アールシーコアCORPORATE RESEARCH(13/16):リノベーション事業は大きな変化をもたらす可能性

2013年6月21日 18:58


*18:58JST アールシーコアCORPORATE RESEARCH(13/16):リノベーション事業は大きな変化をもたらす可能性

■KEYWORDS 4 : リノベーション事業

◆リノベーションはBESSブランドの一角として参入

なお、今回の中期計画で新規参入となったリノベーション事業は、「NEWIT(ニュイット)」という商品名でスタートしたもの。6シリーズあるBESSブランド商品の7番目の商材との位置づけにあり、(1)感性に訴え、(2)保証制度(10年の中古瑕疵保証、5年の設備保証)を加え、(3)カタログ販売方式によって定価を提示し、価格システムを透明化させる、というBESSの特色をそのまま移植させている。ただし、現時点ではまだ本格的な販売には至っておらず、目線は数年後、あるいは中期計画のその後、を睨んでの布石という位置づけになる(前段で示した中期計画のシナリオ分析・試算にはこのNEWITの効果・寄与は一切織り込んでいない。この事業が伸長すれば、当然、その分目標達成へのハードルが下がることになる)。


◆住宅需要の一層の掘り起こしが狙い。「いまの家がBESSになる」

これは、かつての別荘販売中心であった時代から、需要の中心が住宅にシフトしてきたことに対応したもの。都心部における住宅の潜在需要者というのは、土地を持たない一次取得者層が最も多いものの、次いで多いのが「住宅は既に持っている」層となる。アールシーコア<7837>の調べでは、持家があってもBESSの展示場に足を運ぶ来訪者は全体の30%にも及ぶとしている。これらは、持家の老朽化や現在の生活様式とマッチしなくなった間取りや機能などから、現在の住宅を建て直したい、あるいは作り直したい(リノベーションしたい)と考えている層でもある。このうち、新しい住宅へのニーズはある一方、経済的な問題や土地の制約などから、リノベーションで対応したいというニーズは決して少なくないと考えられる。NEWITは、そういった顧客を対象に、現住宅をBESSに作り替えようという提案を行うものである。NEWITのコンセプトは「いまの家がBESSになる」。NEWITを担当するのはBESS事業。開示セグメントでは、直営の場合はスクエア部門に、販社が手掛ける場合は販社部門に計上され、通常のBESS商品と同じ扱いとなる見通しである。


◆潜在顧客層の拡大、稼働率の改善に期待

一見、商品ラインナップが一つ増えただけのようではあるが、これは同社にとって大きな変化をもたらす可能性がある。それは、第一に、これまで獲得できなかった潜在顧客者層を一気に広げることができる、第二に、それにともなって施工・工事、キットの製造といった分野で稼働率の改善(=単位当たり固定費の低減)が期待でき、それはコスト低減、価格競争力の強化に繋がる可能性がある、第三に、個別案件に一歩軸足を移したアプローチとなる、ため。第一と第二の視点については説明を要すまい。これまで取りこぼしていた市場の取り込みは、もう成長ピッチをもう一段加速させるカタリストになり得るものと判断する。ただし、現在の中期計画の目玉とも言える施策だが、売上に繋がるまでにはまだ時間を要する見通し。真価が問われるのは、むしろ中期計画のその先となろう。


◆同時に、従来型ハウスメーカーの手法にも一歩踏み出すことには若干の懸念も

問題は第三の視点。第一、第二の視点がかなりポジティブであるのに対し、これはややリスク要因となる懸念がある。すなわち、やや杞憂かもしれないが、個別案件への踏み出しは、同社が一線を画す従来型ハウスメーカーのアプローチへ一歩近づくことになりかねない、ためである。同社はこれまでむしろ「全体的な雰囲気」を提供できるように、商品をキット形式で供給してきた。しかし、リノベーションではどうしても各戸別にある程度企画をオーダーメード対応しなければならなくなるはず。そして、既存のハウスメーカーのアプローチである「細部主義」は、こういった個別対応の一つの究極形にある。もちろん、ただちに同社が従来型ハウスメーカーのような方式に変化し、かつ彼らと同じ土俵で競合し始めるとは予想しない。しかし、地域単位の販売戦略は(同社とは対等のパートナーである)地区販社が独自に担っている以上、域内の競争が激化してくれば、少しずつ「細部主義」を充足させることで顧客を獲得していこうとする動きが出てこないとも限らない。これまでは新築のみであったために、他の住宅との差別化は比較的容易であったと推定するが、リノベーションでは個別要求への融通性も求められる公算は大きい。そうなれば、業界ではメリハリの効いた「異端」という立ち位置が徐々に曖昧になってしまうリスクが生じてこよう。


◆アールシーコアでは特色を維持し、バランスを保つための歯止めは用意済

当然ながら、これまでの全体感を活かしつつ、顧客のニーズに合致した「細部」を提供することは決して悪いことではない。重要なのはそのバランスであろう。ややもすれば前線でそういったバランスを崩しかねないよう、アールシーコアとしてはきちんと歯止めをかけておく必要がある。カタログ販売方式の実施や「NEWITはBESSの一商品」との位置付けを強調するのは、あくまでBESSのブランドが主であることを意識したものであり、その歯止め効果を想定してのものと推察する。そして、その歯止めが効いている限り、潜在需要層の拡大、操業度の改善といったメリットは同社の収益を強力に下支えするものと予想する。現中期計画においては着々と地歩を固め、ポスト中期計画においては、このNEWITが大きな役割を担うことになる公算は大きいと考える。


◆中期的な売上規模で年17億円程度がメドに

ちなみに、2012年度のBESS商品1シリーズ当たり平均売上高はおよそ17億円(102億円を6シリーズで除した値)。現時点で会社側はNEWITの目標売上高を明らかにしていないが、7番目のBESS商材との位置づけにある以上、この平均売上高をある程度意識した水準を中期的なターゲットに据えるものと予想される。換言すれば、この水準に如何に速く到達するかが、リノベーション事業の成否を左右するポイントになってくると考える。


株式会社エヌ・ジー・アイ・コンサルティング
長井 亨《FA》

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