長栄、通期の営業利益は前期比+11.2%増 今後も不動産管理事業を主軸に、大都市圏での事業拡大を目指す

2022年6月13日 17:08

目次

長田修氏(以下、長田):株式会社長栄の代表取締役社長、長田修です。本日はお忙しい中、当社の決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。

本日は、ご覧の目次に沿ってご説明します。1つ目に会社概要、2つ目に2022年3月期決算概要、3つ目に2023年3月期業績見通し、4つ目に成長戦略の順になります。トピックでは、当社が今後注力するサービスをご説明します。

会社概要

はじめに、会社概要についてです。当社は京都府を中心に滋賀県、大阪府、愛知県、東京都で賃貸不動産の管理を受託する不動産管理事業と、自社物件の賃貸やマンスリーマンション運営を行う不動産賃貸事業を展開しています。

2022年3月末時点での管理戸数は、自社物件を含めて25,157戸です。管理受託物件が全体の82パーセントで、自社物件が18パーセントです。

京都府内の物件が全体の8割を超えており、現在は大阪府、滋賀県、愛知県、東京都へとエリアを拡大しているところです。

管理と賃貸を両輪とする事業展開

当社の2つの事業セグメントである管理と賃貸は、両セグメントの相乗効果によって成長を続けています。

自社物件の取得は、不動産管理事業における新規進出エリアの管理戸数のボリューム確保に貢献しています。また、自社物件をオーナー向けサービスのテストの場として活用することで、管理受託物件の入居率向上につなげています。自社物件は、当社で管理を行うことで高い入居率を維持し、さらに家賃収入の増加と購入物件の選定に貢献しています。

次ページから、各事業内容について詳しくご説明します。

不動産管理事業 事業内容

不動産管理事業では、「マンションオーナー様に寄り添って考える」をコンセプトに、不動産オーナーから賃貸マンションの管理を受託しています。

不動産価値の最大化に貢献するため、賃貸経営に必要な家賃管理、入退去管理、設備管理、清掃業務、空室対策などの管理サービスをワンストップで提供する管理センター「Bellevie(ベルヴィ)」を展開しています。これらのサービスを当社で一貫して行うことで、不動産オーナーによるスムーズな賃貸経営を実現しています。

セグメント売上高は、主に安定的な管理費収入と、賃貸経営で定期的に必要となるリフォーム工事収入で約9割を占めています。当社の管理費は入居戸数と連動しており、入居率を高めることで、不動産オーナーと当社の双方にとって、収益性を高めるという目的を共有できる管理形態となっています。

類似サービスとの比較

スライドに記載の表は、他の管理会社における類似サービスとの比較です。管理会社の中には分譲マンションの管理会社やサブリース会社もあります。当社が展開しているのは、一般の不動産オーナーから賃貸マンションの管理受託を行う、賃貸マンションの管理業です。

他社と異なる点は、従来、建設会社や不動産仲介会社が本業の付随サービスとして行っていた賃貸マンションの管理を、当社では創業以来、本業として注力しているというところです。

不動産管理事業を本業とした高品質なサービスを提供

先ほどご説明したとおり、当社は賃貸不動産管理業を独立したサービスと捉えており、マンションオーナーと入居者双方のニーズに応え、高品質なサービスを提供することで対価が生まれると考えています。

この考えに対して、不動産管理を本業としていない企業では、建築時の建築費や賃貸契約の仲介料が主な目的となっていることが多く、当社の考える賃貸不動産管理業とは性質が大きく異なります。

また、コロナ禍以前の当社は、賃貸市場が盛んなアメリカでの研修を20年以上前から実施しており、これまでに100名以上が参加しています。アメリカでは、自分の住む物件を管理会社で選ぶ人もいるということで、今後は日本でも、賃貸不動産管理会社の存在価値がさらに上昇すると考えています。

当社は入居率120パーセントを目標に掲げています。満室を維持しながら、空室待ちが20パーセント出るという状態を目指し、さらなるサービスの拡充を図ります。

テナントリテンションを実現する独自の入居者向けサービス(1/2)

入居者向けサービスについてご説明します。当社では、入居者さまに長く住み続けていただくことがマンションオーナーにとっての収益最大化につながるとの考えから、「入居者ファースト」を追求しています。安心、安全、快適なマンションライフを過ごしていただくために徹底した管理サービスを提供しており、24時間365日、いつでもトラブルに対応できる体制を構築しています。

スライド左下は京都市近郊の地図ですが、青色の丸印で示している部分が当社の管理センター「Bellevie」です。このように細やかに店舗を配置することで、当社の管理専門スタッフであるレジデンシャルクリエイターが原則30分以内に駆けつけることが可能となり、入居者さまの安心、安全が確保されるかたちとなっています。

また、清掃スタッフに加え、当社の教育された管理専門スタッフが自ら、原則として週1回以上のペースで各物件を巡回することで、設備状況や清掃状況を確認しています。不具合の発生時には、すぐに対応できる体制になっています。

このような管理形態は、賃貸不動産管理業界では大変珍しく、私が知る限りでは同じ形態を取っている管理会社はありません。

テナントリテンションを実現する独自の入居者向けサービス(2/2)

当社では、管理物件にお住まいになるすべての入居者さまのマンションライフがより楽しくなるように、さまざまなイベントやキャンペーンを実施しています。20年来続けている「年末チャポン宝゛(だから)くじ」では、昨年はコロナ禍で苦しむ入居者さまのために、賞金を現金総額5,000万円にアップし、さらに抽選で700名さまに当たる内容にしました。

また、コロナ禍以前では、びわ湖花火大会に2,000名、木下大サーカスに4,000名、京都水族館に6,000名、東映太秦映画村には6,000名をご招待するなど、さまざまなイベントで入居者還元を行っていました。

これらの「入居者ファースト」による入居者満足度の向上はテナントリテンション、ひいてはオーナーの収益最大化につながっていくと考えています。

オーナーに寄り添った不動産管理サービス

オーナー向けサービスについてご説明します。オーナーに対するサービスのポイントは大きなものとして3つあります。1つ目は、高い提案能力と空室対策です。小さなエリアに管理拠点を多店舗展開することで、綿密な市場分析とオーナーのさまざまなニーズへのスピーディな対応を実現しています。

また、自社物件を数多く保有する当社ならではの成功事例を活かし、オーナーに空室率低減の最善策を提案することができます。

2つ目は、厳格な入居審査です。優良入居者の選択、反社会的勢力の排除など、蓄積されたノウハウをもとに厳格な審査を実施することで、スムーズな家賃支払いと、トラブルのない健全な賃貸運営を実現しています。その結果、家賃回収率が99.7パーセントと高い数字になっています。

3つ目は、外国人・高齢者の入居者サポートです。社会変化に伴う賃貸需要者層の変化に対応すべく、外国人専用窓口を設置しました。また、高齢者の入居に不安なオーナーとご家族のために、セキュリティシステムを用いた見守りプランを提供するなど、多様なサポート体制を築いています。幅広い層の入居者にとって安心、安全な賃貸住宅をご提供しています。

賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の施行

賃貸不動産業界を取り巻く環境の変化についてご説明します。昨年6月15日に、不動産管理業に直接的に関係する「賃貸住宅管理業務等の適正化に関する法律」が施行されました。

この法律により、これまで任意だった賃貸住宅管理業の登録が義務化されました。今までは法的に誰もが営むことが可能だった賃貸不動産管理業ですが、国家資格者の配備や罰則といった法規制により、賃貸住宅管理業が確立したものとなりました。今後さらなる市場の活性化や、社会的地位、信用度の向上が大いに期待されます。

当社では、法施行前から準備を進めていたこともあり、国家資格者が60名在籍しています。賃貸不動産管理を本業とする当社にとって、法施行が今後の成長につながると前向きに捉えています。

不動産賃貸事業 事業内容

自社物件の賃貸を行う不動産賃貸事業についてです。不動産賃貸事業では表面利回り8パーセント以上の、高い利回りを期待できる物件を取得し、賃貸事業を行っています。自社物件は家賃収入だけでなく、新規進出エリアにおける管理戸数のボリューム確保、またオーナー向けサービスのテストの場としても活用しています。

セグメント売上高の主な内容は、スライド左側のグラフのとおり、概ね住居用が77パーセント、事業用が23パーセントと住居用の比率が高くなっています。2022年3月末時点での所有物件は4,679戸で、家賃収入の総額は年50億円程度です。

物件タイプの内訳は右側のグラフのとおり、概ね住居用が90パーセント、事業用が10パーセントです。住居用はシングルタイプのワンルームから1LDKが5割を超えています。

自社物件保有事例

スライドの写真は、当社が所有する物件の一例です。今期は愛知県と神奈川県の物件を購入しました。自社物件の購入時は、不動産管理業で培ったノウハウを最大限に活かし、利回りだけでなく、賃貸需要の高い物件を選定しています。

購入後は、社内の一級建築士と打ち合わせを行い、物件ごとに最適なリフォーム内容を決定します。家賃については適正価格に設定することで、当社ならではの高利回り、かつ高入居率を維持する物件を所有することができています。

なお、管理物件と収支を比較すると、自社物件の収益性は管理収入の約8倍から10倍となっており、管理会社としては重要な収入のファクターになっています。自社物件の取得は、管理会社が成功するための重要な手段になりますので、今後も自社物件2万戸を目指して増強を行い、より高い株主配当の原資に活用したいと考えています。

2022/3期 決算概要

2022年3月期決算概要をご説明します。数字についてはスライドに記載のとおりです。売上高は前期比5.5パーセント増の84億7,500万円、営業利益は前期比11.2パーセント増の20億1,500万円となっています。

経常利益は前期比13パーセント増の16億2,100万円、当期純利益は前年比59.1パーセント増の15億6,200万円です。当期は、土地及び建物の売却があったため、固定資産売却益を計上しています。

2022/3期 売上高・営業利益増減要因

ご覧のグラフは、左側が売上高の増減要因、右側が営業利益の増減要因を表したものです。売上高は、コロナ禍の影響で見送りとなっていた不動産オーナーの設備投資が積極的に行われた結果、不動産管理事業のリフォーム工事等の周辺事業が堅調に推移しました。また、昨年度に取得した自社物件が通年稼働してきたことで増収増益となっています。

セグメント別業績

セグメント別業績の推移です。スライド左側に青色の棒グラフで示した不動産管理事業は、管理収入が前年と同水準になったものの、リフォーム工事などの周辺事業が堅調に推移し、増収増益となっています。

右側に緑色のグラフで示した不動産賃貸事業については、自社物件の購入に伴う戸数増加により、売上・利益ともに堅調に推移しました。両セグメントとも増収増益となっています。

事業KPI:不動産管理事業

各セグメントのKPIについてご説明します。こちらのグラフは、不動産管理事業における管理受託戸数および入居率の推移を表しています。

管理戸数は、長年安定した増加を続けています。オーナーによる物件売却などで2021年3月期以降に減少したものの、足元は回復基調になっています。また、入居率は、コロナ禍による外国人留学生の減少の影響などが見られましたが、足元は概ねコロナ禍前の水準まで回復しています。

事業KPI:不動産賃貸事業

こちらのグラフは不動産賃貸事業の自社物件戸数および入居率の推移を表しています。自社物件は、基本的に売却を前提とした取得を行っておらず、着実に所有戸数を積み上げています。また、入居率においては長年高い水準を維持しており、2022年3月期は概ね98パーセント以上を維持しています。

BS

B/Sはスライドをご覧のとおりです。自己資本比率は公募増資および利益剰余金の増加により純資産が増加し、2022年3月期は16.4パーセントとなっています。

現状、当社は自社物件を全額借入により調達しているため、自己資本比率が低くなっていますが、すべての自社物件は長期保有を前提として物件ごとに十分な検討を行い、余力をもって返済できる金額で購入しています。今後も物件取得により借入金が増加する場合がありますが、優良資産を積み上げることで、事業拡大を推進していきます。

2023/3期 業績見通し

2023年3月期業績見通しについてご説明します。業績見通しの詳細はスライドに記載のとおりです。

売上高は前期比5.2パーセント増の89億1,900万円、営業利益は前期比1.1パーセント増の20億3,700万円、経常利益は前期比4.8パーセント増の16億9,800万円、当期純利益は前期比25.9パーセント減の11億5,800万円です。2022年3月期に計上した特別利益の影響を除くと、2021年3月期から売上高および各段階利益とも増加する見通しとなっています。

2023/3期 想定当期純利益増減要因

2023年3月期に想定される当期純利益の増減要因です。当期純利益は、前期における特別利益の影響により減少しますが、経常利益ベースでは増収増益の見通しです。

株主還元

株主還元です。当社は、株主に対する利益還元を経営の重要課題の1つに位置づけています。2022年3月期においては、通常配当80円に加え、上場記念配当25円をあわせた105円を配当としました。2023年3月期は、前期配当から記念配当分を抜いた80円を予想しています。

成長戦略

成長戦略についてご説明します。当社が掲げる成長戦略の大きなテーマは、こちらの2点です。

不動産管理事業では「既存及び新規エリアにおける管理受託戸数の増加」、不動産賃貸事業においては「自社物件の取得拡大」をいっそう進めていきます。それぞれの成長戦略について、詳しくご説明します。

既存及び新規エリアにおける管理受託戸数の増加

管理戸数拡大のアクションプランとして、既存オーナーへの新規物件取得提案、自社物件の取得を通じたエリア拡大、管理物件獲得手段の多様化を考えています。新たなビジネス提案を受ける機会が増えたため、従来の手法にくわえ、多様な管理獲得手段を用いつつ、管理戸数拡大を図ります。中長期的には管理戸数3万戸を目標としています。

自社物件の取得拡大

自社物件の取得については、2022年3月期に愛知県や神奈川県内で物件を取得するなど、着実に戸数を増やしています。取得方針は従来から変えることなく、原則として、表面利回り8パーセント以上が期待され、かつ大都市圏や都市部の賃貸需要が高いエリアの物件の取得を進めます。さらに新たな手法として、物件を保有している会社のM&Aを取り入れるなど、物件取得方法の多様化を検討しています。中長期的には自社物件2万戸を目指しています。

成長イメージ

当社が描く今後の成長イメージとしては、従来どおり不動産管理事業を主軸事業として展開しつつ、自社物件獲得を足がかりに大都市圏での事業拡大を目指します。中長期的には管理物件3万戸、自社物件2万戸、日本全国で15ヶ所の管理センター設置を目標とし、今後もさらなる成長を続けていきたいと考えています。

新たな取り組み

トピックとして、今後当社が注力するサービスの1つである「カリタス」をご紹介します。現在は各マンションの入居に際し、オーナーが1戸ごとに契約されているため、通常はその都度契約を結ぶ必要があります。賃貸契約では、印鑑証明や住民票、極端な場合は給与証明などの提出を求められることもあり、非常に複雑な工程が絡まっています。

以前はいろいろな入居者がいましたが、最近は入居者が賃貸マンションへ住むことに慣れており、家賃の支払いも滞ることがなく、トラブルもそれほど多くありません。居住ルールが浸透し、徐々に問題が減ってきています。

そのようなことから、複雑な契約を止め、当社の管理物件である約2万5,000室の1室に入居された方が転居する場合、当社のホームページに空き予定の物件があれば、「カリタス」の利用により現在の契約書で転居することができ、その都度契約しなくてもよくなります。

所在地や家賃などは変わりますが、現在の契約書で、転居先のエリアの空いている賃貸物件に住むことができます。これにより、契約を簡素化したいと考えています。

例を挙げてお話しすると、東京に住んでいる方が関西エリアへ転勤する時に、我々のホームページに大阪や京都の空き物件があれば、「カリタス」へアクセスし、空き物件からよいところを選択して、申し込むだけでそちらへ転居することができます。

みなさまもご承知のとおり、日本は自然災害が非常に多い国です。現在、日本全国15都市への管理センター設置を目標としていますが、震災などによる建物の損傷により住めなくなったとしても、他の地域に当社の空き物件があれば、契約書を持って転居でき、スムーズに人が動くことができます。

他にも、「暑いから夏場だけ北海道に行こう」という場合、北海道に家賃5万円くらいのワンルームがあれば、二重の支払いにはなりますが、元の住居も北海道の住居も借りられるというような、ある程度自由に転居できるシステムも考えています。今後も、入居者のみなさまに喜んでもらえるシステムを「カリタス」で提供していきたいと考えています。

以上でご説明を終わります。ご清聴ありがとうございました。

質疑応答:中期経営計画の策定と開示方針について

司会者:1つ目のご質問です。「中期経営計画についてですが、策定は計画されていますか?」とのことです。

長田:社内にて中期経営計画を策定しています。今後の開示も検討しています。

質疑応答:今後3年程度の設備投資における、固定資産金額と減価償却費のイメージについて

司会者:続いて、「中期経営計画に関連しますが、今後3年程度の設備投資について、特に固定資産金額と減価償却費のイメージを中心にご教授ください」というご質問です。

長田:計画上は年間300戸、金額では約30億円程度の投資を見込んでいます。私の気持ちとしては、金融機関が許せば上限なしで自社物件を購入したい思いでいます。ただ、売り物件の有無が非常に不安定ですので、当社の取得方針に該当する売り物件、いわゆる8パーセント以上の利回りで20年前後くらいの経過物件であれば、できれば上限なしで購入していきたいと考えています。償却については取得に応じて計画しています。

質疑応答:自己資本比率、財務レバレッジ比率やROEの目標について

司会者:次に、「自己資本比率もしくは財務レバレッジ比率やROEについての目標もご教授ください」とのことです。

長田:確かに、当社は自己資本比率は低いですが、運転資金の借入をする必要はなく、ほとんどが長期の借入で自社物件の購入によるものです。そのぶん借入の比率が多いため、自己資本比率が低くなっていますが、優良物件の購入も多いです。借りた時点が最大借入金額となるため、徐々に減っていきます。

現在、当社の自社物件で、金融機関に融資されていない無担保物件が35棟、36棟くらいあります。ローンは30年くらい、短いものでは25年で組んでいます。25年を過ぎれば自動的に全てが無担保物件となりますので、今ある90棟分の借入金はゼロになります。SDGsの観点から、今後どのように次の建物へ建て替えていくかを考えている状況です。

質疑応答:配当性向や自社株買いに対する認識について

司会者:続いてのご質問です。「配当性向や自社株買いに対するご認識をお知らせください」というものです。

長田:配当性向は、株主さまは我々に投資していただいていますので、多ければ多いほど喜んでいただけると思っています。今のところは100円くらいで、来年は80円という設定が出ていますが、その程度の金額に収まりたくないと思っています。

株についてはあまり放出していませんが、投資家さまから「もっと出せ」という話が出ています。まずは今の株主さまに多く分配できることを基準とし、徐々に株式を出していきたいと考えています。

質疑応答:管理料と競争力における他社との比較について

司会者:次のご質問になります。「管理事業を本業として高品質なサービスを提供しているとのことですが、他の管理会社に比べ、管理料も高いのでしょうか? また、高い場合、管理料が高くても競争力はあるのでしょうか?」とのことです。

長田:そもそも、管理業務を専門とする会社自体が少ないです。何をしているかといえば、仲介業務として手数料を稼ぐために管理物件を抱えており、管理業といいながら何もされていない状況です。

我々は管理費をあまり安くしたくありません。長い間事業に注力してきていますので、現場にいる方々の賃金が出て、維持できる最低限の目安もだいたいわかります。極端な言い方をすれば、管理費にご納得いただけないオーナーさまはお断りし、「安い会社に頼んでください」とお伝えします。

私は、金額は妥当だと考えています。我々と付き合いのあるオーナーにおいては、40年以上当社で管理させてもらえている方がいるところからも、それほど高いものではなく、むしろ価値あるものになっているのではないかと考えています。

質疑応答:不動産投資事業参入の構想について

司会者:次に「投資顧問免許を取得し、SPCを使い小口投資家を募集する不動産投資事業へ参入する構想はありますか? それとも興味はないでしょうか?」というご質問です。

長田:管理業は管理戸数が重要であり、それを増強していくことが、我々に与えられた当面の課題だと思っています。言い方はよくないかもしれませんが、管理を増やしていくためには手段を選ばない気持ちでいます。

ですから、M&Aもそうですが、私募REITその他の投資に関しても興味を持っています。世間一般的にも、小学生の頃から投資について勉強するらしいですし、投資用のマンションを企画し販売することにも取り組んでみたいです。

管理物件を増やすための手段は選ばず、できることは全部行っていきます。管理物件を増やしていくことが主な目的ですので、ご指摘の投資や建築、販売の件も全部行いながら、あらゆる手段を行っていきたいです。

そのことに関しては、当社に不動産売買専門の部署もありますので、そのような私募REITやM&Aの検討を行っています。また、「投資用マンションの建築も行ってください」と投げかけているため、一生懸命検討しています。

質疑応答:入居者向けイベント・キャンペーンの年間予算額について

司会者:「入居者向けイベント・キャンペーンの費用は年間でどのくらいになりますか? また、イベント・キャンペーンの予算はどのように設定していますか? 売り上げの何パーセントまでなど、上限はありますか?」というご質問です。

長田:純利益の10パーセント程度を目標にしたいと思っています。現在実施しているキャンペーンが年間1億円弱の予算のため、そのように想定されます。これは我々が利益を上げた部分で実施しており、例えばオーナーさまから会費を取ることは一切行っていません。

自社で企画し、自社の利益の一部を入居者のみなさまに還元しています。そのため、純利益の10パーセント程度を基準に、例えば20億円の利益が出れば、2億円の予算でサービスを行います。

質疑応答:法律の施行による管理業界への影響について

司会者:「新たに賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律が施行されたことにより、実際に管理業界で業者の淘汰は進んでいるのでしょうか?」というご質問です。

長田:この法律は昨年施行され、今年の6月15日までに賃貸住宅管理業の登録をしないとペナルティを受けます。まだ始まったばかりのため、それほど結果は出ていませんが、数年経てば結果が出ると思います。

賃貸住宅管理業務を行う方のほとんどが登録する必要があります。管理戸数が200戸未満の方は登録する必要がないのですが、200戸になれば登録しなければならなくなるため、200戸未満の方も登録されているようです。

質疑応答:2023年3月期業績見通しの粗利率悪化と販管費増加の要因について

司会者:「2023年3月期業績見通しで販管費の増加を見込んでいますが、それぞれの要因について教えてください」というご質問です。

長田:以前は年に1回ホテルを借り切り、オーナーのみなさまと一緒に食事をしながら、「我々はこのようなことを行っています」とお伝えするとともに、我々の会社に対する要望をおうかがいする会を開催していました。これは数千万円の費用がかかります。ここ数年開催していませんでしたが、本年度は開催を見込んだ計画を策定しています。

今年からはコロナ禍がだいぶ落ち着いてきたため、8月にそのような会を開催する予定です。そのため費用が多少増えていく見込みです。

質疑応答:2023年3月期業績見通しのセグメント別内訳について

司会者:「2023年3月期予想について、売上高・営業利益のセグメント別内訳を教えてください」というご質問です。

長田:不動産管理事業は、売上高が約37億3,000万円、営業利益が約5億3,000万円、経常利益が約5億9,000万円を想定しています。

不動産賃貸事業は、売上高が約51億8,000万円です。営業利益は約15億円、経常利益は約11億円を想定しています。このような目標は、堅実に最低限の数字を掲げています。僕の心の中では「これより上げたい」と思っていますが、それを話して実現しなかったら「嘘つき」と言われるため、計画上は高く設定していません。

質疑応答:2023年3月期の営業利益予想が前期比で横ばいの要因について

司会者:「2023年3月期の営業利益予想について、前期比でほぼ横ばいの見通しとなっていますが、この要因について教えてください」というご質問です。

長田:計画上では、建物は何年間に一度修繕を行わないといけないため、特にビルの場合は1ヶ所行うと、高いところでは3,000万円以上の費用がかかってきます。当社の自社物件担当者が保守費用を少し多めに見ているため、その分営業利益が低くなっています。

ただし、やり方にもよるため、いろいろと指導していますが、今のところ予定としては「このようなかたちで修繕していきたい」となっています。その分が加算され、営業利益を少し押し下げていると考えています。

質疑応答:2022年3月期のコロナ禍による影響と足元の状況について

司会者:「2022年3月期にコロナ禍がどのように影響したのかを教えてください。また、4月以降の足元の状況も教えてください」というご質問です。

長田:賃貸に関しては、あまり影響していません。むしろ周辺部のファミリータイプのマンションの入居率が上がっています。京都の場合は特に学生が多いため、留学生が入ってこなかったのは厳しかったです。

しかしながら、ご承知のとおり、政府は今月から2万人の留学生を入れています。東南アジアの方が主になりますが、すでに150名くらいの留学生が当社の管理物件を使用しています。今月からは上海の大学からの留学生が来日することもあり、さらに300名から400名くらいは今月から来月にかけて入ってきます。そのため入居率も徐々に改善し、よい方向に向かっています。

今年はコロナ禍の状況もかなり落ち着いてきており、感染者数も減ってきています。この調子で行けばだいたい予定どおり入居率も上がり、来年はよい決算ができると考えています。

ただ、京都は学生がたくさん来るため、空室がだんだんなくなってきました。先日、新聞に「入居者募集」でなく、「空室募集」の広告を出しました。それによって京都市北部のオーナーからはけっこう申し込みがありました。

そこに留学生を入居させていくことになり、当社も外国語を話せる外国人スタッフのアルバイトを3名ほど増やしました。管理会社として入居者にご不便のないかたちをとっていきたいと思います。これからは順調に行けると考えています。

一部、話が長くなりますが、当社もホテル事業を行っていました。自社物件ですが、借地に建物を建てたため、毎月150万円くらい地代を払っていました。赤字になるため昨年減損処理し、今解体に入っています。

そのため、これからは本業に準じたことを主力的に行っていきたいと考えています。ただ、観光事業はこれからどんどん拓けてくると思います。それについては、今使っている賃貸マンションを活用し、一部宿泊も行えるようなかたちで進めていければと考えています。

新たなホテルを建てたりということは、基本的には本業以外のため、今のところ行う気はありません。今はそのようなかたちで順序よく行っているため、賃貸に関してはみなさまが心配されることはあまりないと思っています。

質疑応答:他のエリアへの進出方法について

司会者:「今後、他のエリアにはどのような手法で進出されますか?」というご質問です。

長田:ここ3年来、関西から出たいと思っています。どのようにすればさらに他のエリアに管理センターを設立できるかを考えていました。

おかげさまで当社の取引している金融機関から「他のエリアも行ってください。融資OKです」となり、愛知県の物件を取得できました。内容は先ほどご説明しましたが、今25棟くらい、800室弱を当社が自社物件として運営しており、利益も出ています。当社から名古屋は近く、新幹線なら25分くらいで行けます。天白地域を中心に、名古屋の管理物件を増やしています。

家賃を扱いますので、オーナーにとっては誰でも彼でも管理してもらうということにはなりません。管理されているのは地元の業者の方が多いのですが、当社は自社物件をその地域に25棟くらい持っているため、信用も生まれます。

今後は「それだけ行っているなら、うちの物件も管理してほしい」などの話も出てくると思います。今はオーナーの管理物件が120室くらい、先月は70室くらい増加するなど、徐々に管理物件が増えていますので、この方法は非常に成功していると思います。

自社物件を持つことにより、ランニングコストが十分引けます。他のエリアも、まず自社物件の目標を10棟として、人を3人くらい入れて維持できる状況を見ながら、徐々に当社の管理を増やしていきたいと思います。

おかげさまで、我々は賃貸マンションの管理を長く行っているため、スタッフはけっこう揃っています。家賃は京都の事務センターで全部集約し、金融機関と相談しながら進めているため、お金に関してはきちんとできています。

普段の入居者に対するサービスが非常に重要です。入居者からのリクエストを受けたら、できれば30分以内、時間がかかっても1時間以内で現場に到着できるところに管理センターを置きたいと思います。

当社が自社物件を持ったら、よその業者に任せることはまったく考えていません。すべて自分のところで管理を行います。それがオーナーさまが委託される時の安心になります。

これからも、ある一定の地域に自社物件を10棟以上購入し、維持しながら、徐々によければ管理物件を我々の会社に委託していただく方向で、ここ数年は進めたいです。これが他の地域へ進出する最良の方法だと考えています。

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