霜月の都会、それが音楽 - 大貫妙子のビルボードライブ大阪公演
2013年11月27日 18:38

「関西はキビシいお客さんが多いので緊張しちゃったけど、やっとリラックスしました、今頃」アンコールが終わって大貫妙子が口にした“本音”だ。
11月21日。冬の気配が日ごとに近づいてくる時期だが、あたたかいライヴを予見するかのように、この日は幾分寒さが和らいでいた。そんな夜に会場は世代を越えたファンで埋め尽くされ、音楽活動40周年を迎えた大貫妙子がビルボードライブ大阪のステージに立った。
今回のバンド・メンバーはギター:小倉博和、ベース:鈴木正人、ピアノ:フェビアン・レザ・パネ、ドラム:林立夫。名うてのミュージシャンが揃い踏みだ。オープニングは小倉博和のインスト曲「Spring comes」で静かに幕が上がっていく。4人が一音一音大切に紡いでいく様子が印象的だ。2曲目の「Monochrome & Colours」のイントロが始まると、いよいよ主役の大貫妙子が登場し、本編がしなやかにスタートする。
70年代の「横顔」、80年代の「色彩都市」、90年代の「Mon doux soleil」、2000年代の「あなたを思うと」など、キャリア総括のような選曲だった。歌声は月日を重ね、さらに透明度が増している。深みのある透明度。そんなことができるのは彼女しかいないだろう。後半に差しかかると「ちょっと盛り上がる曲を」と始まったのは「都会」。林立夫のドラムが跳ねる。呼応するかのようにギターとベース、ピアノも跳ねる。もちろん歌も。この日のハイライトのひとつだ。
本編ラストは、細野晴臣のカバー「ファムファタール」。打ち込みも使ったアプローチ、妖艶な雰囲気は圧巻だった。そしてアンコールは「突然の贈りもの」。会場にいた誰しもがこの歌を待っていたはずだ。
40年は節目ではなくひとつの通過点。歌を大切にうたう姿勢や最後に出た“本音”など、大貫妙子というひとりの人間から滲み出るものから、そう感じずにはいられなかった。いつかの夜のように、この夜もまたたくさんの贈りものをいただいた気がする。
TEXT:柳本篤(citymusic) PHOTO:宇山ケンジュ
◎公演情報 日時:2013年11月21日(木) 場所:ビルボードライブ大阪
◎セットリスト 01. Spring comes(小倉博和 インスト曲) 02. Monochrome & Colours 03. La Musique 04. 横顔 05. 色彩都市 06. あなたを思うと 07. 新しいシャツ 08. Time to go 09. 空の水族館(フェビアン・レザ・パネ インスト曲) 10. 都会 11. Mon doux soleil 12. ファム・ファタール Encore 13. 突然の贈り物