停滞する住宅市場の中、プレオープンで即売した家の秘密

2017年6月25日 18:35

 不動産経済研究所が発表した、2017年5月度の首都圏マンション・建売市場動向によると、首都圏のマンションの5 月の新規発売戸数は 2603戸で、対前年同月比 13.3%減、対前月比5.0%減。建売では、新規発売戸数は274戸で、対前年同月比31.0%減、対前月比1.4%減となっている。消費増税の先送りで、駆け込み需要などもなく、今年度の住宅市場は比較的穏やかな状況といわれてはいるものの、実際は厳しい状況にあるようだ。しかし、そんな中でも、売れる家は売れている。中には、発売前のプレオープンの時点で完売してしまう団地などもある。「売れる物件」と「売れない物件」。その差は一体、どこにあるのだろうか。

 戸建でもマンションでも、当然、気になるのは価格の問題だ。新築ならば、安くても数千万単位の買い物。通常のサラリーマン家庭なら数十年のローンを組むのが普通だから、たとえ10万円でも安い方が良いのは当然だ。しかしながら、住宅購入が難しいのは、ただ安ければいいというものではないというところだ。「失敗した」と後で後悔したところで、そうそう買い替えられるものではない。たかが10万円をケチったために、数十年間、自分の家に不満を持ち続ける羽目にでもなってしまったら、目も当てられない。それならばむしろ、10万円高くても、その価値を長年にわたって享受できる方が結果的にはおトクといえるだろう。

 そして現在、家を買い求める人の多くは、値段だけを重視しない、「家の価値」に着目する人が増えているようだ。家の価値に対する考え方は様々だ。立地条件や土地の形状、周辺環境なども、家の価値を大きく左右するものだが、普段、家事を行う主婦の目線で考えれば、やはり家自体の住みごこちが最も大きな要素になるのではないだろうか。

 家の住みごこちに関して、住宅メーカーのアキュラホームが家事動線に関する興味深い調査結果を発表している。アキュラホーム住生活研究所の調査によると、主婦が家事をする際、1日で最も行き来することが多いと言われる、キッチンと洗面室の距離は、2015年は平均で3.63m。前年比で0.84m短縮されていることが分かったという。2009年の調査結果の5.72mと比べると、6年間で36.5%も短縮していることになる。たかが2.09mの差ではあるものの、1日で約335.9m、年間で122.6kmも短縮したことになるから軽視できない。

 家事動線の短縮は、単にキッチンと洗面室の距離を縮めたというだけでなく、洗面室に入る複数動線の確保など、間取りや機能面での工夫が大きなカギとなっている。つまり、距離以上に、家事のしやすさに配慮した、まさに住みごこちのいい家となっているわけだ。

 こういった間取りの工夫を凝らした住宅は、フルタイムで働く忙しい主婦の支持を得て人気が高まっており、家事動線のさらなる短縮も加速傾向にあるようだ。

 前述のプレオープンで完売した住宅は、愛知県の住宅会社・オカザキホームが岡崎市滝町に開発した「ルピナシティ滝町」の話だが、ここで建築されたコンセプトモデルハウスはまさに、この住みごこちを重視したものだった。しかも、同じような場所、大きさなどをふまえると700万円程高いモデルでありながら即売したというのだから驚きだ。

 太陽光発電やHEMS、IoTなど、住宅業界は今、省エネ・デジタル化が進んでいる。そういった進化ももちろん大事だが、家計は軽減しても、毎日の主婦の労力を劇的に軽減するようなものではない。また、技術的な進歩は遂げても、それが標準仕様になってくれば、セールス的な面でのインパクトは徐々に薄くなるのは否めない。それよりも、毎日の暮らしのことを考えれば、主婦目線を重視した、人の手による工夫が創り出す「住みごこちのいい家」が、これからの住宅市場のトレンドになってくるのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)

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