経済危機以後自殺率36%増 ギリシャ支援延長の行方は

2015年2月16日 08:37

 2月12日EU(欧州連合)首脳会議が行われ、1月に就任したギリシャのチプラス首相が初めて出席した。ギリシャへの金融支援問題について議論が行われたが、結論は出ず、16日のユーロ圏財務相会合での合意を目指す形となった。

 現在EUによって行われているギリシャへの金融支援は2月末で期限を迎える。EU側はドイツのメルケル首相やIMF(国際通貨基金)のラガルド専務理事をはじめ、現行の支援プログラムでの延長を主張し、ギリシャに金融緊縮策を行うよう求めている。しかし、ギリシャのチプラス首相は、独自の支援策や債務罷免を求め、新しい支援プログラムの必要性を主張している。特に緊縮策については強く反対し、両者の隔たりは大きい。

 1月の自国総選挙で勝利し就任したチプラス首相は、選挙前から緊縮策を緩和し、最低賃金の引き上げや、課税対象最低所得の引き上げなどを行うと主張している。チプラス首相をはじめとした左派連合の主張は、EUの支援策とは真っ向からぶつかるものであり、支援延長合意に達しなければ、ギリシャは最悪の場合、デフォルト(債務不履行)、EU離脱という可能性もある。

 緊縮策導入以後、ギリシャは国民の4人に1人が失業状態に陥った。精神疾患対策や経済的弱者の保護予算も削られ、社会的弱者のライフラインは失われた。結果、経済危機以前に比べギリシャの自殺率は何と36%も増加している。1月、緊縮策に反対する急進左派が政権を獲得したのも、こうした社会背景が大きい。

 それでも、最悪のケースとして想定されるデフォルトによるEU離脱はギリシャ、EUどちらにとっても望むところではないだろう。EUを離脱すればギリシャは自国新通貨を発行しなくてはならないが、今のギリシャの状態で新通貨が国際的に信頼を得られることはない。そうなると、国民の生活はますます圧迫される。EUにとっても、デフォルトされてしまえば、これまで注ぎ込んだ救済資金が水泡と帰してしまう。さらに、弱体化しつつあるEU全体への打撃にもつながるため、それは避けなくてはならない。

 ギリシャ支援策について、ギリシャ新政権とEUがどのような形に落としどころをつけるのか。注目が集まる。(編集担当:久保田雄城)

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