JPホールディングス、先行投資による費用増から小幅減益予想も収益拡大基調が期待される
2025年6月17日 07:58
JPホールディングス<2749>(東証プライム)は子育て支援のリーディングカンパニーである。長期ビジョンに「選ばれ続ける園・施設づくり」を掲げ、認可保育園・学童クラブ運営を中心に子育て支援の質的向上と事業を通じた社会貢献を推進するとともに、新規領域への展開も推進している。26年3月期は小幅減益予想としている。新中期経営計画の達成に向けた「足場固め」の年と位置付け、先行投資による費用増加を見込んでいる。ただし保守的と考えられる。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は戻り高値圏から反落して上値を切り下げる形となったが、調整一巡して出直りを期待したい。
■総合子育て支援のリーディングカンパニー
子育て支援のリーディングカンパニーである。長期ビジョンに「選ばれ続ける園・施設づくり」を掲げ、認可保育園・学童クラブ運営を中心に子育て支援の質的向上と事業を通じた社会貢献を推進するとともに、新規領域への展開も推進している。事業区分は認可保育園や学童クラブなどを運営する子育て支援事業、保育所向け給食請負事業、英語・体操・音楽教室請負事業、保育関連用品の物品販売事業、研究・研修・コンサルティング事業としている。
なお23年10月にダスキン<4665>と業務提携し、学研ホールディングス<9470>が保有していた全株式をダスキンへ譲渡(23年11月)してダスキンが第1位株主となった。学研ホールディングスとの業務提携は継続している。また25年7月1日付で本店を愛知県名古屋市から東京都港区に移転する。
■保育園は期末に向けて児童数増加・稼働率上昇
グループは持株会社の同社、全国で保育園・学童クラブ・児童館などの子育て支援施設を運営する日本保育サービス、保育園向け給食請負などを行うジェイキッチン、子育て支援施設向け英語・体操・音楽教室の請負、保育関連用品の企画・販売、保育や発達支援に関する研修・研究、保育所等訪問支援、子育て支援プラットフォーム「コドメル」運営などを行う日本保育総合研研究所、コンサルティングを行う子育てサポートリアルティ、外国人の就労支援を行うワンズウィル(24年1月子会社化)で構成されている。
また25年6月にはテレビ熊本、TKUヒューマン、およびその関係者と合弁でJPホールディングス九州(同社出資比率50%)を設立した。外国語指導助手事業、英語に特化した子育て支援施設運営事業、新たな子育て支援拠点等の展開により、地域社会への貢献とともに地方創生の実現を目指す。
25年3月期末時点の運営施設数は首都圏を中心に、保育園が205園、こども園が4園、学童クラブが96施設、児童館が13施設、交流館が2施設で、子育て支援施設合計320施設となっている。また渋谷区放課後クラブ「クラブ事業コーディネート」業務を受託している。なお23年4月に同社グループ初となる英語に特化した新業態としてバイリンガル保育園を首都圏で3施設開設するなど、既存保育園のバイリンガル保育園への業態変更も推進している。
収益は既存施設の稼働率、新規施設の開園、保育士待遇改善に伴う人件費の増加、補助金の増減などが影響する。また新規施設の開園は概ね4月のため、期前半は各施設への保育士配置に係る費用が先行するが、児童数が増加して稼働率が上昇する期後半に向けて収益が拡大する特性がある。自治体から受け取っている保育士の借り上げ社宅に対する補助金等については、従来は補助金収入として営業外収益に計上していたが、22年3月期から売上高に計上する方法に変更した。
■長期経営ビジョンは「選ばれ続ける園・施設」
子育て支援事業を取り巻く事業環境としては、保育園の待機児童問題が解消した一方で、学童クラブの待機児童数増加対策などが新たな政策テーマに浮上し、新たな少子化対策および幼児教育・保育の質的向上対策として24年度より、親の就労を問わず生後6カ月から2歳を対象に誰でも保育を利用できる「こども誰でも通園制度」の開始、保育士配置基準における対人数の変更、出産を機に退職した親が再就職する際にこどもを保育所に預けやすくする保育所「入所予約枠」制度の開始、これまで特別区で運用していた地域限定保育士の全国運用の開始、保育士不足緩和に向けた保育補助者支援金の有資格者への拡大などが推進されている。
こうした事業環境を背景として、長期経営ビジョンでは「選ばれ続ける園・施設」を目指し、連結売上高1000億円(既存事業500億円、新規事業・M&A500億円)に向けて既存事業改善・拡大、新規事業、資本・業務提携を推進している。
さらに25年5月に策定した中期経営計画(ローリング方式により年次で見直し実施)では、目標数値として28年3月期の売上高454億08百万円、営業利益63億27百万円、営業利益率13.9%を掲げている。新規事業の計画は31億78百万円(25年3月期実績は7億23百万円)としている。基本方針として既存事業の業容拡大、新規事業の推進、既存および関連する事業の積極的なM&Aを推進する。
既存事業の業容拡大では東京都認証学童保育の開設強化、保護者ニーズの高い高質な施設開設(認可外施設としてインターナショナルプリスクールの開設を新規展開)などを推進する。新規事業の推進では、海外事業の強化(東南アジアでの現地企業と連携した施設運営、ALT(外国語指導助手)事業、語学学校、語学教育プログラムなど)や、自治体と連携した事業(地方創生など子育て関連事業)などを推進する。既存および関連する事業の積極的なM&Aでは、運営・業務の効率化および経営管理の高度化を捉えたシステム化、グローバルおよび業容拡大を捉えた人材育成・専門人材確保を推進する。
なお地方自治体との子育て支援に関する協定は、24年9月に茨城県境町、24年12月に埼玉県春日部市、25年1月に静岡県小山町、25年2月に島根県出雲市、25年3月に富山県高岡市、25年4月に熊本県御船町と締結し、いずれも企業版ふるさと納税を行っている。
■子育て支援とSDGsの両立に向けた「コドメル」サービス
子育て支援と資源の有効活用・環境保全(SDGs)の両立を目的として、会員制の子育て支援プラットフォーム「コドメル(codomel)」サービスを展開している。全国で運営する300超の子育て支援施設(保育所、学童クラブ、児童館)の園児・児童と、その保護者を会員化して、乳児期・幼児期・学童期において子育てに関する様々な商品やサービスを幅広く提供する。
第1弾サービスとして22年4月より、子育て関連用品を中心とするリユース品に関する「子育て商品マッチングサービス」を開始した。24年6月には業務提携先であるダスキン本社、およびダスキン東京オフィスに子育て関連商品の「コドメル寄付受付BOX」を設置した。今後の第2フェーズでは子育て世代に商品やサービスを提供するBtoC事業、第3フェーズでは東南アジアへのサービス展開を推進する。そして6年目に取扱高18億円を目指し、新たな事業柱を構築する方針だ。
さらに新規領域への展開も推進している。保護者の困りごとの解決に向けた事業展開では、自宅で簡単に調理できる「夕食準備」として、東京都・神奈川県・埼玉県で運営する保育園10園において23年8月より食品のテスト販売を開始した。テスト販売の状況を確認し、販売する保育園の拡大や商品ラインナップの拡充を図り、同業他社への外販や子育て支援プラットフォーム「コドメル」を活用したWebでの販売も検討する方針としている。
■26年3月期は先行投資で小幅減期予想だが保守的
26年3月期の連結業績予想は売上高が前期比1.8%増の419億04百万円、営業利益が2.7%減の56億53百万円、経常利益が2.6%減の57億03百万円、親会社株主帰属当期純利益が4.5%減の37億45百万円としている。配当予想は前期と同額の12円(期末一括)で、予想配当性向は27.4%となる。
なお25年4月の新規開設は学童クラブ・児童館25施設、移行は9園(認定保育園から認定こども園へ移行2園、認可保育園からバイリンガル保育園へ移行5園、認可保育園からスポーツ保育園へ移行2園)で、25年4月末時点の運営施設数は合計345施設となっている。
26年3月期は新中期経営計画の達成に向けた「足場固め」の年と位置付け、先行投資による費用増加を見込んでいる。ただし保守的と考えられる。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株主優待制度は毎年3月末および9月末の年2回
25年2月25日に株主優待制度(詳細は会社HP参照)導入を発表した。毎年3月末および9月末時点で6カ月以上継続して5単元(500株)以上保有株主を対象に、年間合計2万円分のクオカード(年2回、各基準日1万円のクオカード)を進呈する。25年3月末対象より開始した。
■株価は調整一巡
株価は戻り高値圏から反落して上値を切り下げる形となったが、調整一巡して出直りを期待したい。6月16日の終値は533円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS43円78銭で算出)は約12倍、今期予想配当利回り(会社予想の12円で算出)は約2.3%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS228円06銭で算出)は約2.3倍、そして時価総額は約468億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)