香港ファッションを動かすデザイナーたち(2) ハリソン・ウォン

2017年8月9日 11:27

 香港では近年、地元ファッションデザイナーたちの活動を支援するプロジェクトが続々と立ち上がっている。“ファッション都市・香港”を掲げた国際トレードショー「第1回センターステージ」が2016年9月にスタート。また、工場地帯と知られる九龍湾には、若手デザイナーの育成・創業支援を行うためのインキュベーション施設「DIP(Design Incubation Programme)」を今年4月にオープンした。こうした動きの背景にあるのが、香港政府の後押し。香港政府は2016/17年度から3カ年で5億HKドルをファッション産業に投資することを発表。クリエーション振興を支えることによって、ファッション産業全体の経済活性化につなげる狙いがある。

 この取り組みに先駆け2015年に始動したのが、「ファッション ホンコン(Fashion Hong Kong)」だ。デザイナーたちのグローバルな活躍を目指し、香港貿易発展局が海外でのプロモーションやイベントを実施するプラットフォームで、香港の気鋭デザイナーたちが、台湾やNY、コペンハーゲンなどのファッション都市でコレクションを披露。日本でもジャパンファッションウィーク東京の公式スケジュールとして、2015年から毎年ランウェイショーやショールーム、ポップアップショップなどを開いている。

 豊富なチャンスを追い風に、香港のクリエーションはいま、どのような広がりを見せているのか。今年10月に東京で開かれる「ファッション ホンコン」への参加を予定している4組のデザイナーのもとを訪ねた。

ハリソン・ウォン「ハリソンウォン(HARRISONWONG)」

 「ブラックは、ブランドを象徴する色。コレクションには欠かせない色なんだ」と話すハリソン・ウォンは、ファッション業界で20年近くのキャリアを持つベテランだ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションで修士号を取得したのち、欧州・アジアの各地でコレクションを発表。香港や中国のファッション企業でデザインディレクターを歴任し、2014年、満を辞して、自身の名前を冠した「ハリソンウォン」をスタートした。

「HARRISONWONG」メンズ2017春夏コレクション

 2017春夏は、ブランドの代名詞とも言えるブラックを軸に、バウハウス様式にインスパイアされたジオメトリックなプリント柄やパターンを採用。スポーツの素材やディテールで清涼感のあるスタイルを見せた。「モードでエッジを効かせているけれど、どこかにエレガントな要素を残している」とブランドのコンセプトについて説明する。

 現在、セントラル(中環)の商業施設PMQにメンズウエアの店舗を持つほか、チムサーチョイ(尖沙咀)のK11では、メンズ・ウィメンズの両ラインが揃う店舗と、ディフュージョンライン「ソン オブ ア キング(SON OF A KING)」の単独ショップをそれぞれ運営。今月8月には、同エリアにある香港最大級のショッピング施設ハーバー・シティにも新店舗をオープンした(月末にグランドオープン)。

「PMQ」に入るメンズの単独ショップ。内装もブラックで統一。

 セレブリティーが各メディアで着用することも多く、香港発ブランドとしての地位を着実に積み上げている。最近では、K11を中心に中国本土の男性客による購買が伸びており、「これからメンズウエアの需要がメンズが伸びる市場。可能性を感じている」という。

 東京では、ファッションホンコンのイベントを通じて販売を行ったことはあるが、ランウェイショーを披露するのは初めて。「アートが好きなので、最新コレクションもアートにインスピレーションを得たものになると思う。成熟した東京のマーケットで、何ができるか試してみたい。さまざまな方と出会えるのを楽しみにしている」という。

◆デザイナーと香港を知るためのQ&A

―仲のいいデザイナーやクリエイターは?  ファッションデザイナーとして、仲良くしているクリエイターは多い。日頃から一緒に仕事をしているフォトグラファーから、ファッションショーの成功には欠かせないディレクターや演出家までさまざま。デザインをすることは孤独な作業だが、ファッションを世に送り出すというのは、クリエイターたちを1つの方向にまとめあげなければならない、とてもコラボレーティブな作業だ。

―デザインのインスピレーションになるものは?  アートの世界で今何が起きているかを知るため、ギャラリーや美術館によく行く。ほかのアーティストやアートのムーブメントからインスピレーションを得ることもある。私のコレクションが、ビジュアルアートの影響を受けていることがわかると思う。

―今最もおすすめのエリアやお店は?  商業施設の「PMQ」。(既婚者の警察官向けの宿舎を)復元し、再利用したヘリテージの1つだが、地元香港のデザイナーたちのお店をあらゆるジャンルから幅広くセレクトしている。エキシビジョンやイベントも常に開催しているから、おすすめだ。

―1人で過ごすのにおすすめの場所は?  香港といえば、ショッピングやグルメで有名だが、1人旅にも最適な街だ。ショッピング漬けというわけでなければ、銅鑼湾(コーズウェイベイ)から上環(ションワン)まで、ぜひ香港トラム(通称:Ding Ding)に乗ってみてほしい。お金をかけずに普通とは違う香港島を楽しみたいなら、賢い選択だと思う。

―友人と過ごすのにおすすめの場所は?  セントラルからソーホーの間を通るミッドレベル・エスカレーター。エスカレーター沿いのストリートには、大型のショッピングモールから小さなアートギャラリー、ブティックまでが軒を連ねている。途中のランカイフォン辺りで降りれば、ナイトライフやクラビングを楽しめる。

―香港の最も美味しいローカルフードは?お店の名前は?  私のベスト・ローカル・フードは、雲呑(ワンタン)麺。香港以外で美味しい雲呑麺は見つからないくらい!雲呑麺が食べられるお店はたくさんあるけど、どこも美味しいし値段も高くない。「Mak's Noodle」が、数あるお気に入りの中でも好きなお店の1つ。

―香港の美しい景色は?  ザ・ピークから見る景色は最高だ。世界で一番の夜景が楽しめる。

―香港に住んでいるメリット&デメリットは?  香港は、ショッピングをするにも、食事をするにも、移動するにも、そして、ビジネスをする場所としても、便利な場所。だけど、生活していくには、とても高くつく。特に、家賃相場は世界で一番の高さだ。

■「HARRISONWONG」  http://www.harrisonwong.com/

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