遺伝暗号を解読する鍵とは 理研が新メカニズムを発見

2014年6月26日 13:09

 理化学研究所は23日、遺伝暗号解読の主要なプロセスで全く新しい分子メカニズムが働いていることを発見したと発表した。これは、理研横山構造生物学研究室の横山茂之上席研究員、永沼政広特別研究員、理研ライフサイエンス技術基盤研究センター 構造・合成生物学部門の関根俊一チームリーダーと、米国のスクリプス研究所、トーマスジェファーソン大学との共同研究グループによる成果だという。

 主に20種類のアミノ酸が連なったタンパク質は、私たちの体の重要な構成要素だ。1988年に、アミノ酸の1つのアラニンで、tRNA選択の決め手(決定因子)がtRNAの二重らせん部分にある変則的塩基対(G・U塩基対)であることが発見された。しかし、アラニンに対応するaaRS「アラニルtRNA合成酵素(AlaRS)」によるtRNA選択のメカニズムには多くの謎があり、その実態は解明されていなかった。

 共同研究グループは、大型放射光施設「SPring-8」と放射光科学研究施設「フォトンファクトリー」を用いて、AlaRSとそのtRNAとの複合体のX線結晶構造を解析し、tRNA選択の詳細なメカニズムの解明に成功した。アラニンと反応するtRNAの末端部分が、天然型ではAlaRSの活性部位に向かって入って行くのに対し、天然型のG・U塩基対をA・U塩基対に入れ替えた変異型tRNAでは、AlaRS上の「分岐点」で向きを変え、活性部位から遠く離れて行き「非反応性複合体」となることがわかった。

 変異型tRNAは、天然型tRNAとほぼ同じ強さでAlaRSと結合するのにもかかわらず、反応速度が2桁も遅く、事実上、選択されない。この反応速度の差だけに基づくtRNA選択の原理は、これまで説明できなかった。今回、結晶構造の解析に成功したことにより、天然型tRNAでは、G・U塩基対に起因するわずかな変形が、末端部分の位置をずらして分岐点を超えさせ、反応を2桁も速くすることがわかった。非反応性複合体を介した基質選択は新規の基本的概念だとしている。今後、これを応用することで、人工アミノ酸を遺伝暗号に組み込むなど、新技術の開発につながると期待できるという。

 この研究成果は、文部科学省ターゲットタンパク研究プログラム、文部科学省創薬等支援技術基盤プラットフォーム事業の一環として行われたもので、英国の科学雑誌『Nature』オンライン版(6月11日付け:日本時間6月12日)に掲載された。(編集担当:慶尾六郎)

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