乃木坂46 西野七瀬の『幸せな卒業』に見る乃木坂らしさ

2019年1月1日 14:59

 平成最後のNHKの紅白歌合戦、乃木坂46がステージにあがり、『帰り道は遠回りしたくなる』のイントロに合わせてダンスを始めたときに、それは起きた。

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 2018年の『紅白裏トークチャンネル』は、これまでのバナナマンから、サンドイッチマンと渡辺直美に変わっていたのだが、乃木坂が始まった途端、公式お兄ちゃんであるバナナマンが登場し、応援を始めたのだ。

 登場時に、この紅白をもって卒業する(ただし卒業ライブは後日)西野七瀬の自宅に行き、両親からのコメントを貰ってくるという形で写真だけの登場はしていたのだが、まさかの乱入。

「(裏トークは)卒業したんだけど乃木坂のところだけは」「いろいろ卒業するメンバーがいるんだけど、今日は西野が乃木坂としてテレビに出るのは最後ということで……」と経緯を説明しつつ、大きな声で声援を送り、歌い終わって全員が集まったところで「お兄ちゃんだよーー!」と絶叫。

 その存在に気付いた乃木坂のメンバーは、西野が呆然とした表情を一瞬浮かべた次の瞬間、喜びを爆発させるかのような笑顔で「お兄ちゃん」と答え、白石は顔をくしゃくしゃにして喜び、齋藤飛鳥は顔を手で覆い涙を隠すかのように肩を震わせていた。

 総合司会の内村光良も「今、彼ら(バナナマン)も凄く忙しいはずだよ」と笑顔でコメントしながらサプライズを歓迎し、ネットでは乃木坂ファンが「さすが公式兄」「泣ける。バナナマン最高だ」という内容のコメントで溢れた。

 それにしても、西野七瀬の強さ、成長のあとを見せつけられる年末であった。

 前日のレコード大賞でも、受賞の瞬間、感激のあまり泣きながらしがみ付く白石麻衣を抱きかかえ、笑顔で手を握りながらステージへ向かう姿があり、かつて「(白石は)綺麗すぎて(くっつきに)行くことができない」と涙を流した、人見知りでおとなしいか弱い女の子のイメージはすでになく、堂々としたアイドルスターの風格が彼女からはあふれ出していた。

 西野七瀬は、紛れもなく運営から推されて来たメンバーである。

 「バラエティは苦手」と、何度も涙を流している姿は、多くのファンの「守ってあげたい」という庇護欲のようなものを喚起させ、常に自信がなく謙虚なコメントは、乃木坂の中でも独特の雰囲気を醸し出すこともあって、初期の「お嬢様らしさ」「品のよさ」というイメージ作りに大きく貢献してきた。

 そんな彼女に、ソロ曲を与え、番組でMCをやらせ、映画の主演に抜擢し、成長を促し、その成長過程を見せることが、乃木坂のプロデュースの大きな柱でもあった。

 だが、以前ここでも触れたように、彼女はコミュ障でもなければ、根暗でもない。警戒心が人一倍強いというだけで、その警戒心を突破すれば悪戯好きで、積極的で、さらには負けず嫌いで職人肌な一面も見えてくる。

 初のセンター曲『気づいたら片想い』のお披露目をトレーラーでやったときは、ダンスの足場が狭いと愚痴りながらも、悪条件でどこまでベターなパフォーマンスができるかということを運営と話し合う姿があったし、能條愛未や高山一美、秋元真夏といった仲のいい相手には、むしろドSな対応で反応を楽しむような一面も数多く知られている。

 7年かけて、「自分を出す」ということに成功し、ささやかな自信をつけて、次の道を見つけて進んでいくという彼女の卒業劇は、魅力的な素材と、それを磨き、魅せるようになるための努力と、その様子を後輩やファンに伝えていく背中という、グループアイドルとしての王道の姿でもあるのではないだろうか?

 紅白での笑顔は、まさになすべきことをやりきったアスリートのような笑顔であったが、それは同時に、若月佑美や能條愛未、さらには生駒里奈や深川麻衣にも共通するものだった。

 リスク少なく、要領よく、世渡りすることが正しいとされつつあるこの時代、不器用に、汗と涙にまみれながら夢を追いかけ、掴もうとする姿は、どうしても応援したくなるものだ。

 バナナマンの乱入、内村のフォロー、レコ大でのISSAの暖かい拍手は、そんな「乃木坂らしさ」への感動も含まれているのではないかと感じた。果たして今年はどんな「らしさ」が見られるのだろうか?(記事:潜水亭沈没・記事一覧を見る

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