ジカウイルス流行、変異でネッタイシマカへの感染能力高まったことが原因か

2017年5月21日 21:16

近年発生しているジカウイルスの流行は、変異によりネッタイシマカに対する感染能力が高まったためという研究結果が発表された(論文Ars Technicaの記事)。 ジカウイルスは1947年にウガンダで最初に発見されたが、2007年にミクロネシアで小規模な流行が発生するまでは散発的に感染が報告されるだけだった。しかし、2013年にはフランス領ポリネシアでより大きな流行が発生し、2015年には南米で大規模な流行が発生している。ジカウイルスにはアジア系統とアフリカ系統のものが存在するが、感染が拡大しているのはアジア系統のジカウイルスであり、アフリカ系統のジカウイルスの感染拡大は報告されていない。 研究チームでは2010年にカンボジアで分離されたジカウイルス(FSS13025)と2016年にベネズエラで感染した中国人男性から分離されたジカウイルス(GZ01)をマウスに感染させ、血を吸ったネッタイシマカへの感染率を調査している。感染したマウスでのジカウイルス繁殖は2株で大きな違いは見られなかったものの、GZ01では非構造タンパク1(NS1)がFSS13025よりもはるかに多く分泌されており、NS1抗原血症が増加。ネッタイシマカの感染率も高くなったという。ネッタイシマカに対するジカウイルスの感染力とNS1に関係があるかどうか調べるため、NS1の抗体を用いてGZ01に感染したマウスを治療したところ、ジカウイルスは無力化されていないにもかかわらず感染率は低下。FSS13025の場合でもNS1が増加すると感染率が上昇した。 NS1分泌の違いを確認するため、研究チームでは前膜(prM)-エンベロープ(E)-NS1に着目。2株の違いはEタンパク質の残基473とNS1の残基188のみであり、NS1の残基188がNS1分泌の変化に影響していることが確認された。FSS13025の残基188はアラニンなのに対し、GZ01ではバリンに置き換えられており、2013年以降に分離された株ではすべて残基188がバリンに変異していたとのこと。 アフリカ系統のジカウイルスも残基188がバリンであり、カに対する感染力は強いとみられる。しかし、セネガルで2011年に実施された調査では、村では感染したカがほとんど見つからず、村の屋内では見つからなかったという。そのため、人間への感染が拡大しない何らかの不明な要素が存在するようだ。 今回の研究結果は、ジカウイルスが宿主と感染ベクターとともに進化したことが近年の感染拡大につながったことを示唆するものになるとのことだ。

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