相場展望7月14日号 米国株: 新トランプ関税で、不協和音が増大⇒株式市場に懸念増す 日本株: 参院選挙と、石破首相の米国へ反発で新関税の変化に注目

●2.米国株:金利が上昇し株価に割高感、主力株の株価がまちまち

 1)米国金利が上昇 ⇒ 株価に割高感が出て売られる可能性
  ・米国10年債利回りの推移
    7/01  4.242% 
    7/15  4.481
    7/16  4.453

 2)米国消費者物価指数(CPI)が加速、6月は前月比+0.3%上昇し2.9%
  ・トランプ関税による価格転嫁が一段と反映し始める。衣料品・家庭用装飾品・玩具・家電など主に米国の輸入品価格が急伸した。
  ・自動車を除くとコア指数は+0.55%上昇と、2021年11月以来の大幅上昇。新車と中古車、住居費、ホテル宿泊費の価格は下落した。

 3)銀行決算が重荷に
  ・米国株相場が高値圏で推移するなか、好決算を発表した金融株が売り優勢になった。
  ・金融株の売りで、利益確定売りが広がっただけに、動向に注目したい。

 4)主力の株価がまちまち
  ・アップル株価の推移(終値ベース)
     2024年12/23  255.59ドル
     2025年04/07  198.15
        07/16  210.16: 12/23高値から▲17.77%下落

  ・テスラ株価の推移
     2024年12/23  431.66ドル
     2025年04/14  241.37
        07/16  321.67: 12/23高値から▲25.48%下落

  ・エヌビディア株価の推移
     2024年12/23  137.01ドル
     2025年04/07  110.93
        07/16  171.37: 12/23から+25.08%上昇

  ・マイクロソフト株価の推移
     2024年12/23  430.53
     2025年04/07  388.45
        07/16  505.62: 12/23から+17.44%上昇

  ・オランダの半導体製造装置大手ASMLが先行きの業績に「慎重な見通し」

  ・ASMLの決算発表で慎重な見通しを示したのを受け、これまで買い優勢だったが、一転して売られた。
    ・ASML株価の推移
       2024年12/23  713.59ドル
       2025年04/07  668.81
          07/14  823.02: 12/23から+15.36%上昇
          07/16  754.45: 7/14から▲8.33%下落 

    ・台湾・半導体製造大手TSMCは好決算が見込まれるが、決算発表後の株価の動向に注視したい。半導体株は、株価の急伸が続いてきただけに高値警戒が出る可能性がある。

 5)米国株式市場は「楽観的」が、いつまで続くか
  ・「楽観」要因
   ・4月中旬以降の株価上昇の効果が反映し、個人消費支出が増加していること。
   ・パウエルFRB議長の交代で、トランプ氏の影響で金利低下を目論む。金利低下は、株式にとって相対的に「割安が意識」されることになる。
  ・「懸念」要因
   ・トランプ関税による輸入物価上昇で、インフレ圧力が加速する。加えて、消費支出が減少し、米国企業利益が減少に転じ、米国景気が後退。この場合、景気後退とインフレという悪質なスタグフレーションが起きる可能性が増すことになる。
   ・トランプ氏は、米国景気対策として「金利低下」による浮揚策を狙って、圧力をかけている。落としどころを間違えば、金融市場が混乱する可能性がある。
  ・現段階は、米国株式市場では「楽観論一色」だけに、慎重さも必要。

●3.米国CPI、6月は前年比+2.7%、前月比+0.3%に加速、予想とは一致(ロイター)

 1)前月比では前月の+0.1%増⇒+0.3%増から加速し、1月以来の大幅な上昇。前年比では+2.7%上昇、5月は2.6%だった。
 2)変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数は、前年比+2.9%と5月2.8%から上昇した。

●4.関税で物価上昇の圧力、インフレ転換点の可能性=アトランタ連銀総裁(ロイター)

●5.米国6月卸売物価は前年同月比+2.3%上昇(共同通信)

●6.米国、インドネシアとの関税交渉で合意、19%の関税措置と米国からの輸入品は無関税

 1)米国産エネルギー150億ドルと米国農産品45億ドルも購入。(共同通信)

●7.メタ、巨大AIデータセンター建設に数千億ドル投資、2026年稼働開始か(ロイター)

●8.米国関税措置で、国内雇用▲0.2%減・実質所得▲0.4%減少=SF連銀報告(ロイター)

 1)サンフランシスコ連銀は、カナダとメキシコに25%、中国に30%、その他貿易国に10%関税措置が適用された場合の試算をした報告書を公表した。

●9.米国、メキシコ産トマト輸入の大半に17.09%の関税を賦課(ブルームバーグ)

 1)4月時点で、メキシコ産トマトは不当に安い価格で販売として20.91%関税を表明。
 2)これとは別に、トランプ氏は7/12、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)準拠の貿易品目以外のメキシコからの輸入品の多くに、8/1から30%関税を課す方針を表明していた。
 3)米国でのトマト価格に大きな影響を及ぼす可能性がある。

●10.強硬トランプ関税、1968年型スタグフレーション暴落に注意=永井洋一(moneyworld)

●11.インフレは高止まり、利下げ急がず=クリーブランド連銀総裁(ブルームバーグ)

●12.トランプ氏、香港企業による米国AV機器部品メーカーの買収阻止命令(ロイター)

 1)米国AV機器部品メーカーのジュピター・システムズを香港企業・髄鋭国際が買収する計画について、軍事・重要インフラに関連し安全保障上の懸念から阻止する命令を発したと、米国財務省が7/11発表した。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)7/14、上海総合+9高、3,519
 2)7/15、上海総合▲14安、3,505
 3)7/16、上海総合▲1安、3,503

●2.中国、住宅価格指数が悪化、北京など主要70都市の8割で下落、不動産不況の出口見えず(産経新聞)

●3.中国の4~6月のGDP+5.2%上昇、不動産不況や米国関税で景気は減速傾向(NHK)

●4.香港不動産の新世界発展、2,930億円融資を目標期限内に確保できず、協議は継続(ブルームバーグ)

●5.中国輸出、6月は+5.8%増に加速、米国関税の一時停止期限控え前倒し(ロイター)

 1)米国・中国間の輸出規制が大幅に緩和され、貿易条件は4月中旬と同様の状況に戻ったとの指摘がある。
 2)中国のレアアース(希土類)輸出は6月に前月比+32%増加し、米国・中国が先月に結んだレアアース貿易を巡る合意が奏功しつつある可能性を示唆した。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)7/14、日経平均▲110円安、39,459円
 2)7/15、日経平均+218円高、39,678円
 3)7/16、日経平均▲14円安、39,663円

●2.日本株 : 日本の参院選挙と、米国のFRB議長の去就がポイントと予想

 1)日本国債利回りが急騰、参院選で与党敗北リスクで財政赤字増を予想した動き
  ・日本10年債利回りの推移
     7/01  1.400%
     7/16  1.575

  ・日銀の意向を踏まえての金利高ではなく、参院選での少数与党による財政膨張を懸念した金利上昇となっている。

  ・長期金利の上昇は、高値圏にある日経平均にとって「割高感」による売りが広がりやすい。

 2)トランプ関税⇒ドル高・円安方向⇒7/16は一時149円⇒物価上昇加速の懸念
  ・パウエルFRB議長の解任近いとの報道を受け、ドル急落・円は146円台に円高。
  ・市場は「パウエルFRB議長の解任が近く、FRBがハト派寄りになる」と見込みつつある。つまり、株式市場は「金利引下げ」を意識し始めて、株高を後押ししているかもしれない。
  ・日本の参院選挙と、米国のパウエルFRB議長の去就が、相場を動かす要因となると予想される。

●3.セブン&アイ、カナダのコンビニ大手クシュタール社は買収提案を撤回発表(NHK)

 1)セブン&アイが建設的な協議に応じる姿勢を見せないことを理由にあげている。

●4.日銀が物価見通しの上方修正を検討する見込み、食料品上振れ(ブルームバーグ)

 1)5月の全国諸費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は前年比+3.7%上昇し、伸び率は2023年1月以来の高水準となった。6カ月連続で+3%台の伸びが続いており、日銀目標の+2%を上回るのは38カ月連続となる。

●5.半導体メモリー大手のキオクシア、社債4,400億円、優先株の配当負担軽減(時事通信)

 1)最大30億ドル(約4,400億円)のドル建て社債を8/1までに発行する。日本政策投資銀行が保有する優先株を最大3,310億円ですべて買い取り、通常の株式よりも重い配当金支払いの負担を軽くするのが狙い。
 2)併せて既存の融資を借り換え、三井住友銀行・三菱UFJ銀行・みずほ銀行・政策銀行から計4,475億円を新たに借入する。返済期間は従来の2027年6月から2029年7月末に延び、担保も必要なくなる。

●6.ホンダと日産、2020年台後半にソフト共通化、搭載車発売へ(共同通信)

 1)高度なソフトを搭載する次世代車の開発や運用には膨大な車両データが必要で、協業するメリットは大きい。ソフトは、自動運転や社内での娯楽といった機能を拡張する上で重要な技術で、開発競争が激化している。協業により開発を加速させて、コストを抑える狙いがある。
 2)米国EV大手テスラや中国勢が先行しており、タッグを組んで対抗したい考え。

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・3141 ウエルシア       業績好調
 ・6971 京セラ         業績好調

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