「爆買い」から「爆売り」? 成長する中国市場と日本のインバータ

2017年6月11日 17:00

 2015年頃から、日本にやってきた中国人旅行客が日本国内の家電量販店や百貨店、ドラッグストアなどで、驚くほど、商品を買い漁っていく現象は「爆買い」といわれて大きな話題となった。都市部の家電量販店などはとくに、中国人旅行者と彼らを目当てにした中国語の看板などで溢れかえった。しかし、16年の後半あたりから急速に失速し始め、日本を訪れる中国人旅行者は未だに多いものの、爆買いブームは収束に向かっている。

 しかし、中国の家電市場が下降しているというわけではない。今年3月に上海の上海新国際博覧センターで開催された中国最大のコンシューマ向けホームアプライアンス&エレクトロニクスの展示会「Appliance & Electronics World Expo 2017(AWE2017)」では、中国の家電メーカーを中心とした約700社が出展し、過去最大の規模となったが、それを主催した中国家電協会によると、2016年度の中国の家電市場は前年比で103.7%、利益ベースで120%の成長を遂げていると発表している。

 

 また、中国の調査会社星?数据が行ったマーケット分析をみても、中国の国内の家電製品市場は依然として増加傾向が継続しており、1月~10月の前年比で24.9%の伸びとなったことがわかった。また、冷蔵庫や食洗器、空気清浄機などキッチンまわりの白物家電と、エアコンなどの大型家電の平均価格が上昇しており、高級志向が進んでいる。

 一方、日本国内の白物家電市場は、業界の成熟化や人口減少の影響で縮小傾向にある。残念ながら、これは将来的にも継続するとみられており、日本の白物家電業界が生き残るためには、日本国内だけではなく、中国をはじめとする海外市場でのシェア獲得を拡大することが急務だ。

 そんな中、中国市場でのこれからの伸びが期待されているのが、エアコンなどに搭載されるインバータだ。インバータは、モータの電源周波数を自在に変えて回転数を制御する装置で、従来のダンパ(開閉弁)制御と比較して大幅な省エネ効果を生み出すことで知られている。日本ではすでに一般的に知られているが、中国市場ではこれから普及するとみられている技術の一つだ。

 日本メーカーのインバータ技術は高度で、例えば先日も、ロームがインバータ向けの新型パワートランジスタ「R60xxMNxシリーズ」を開発したことを発表した。従来のIGBT(絶縁ゲート型バイポーラ・トランジスタ)と比較して、軽負荷時の電力損失を約56%も低減させ、劇的な省エネ化に貢献すると話題になっている。

 同製品は、業界最速のtrr(スイッチングダイオードがオン状態から完全なオフ状態になるまでにかかる時間)性能を誇るパワーMOSFET PrestoMOSTMのラインナップだが、その特長を維持したまま、オン抵抗(スイッチングダイオードがオン状態になっている時の抵抗値)とQG(オン・オフに切り替える際にゲート電極に注入する必要がある電荷量)の劇的な低減に成功している。これにより、インバータ搭載のエアコンや冷蔵庫などで、電力損失の大幅な削減が見込めるという。

 今後、中国をはじめとする発展途上国でエアコンが普及すれば、省エネ性能が高くて快適なインバータ搭載モデルの需要が増加するのは間違いないだろう。またインバータはエアコンに限らず、洗濯機などにも搭載されている。これらの国々で、日本の高度なインバータ技術の認知が高まれば、「爆買い」ならぬ「爆売れ」も夢ではないかもしれない。(編集担当:藤原伊織)

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