マグロやホホジロザメなど、高体温の魚は泳ぎが高速―海生哺乳類に匹敵=国立極地研究所
2015年4月21日 21:42
国立極地研究所の渡辺佑基助教を中心とする研究グループは、マグロ類やホホジロザメなどの体温の高い魚は、遊泳スピードにおいても、回遊距離の長さにおいても、普通の魚のレベルを越えており、むしろペンギンやクジラなどの恒温動物に近いことを明らかにした。
ほとんどの魚は変温動物であり、体温はまわりの水温と同じだ。ところがマグロ類や一部のサメ(ホホジロザメ、ネズミザメなど)だけは、まわりの水温よりも5~15度ほど高い体温を維持している。どうしてこのような不思議な進化が起こったのかは、生物学上の大きな謎のひとつだった。
その謎を解く有力な仮説として、高い体温は筋肉の出力を上げる効果があるため、高い体温をもつ魚はそうでない魚に比べて速い遊泳スピードを維持できる、というものがあった。そこで研究チームは、この仮説を科学的に検証した。
研究チームは、動物の体に各種センサーやビデオカメラなどを取り付ける「バイオロギング技術」を使い、魚類46種の平均遊泳スピードを比較。その結果、体温の高い魚は同サイズの普通の魚に比べ、2.7倍も速いスピードで泳ぐことがわかった。マグロは速いという一般的なイメージがあるが、それを科学的に裏付ける初めての研究成果だ。
また年間の回遊距離を比較したところ、体温の高い魚は同サイズの普通の魚に比べ、2.5倍も回遊距離が長いことがわかった。さらに、遊泳スピードが速い魚ほど回遊距離が長いという傾向が見つかった。
この研究により、体温の高い魚は速い遊泳スピードを維持することができ、それが地球スケールの大規模な回遊を可能にしていることが明らかになった。大規模な回遊ができれば、季節的な環境の変化(エサの増減など)に柔軟に対応でき、生存に有利にはたらくと考えられるという。このようなメリットが、高いエネルギー要求量というデメリットを上回ったからこそ、高い体温をもつ不思議な魚類が進化したと考えられるという。
また研究では、体温の高い魚は遊泳スピードにおいても、回遊距離においても、ペンギン、アザラシ、クジラなどの恒温動物に近いことがわかった。つまり高い体温をもつ動物ほど速く泳ぎ、また長距離を回遊するというこの研究の発見は、魚類、鳥類、哺乳類などの分類群を越えて幅広く当てはまる自然の法則であると考えられるという。
この研究成果は、米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された。論文タイトルは、「Comparative analyses of animal-tracking data reveal ecological significance of endothermy in fishes」。(記事:町田光・記事一覧を見る)
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