スカパー、通期は減収減益 今後はメディアにとどまらず宇宙事業に注力し独自分野ビジネスを開拓

2020年7月15日 19:05

2020年3月期決算説明会

米倉英一氏:米倉です。本日はお忙しい中、スカパーJSATホールディングスの決算説明会にご参加いただきまして、ありがとうございます。

はじめに、新型コロナウイルスに罹患された方々に心よりお見舞いします。そして、医療関係者の方々、ライフラインの維持に携わっているみなさまに最大限の敬意と感謝を表します。また、今回、従業員や監査業務従事者の安全確保に十分に配慮しながら決算、監査手続きを進めたため、会計監査を含む決算確定に遅れが生じ、決算発表が当初の予定より遅れたことをお詫びします。

連結損益概要

それでは、2019年度通期決算についてご説明します。昨日発表しました、2019年度通期連結決算の概要です。4ページをご覧ください。営業収益は245億円減の1,395億円、当期純利益は23億円増の120億円となりました。減収の主な要因は、従来よりご説明している防衛省向け衛星売却の剥落によるものですが、親会社株主に帰属する当期純利益は、連結子会社間の吸収合併に伴う税金費用減少等により増益となりました。

なお、新型コロナウイルスによる2019年度決算への影響は、メディア事業、宇宙事業とも軽微でした。2020年度決算への影響についてはのちほどご説明します。

メディア事業の業績概況:前年同期比

5ページのメディア事業の業績概況は、前年同期比で減収増益となりました。営業収益は約39億円減少し、976億円となりました。累計加入件数の減少に伴い視聴料収入が39億円、基本料収入が6億円、業務手数料収入が4億円減少しています。一方で、光回線によるテレビ再送信サービスの収入が14億円増加しました。

営業費用は約44億円減少し、946億円となりました。視聴料収入の減収に伴い、番組供給料が20億円減少、光コラボルート等における販売促進や、キャンペーン費用が22億円減少しています。セグメント利益は約27億円増の47億円となりました。営業費用の減少と、連結子会社の吸収合併に伴う税金費用が22億円減少したことによるものです。

宇宙事業の業績概況:前年同期比

続いて6ページの宇宙事業の業績概況に関してご説明します。前年同期比では減収減益となりました。営業収益は、防衛省向け衛星売却の剥落により約199億円減少の535億円となりました。2019年1月にサービスを開始した「Horizons 3e」により、北米子会社の営業収益が12億円増加し、当社連結子会社である衛星ネットワークの営業収益が10億円増加しています。営業費用は約193億円減少しました。「Horizons 3e」がサービスを開始したことに伴い、北米子会社の営業費用が19億円増加しました。一方で、防衛省衛星引き渡しの事業原価等が213億円減少しています。

また、当社連結子会社である株式会社がエンルートにおいて、公的資金の一部を不適切に受給していたことが判明したため、その返還金等約3億円を2019年度の損失として計上しています。本件により、関係各位に多大なるご迷惑をおかけしましたことを真摯に反省し、深くお詫びします。これらにより、セグメント利益は前年比で2億円減の80億円となりました。

新型コロナウイルス対応

続いて7ページをご覧ください。新型コロナウイルス感染拡大に伴い、通信、放送という公共性の高いサービスを担う企業グループとして、BCPに基づき、運用体制を整え、安定したサービス提供を継続しました。また、お客さまへの取り組みとして、アニメ、映画チャンネルなどの無料放送、プロ野球練習試合の編成など、自宅待機応援企画を実施しました。カスタマーセンターでは、視聴料等の支払い期限の延長、解約申し込みの受付期限の延長などを行ないました。

2020年度 連結業績予想

続きまして、2020年度連結業績予想についてご説明します。9ページをご覧ください。2020の連結業績は「JCSAT-17」の提供開始等により、営業収益は前期比で増加するものの、両事業で新型コロナウイルスの影響を受けたことから減益となる見込みです。営業収益は0.3パーセント増の1,400億円、営業利益は21.4パーセント減の120億円、当期純利益については33.5パーセント減の80億円の見込みです。EBITDAは8.5パーセントの減、380億円の予想です。

2020年度 セグメント別業績予想

続いて、事業セグメント別の業績予想についてご説明します。各項目の上段が2020年度の業績予想、下のカッコ内が2019年度実績との差額を示した数字です。業績予想の考え方については次のページでご説明しますが、メディア事業は減収減益、宇宙事業は増収減益となる見込みです。

2020年度連結業績予想の要点 及び 将来の見通し

11ページで2020年度、連結業績予想の要点及び将来の見通しについてご説明します。2019年度は、連結子会社間の吸収合併に伴う税金費用減少という特集要因があったため、当期純利益は120億円となりました。2020年度は、新型コロナウイルスの影響により、宇宙事業の航空機向けの需要減少が大幅に見込まれること、メディア事業のスポーツ開幕遅延、音楽ライブ中止に伴う減収などが要因となり、当期純利益は80億円を見込んでいます。

一過性の要因を除いた現状の実力値を100億円とし、2020年度は一時的に80億円に減益となるものの、2021年度以降は宇宙事業における新規衛星3機の利用拡大による基礎収益力の向上や、メディア事業における各種施策の「選択と集中」、FTTH再送信サービスの拡大等により2019年度以上の当期純利益を目指していきます。

新型コロナウイルスの影響(メディア事業)

続いて、新型コロナウイルスによるメディア事業への影響についてご説明します。2020年度は、例年、第1四半期に加入が期待できる各種スポーツの開幕遅延、音楽ライブの中止が重なりました。これにより、この期間の視聴料収入が減少しますが、6月19日に開幕したプロ野球などで挽回を図りたいと考えています。現時点では、プロ野球セットのお客さまは、昨年の開幕月に近い水準まで戻ってきており、順調に立ち上がっています。また、開幕遅延に伴い、2019年度に予定だったプロモーション等が2020年度に実行されることにより、本年度に費用発生が見込まれます。

メディア事業の主要指標

13ページをご覧ください。加入件数の実績と目標です。2020年度は、新規加入については「スカパー!」サービスを中心に64万件を目指しますが、純増数については、新型コロナウイルスの影響により、前年を下回る8万2,000件の純減と想定しています。

メディア事業トピックス

続いて、メディア事業における直近のトピックスをご紹介します。新型コロナウイルス感染拡大に伴い、在宅時間が増加したことから、「スカパー!イエナカ応援キャンペーン」として、基本プラン最大2ヶ月無料のキャンペーンを実施しました。これにより、5月度の基本プラン新規契約者数は、前年比64.4パーセント増と新たなお客さまの獲得につながりました。

また、「スカパー!」では、スポーツコンテンツを徹底放送していきます。待ちに待ったプロ野球は6月19日に開催しました。今年は当面無観客で試合が開催されることになり、ファンにとっても選手にとっても今までとは違う開幕になりましたが、2020年シーズンも「セ・パ12球団」の公式戦を放送配信で徹底中継します。他にもPGAツアーやブンデスリーガも再開しており、F1グランプリも7月3日に開幕予定です。

新型コロナウイルスの影響(宇宙事業)

続いて15ページで、宇宙事業における新型コロナウイルスの影響についてご説明します。運輸業界向けの影響が大きく、とくに航空機の減便に伴い、機内インターネット回線の需要が大きく減少しています。船舶向けの一部需要減少もあり、グローバル・モバイル分野は前年度比で減収となる見込みです。一方、国内の観光庁や、法人向けのサービス需要は引き続き堅調であり、「JCSAT-17」の提供開始等に伴い、営業収益は全体として昨年度比増加の見込みです。

宇宙事業トピックス

16ページも宇宙事業のトピックスについてご説明します。以前よりお伝えしていた、「Horizon 3e」「JCSAT-1C」「JCSAT-17」の新規衛星3機はすべてのサービス提供が開始しました。「JCSAT-1C」は、2020年1月からサービスを開始しており、「Horizon 3e」に続く当社2機目のHTSとなります。また、2020年2月19日に無事「JCSAT-17」の打ち上げが成功し、4月よりサービス提供が開始しました。今後NTTドコモ社にて長期的にご利用いただけます。

新規領域への取り組み

次に、17ページの宇宙事業の新規領域の取り組みもご紹介します。左側の画像はコロナ前後の武漢周辺の衛星画像で、病院施設が新たに建設されることがはっきりとわかります。このように、宇宙からの観測技術は日々進歩しており、より精度の高い地理空間データを収集することが可能となっています。

スカパーJSATでは、これらの宇宙から取得したデータと各分野向けにカスタマイズしたAI技術とを組み合わせ、お客さまに便利なかたちに加工してお届けする情報サービス、「Spatio-i」も提供を開始しています。

本サービスの技術は、災害分野をはじめ、農業、物流管理等、さまざまな分野での活用が可能です。宇宙や情報通信とは異なる分野の企業とも連携し、さらなるデータの有効活用を検討する取り組みも進めています。宇宙事業の新たな事業の柱の1つとして、このビジネスインテリジェンス分野を成長させるべく、今後も活動していきます。

また、世界初となる宇宙ごみをレーザーで除去する衛星の設計開発に着手していきます。宇宙空間を利用しているのが当社のビジネスであり、さらなる宇宙事業の拡大をしていく中で将来的にこのような脅威となる宇宙ごみの問題は避けて通れない、海洋汚染と同じ環境問題の1つです。ビジネスとして、また、宇宙のSDGsとして2026年のサービス提供を目指しています。

衛星フリート図

18ページの衛星フリート図をご覧ください。

現在、今年2月に打ち上げが成功した「JCSAT-17」が加わり、「N-STAR c」が今年5月に運用を終了したため、19機体系となっています。

財務的安定性

19ページをご覧ください。財務面については、当社では安定した顧客基盤により健全性を維持しています。現預金期末残高は400億円以上を維持しており、十分な運転資金を確保しています。取引銀行とコミットメントライン100億円も締結済みです。

フリーキャッシュフローは、2019年度に新規3衛星と東京メディアセンターの設備投資が終了するためプラスに転換し、2020年度はさらに増加する見込みです。自己資本比率も継続して50パーセント以上を維持しています。

2020年度配当方針

続いて、20ページをご覧ください。先ほどご説明した財務的健全性を背景に、基礎収益力の向上を図りつつ、2020年度は2019年度と同様に1株あたり年間18円の配当を実施予定です。

プラン2020+

続いて「スカパーJSATグループプラン2020+(プラス)」についてご説明します。22ページをご覧ください。「変わる」をキーワードに、「人」「事業」「会社」の3つの軸で変革していきます。まず、「人」。多様な人材の登用、従業員満足度の向上を追求したいと考えています。次に「事業」。選択と集中と採算性の向上、そして従来のやり方に囚われない新たなビジネスモデルとグローバル展開を促進します。最後に「会社」。スカパーJSATという会社のブランドを向上させること、そしてコーポレートガバナンスを強化することです。これらについて詳しくご説明します。

REPOWERING(働き方の大変革)

まずは、「人」「働き方の大変革」です。コロナウイルスによる環境変化を踏まえた「働き方の大変革」を実施します。「大変革」とは、社員のモチベーションや業務生産性、創造性を高め、業績アップに貢献する「攻めの視点」。そして、感染リスクを踏まえ、在宅環境下でも支障なく事業継続し、社員はもとよりその家族の健康にも留意した働き方を目指す「守りの視点」の両視点から実施します。

そのために、全社横断的に業務の棚卸しを行ない見える化を進め、職種とライフスタイルに合わせて自由な時間で好きな場所で働ける会社を目指していきます。

REBUILDING(メディア事業)①

24ページをご覧ください。ここから、「メディア事業の変革」についてご説明します。メディア事業部門は、これまで有料多チャンネル放送プラットフォームとしてさまざまな施策、事業に取り組んできました。とくに直近5年においては、配信サービスの台頭を背景に苦しい環境下での戦いが強いられてきたことも事実です。さまざまな策を講じてきましたが、加入者数、視聴料収入の減少トレンドは変わらず、抜本的な改善が必要な局面を迎えていると認識しています。

メディア事業部門が変わるために、成果が出ているものは注力していく一方で、成果創出に至らないものは捨てて生まれ変わる必要があります。そのために「選択と集中」見極めが必要であり、そしてそれは、施策、事業だけではなく、人員配置、コストの掛け方に関しても今一度見直しを実施していきます。

REBUILDING(メディア事業)②

続いて、25ページをご覧ください。1月度の組織再編で、メディア事業部門一丸となり進めているファン・マーケティングです。ファン・マーケティングというのは、コンテンツ一本やりではなく、「+α(プラスアルファ)」の価値をお客さまに提供するというものです。

例えば、プロ野球では、従来の全試合の生中継、そして、そのプロモーションのみならず、プロ野球ファンに寄り添う施策、サービスを改めて考え、追求し、お客さまへ届けていきます。同じプロ野球ファンでも「スカパー!で見る野球は一味違う」をファンの視点から作り出していきます。

そして、2020年、2021年ジーズンから5シーズンの独占放送権、配信権獲得を含むパートナーシップ契約を締結したブンデスリーガです。本件はメディア事業部門一部署の取り組みとしてだけではなく、全社案件としてプロジェクトを組成し徹底的に取り組みます。こちらも従来の生中継、配信だけではなく、ブンデスリーガをリーグと共に一緒に育てていくという精神でリーグの一員となって、日本国内での認知、視聴拡大に取り組み、ファン目線でさまざまな施策に取り組んでいきます。

REBUILDING(宇宙事業)

26ページをご覧ください。宇宙事業は、これまで安定的に利益を創出し、衛星の保有機数、事業規模ともにアジアにおけるリーディングカンパニーですが、将来にわたってそのポジションが約束されているわけではありません。世の中で盛り上がりつつあるビジネスの活況において、当社従来の衛星インフラサービスにとどまらない、新たな領域への進出が必要だと考えています。そのために、当社のリソースだけでは足りないようであれば、積極的に他業種のパートナーを見つけ、連携し、革新的な宇宙ビジネスを創出することが必要だと考えています。

REBUILDING

27ページをご覧ください。「これからのスカパーJSATグループ」と題しています。当社は、メディア事業、宇宙事業、それぞれを併せ持つユニークな存在です。今後はそれぞれの良さを掛け合わせた独自性のある当社にしかできないような新しいビジネスの開拓を加速していきたいと考えています。

REBRANDING①

28ページをご覧ください。企業ブランディングについてです。これまで「スカパーはスカパー」「JSATはJSAT」というと別々のブランドとして捉えられやすいという面があります。しかしこれからは「スカパーJSAT」という会社のブランドを掲げ、当社における理解、共感を高めていきたいと考えています。

世の中の宇宙への関心が高まっていることを背景に、当社事業のこれまでの豊富な実績、ユニークさを世の中に強力に発信することで、企業としてのブランド価値を高めて企業価値を高めていきたいと考えています。

REBRANDING②

最後に、こちらは来月の株主総会での承認が前提ですが、この度、コーポレート・ガバナンスの強化の一環として、当社及びスカパーJSATの取締役、執行役員等を対象に譲渡制限付株主報酬制度を導入することにしました。

Space for your Smile

こうした仕組みを組み込んで、今まで以上に株主さまの視点、価値観をしっかりと経営の執行にも取り入れ、当社もグループミッションである「Space for your Smile」を掲げるスカパーJSATグループのブランドをさらに市場に浸透させ、中長期的な企業価値の創造に邁進していきます。以上で、私からの説明を終了します。ご清聴ありがとうございました。

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