チンパンジーが重度の障害を持つ赤ちゃんを育てる際の行動を観察―京大・松本卓也氏ら

2015年11月14日 22:05

 京都大学の松本卓也博士後期課程学生らの研究グループは、先天的障害のあるチンパンジーの赤ん坊が2年近く生存した事例を観察し、母親が過去の子育てとは異なる方法で障害児のケアを行っていた点、他個体が障害児に対して恐れや攻撃といった特異な反応を示さなかった点などを明らかにした。

 京都大学を中心とする研究チームは、タンザニアのマハレ山塊国立公園で、50年近くの間、野生チンパンジーに関する研究を行ってきた。そして、研究対象のチンパンジー集団(M集団)については、チンパンジーの出生年や血縁関係、個体ごとの行動の特徴など詳細な情報が蓄積されてきた。

 今回の研究では、2011年にマハレのM集団で重度の障害のある赤ん坊が生まれたことを発見し、その後、赤ん坊が消失するまでの約2年間の行動を記録した。その結果、今回観察された障害児の特徴が、過去に報告されたダウン症様の個体の症例に酷似していること、他個体がその赤ん坊に対して恐れや攻撃といった特異な反応を示さなかったこと、母親が過去の子育てとは異なる方法(腹に掴まった赤ん坊に片手を添えつつ移動するなど)で障害児を育てていたこと、障害児の姉が母親の代わりによく世話をしており、その姉が自身の子を出産した約1カ月後に障害児が消失したことがわかった。

 研究メンバーは、「マハレでのチンパンジー研究は今年で50年になりますが、障害のある赤ん坊が観察されたのは今回が初めてです。障害者などの弱者をケアできる人類社会の進化基盤を考察する上でも重要な観察事例だと考えています」とコメントしている。

 なお、今回の研究内容は「Primates」に掲載された。論文タイトルは、「An observation of a severely disabled infant chimpanzee in the wild and her interactions with her mother」。

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