日本発ウルトラファインバブルの可能性と課題

2015年10月14日 08:19

 大きな潜在市場を秘めるウルトラファインバブル・テクノロジー。ファインバブルとは直径が100ナノメートル以下の気泡のことで、産業界では食品をはじめ、化粧品、薬品、医療、半導体や植物育成など、幅広い分野での応用が始まっている。調査会社ベンチャーラボによる調査では、2010年に1260億円だった世界の関連市場は、30年には12兆6700億円に成長するとの試算を示している。このファインバブル市場において、現在日本は技術、利用の面で世界のトップを走っている。

 しかし、技術や製品がいかに優れていても、国際規格から外れてしまえば、グローバルなビジネス展開ができず、さらに日本国内においてさえ海外製品にシェアを奪われる結果につながる。関係者は、これまでの苦い経験から、ファインバブル技術の国際標準化が今後の技術開発と発展に不可欠であると認識している。そして、この技術を一つの産業へ発展させるためには、その定義、測定方法、性能の評価方法などの標準化や認証方法などの確立が不可欠である。

 そこで、12年に産学官がまとまり微細気泡産業会(FBIA)が発足した。FBIAにはIDEC<6652>、資生堂<4911>、島津製作所<7701>、シャープ<6753>、西日本高速道路、パナソニック<6752>、キユーピー<2809>など、発生・計測装置メーカーからユーザー企業までファインバブル技術を扱う国内外の58社が参加している。FBIAは現在、経済産業省の支援を受けファインバブルの国際規格づくりを急いでいる。それが可能となった背景には、以前は目視が不可能だったファインバブルが、島津製作所<7701>等の計測装置の性能向上で確認できるようになった事が大きい。数や大きさが計測できることで発生装置の改良が急速に進み、日本には質の良い気泡を安定して生み出す技術を持つ企業が存在するようになった。

 現在、ファインバブルの測定方法や性能評価に国際基準はない。そこで、日本主導で新しいルールを各国に呼びかけていく構えだ。そのため、従来ならまずJIS規格を作り、その上で国際規格化するところを、当初から国際規格を作成する構えだ。そこには、技術のみならず国際ルールの整備でも先行し、日本企業の海外展開にはずみをつけたいという狙いが見える。しかし、そういった行動について、一部の国は「技術と規格を日本が独占してしまう」ことの懸念から難色を示しているとの声も上がっている。

 このように各国の利害がぶつかり合う国際標準化規格であるが、そこにはロビー活動を含めてタフな交渉力が必要される。関係者の努力がバブル(水の泡)とならぬためにも、日本がこの分野で主導的立場を維持するためにも、規格作りにおいて日本のリーダーシップを期待したい。(編集担当:久保田雄城)

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