在宅BGMの「音飛び」は電磁波が原因? ノイズを極限まで抑える技術者たちの挑戦

2020年9月27日 17:37

在宅勤務の時間は、音楽を聴きながら仕事をしているという人も多いだろう。スマホとスピーカーをBluetoothなどで接続し、お気に入りのBGMを流しながらPCのキーボードを叩けば、単調なルーティンワークも捗るというものだ。ところが時々、音飛びがする。原因を探ってみると、どうやら家族がキッチンで電子レンジを使うたびに、音飛びが起こっている様子。そんな経験はないだろうか。

 これは目には見えない「電磁波」が誤作動を引き起こしているためだ。

 今の世の中、電磁波は身の回りのあらゆるものから発生している。キッチンだけでも、電子レンジのほか、冷蔵庫やIHクッキングヒーター、天井を見上げれば照明の蛍光灯からも電磁波が出ている。リビングでは、テレビやテレビゲーム、ネット利用の肝となるWi-Fiのルーターからも強い電磁波が発生しているのだ。屋外に出ても、送電線や鉄塔など、電磁波の発生源は後を絶たない。

 強い電磁波はノイズとなって、電子機器に干渉する。それが時に、アプリケーションの誤動作を引き起こしてしまうのだ。スピーカーの音飛び程度ならまだしも、近い将来、自動運転自動車の普及や商用などでのドローンの活用が進んだ場合、大きな事故にもつながりかねない。また、家庭や工場などの産業施設においてもIoT化が進んでおり、小さな電子部品一つの誤動作が不足の事態を招く恐れもある。しかも、高度な制御を行うためにアプリケーションの電子化、高密度化は加速する一方で、世の中のノイズ環境はますます悪化していくだろう。最先端の電子機器類を安心、安全に利用するためには、各メーカーによる、より優れた電磁波対策が求められている。

 電磁波対策としては、大きく2つの方法がある。

 一つは、他の電子機器類に影響を与えないようにノイズを抑える「EMI(エミッション)」対策。そしてもう一つは、万が一他の電子機器から発せられる電磁波によって妨害を受けたとしても、正常に動作するようにノイズの影響を抑える「EMS(イミュニティ)」対策だ。

 部品メーカーが力を入れているのはEMI対策だ。とくに自動車など、限られたスペースの中に異常検知システムや微小信号を扱う各種センサなど、多くの電子部品がひしめいているようなものの場合、一つ一つの部品のノイズ耐量を高めるとともに、その部品自体が発生するノイズを極限まで抑える必要がある。

 例えば、電子部品大手のローム株式会社〈6963〉は、圧倒的なノイズ耐量を誇る「EMARMOURシリーズのオペアンプを開発している。オペアンプという部品は、微弱な電気信号を、人間の頭脳にあたるマイコンで認識できるレベルの大きさに増幅する部品だが、通常のオペアンプは信号を増幅する際に、電磁波等のノイズも増幅してしまうため、EMI対策が必要となる。ロームの「EMARMER」シリーズのオペアンプは、信号のみを増幅し、ノイズは増幅しないため、ノイズ設計の負担が大幅に軽減されるとともに、誤作動を起こしにくい安心な製品の開発が可能になるという。

 こういった最前線のテクノロジーは電子機器の奥深くに隠れて、我々一般消費者の目に触れる機械はほとんどない。もちろん、目にしたところで部品を見ただけで性能の違いなんて分からないだろう。しかし、目には見えなくても、開発に携わる技術者たちのたゆまぬ努力と研鑽によって、電子機器はより快適に、より安心、安全に利用できる技術へと日々進化し続けているのだ。近い将来にはきっと、電子レンジをつけても音飛びがしなくなったことに気付く日がくるだろう。その時には日本の技術者たちに静かな称賛をおくりたい。(編集担当:藤原伊織)

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