グッドデザイン賞にみる新しいデザインの方向性

2012年11月26日 11:00

 1957年に創設され、半世紀以上に渡って"よいデザイン"を評価してきた「グッドデザイン賞」。そのシンボルとして受賞デザイン商品への使用が許された「Gマーク」の認知率は今や88%と言われている。

 長い歴史の中で「グッドデザイン賞」も社会の変化と共に、"デザイン"という認識領域を広げ、現在ではプロダクトデザインだけではなく、住宅や建築物、ソフトウェア、ビジネスモデルなど有形無形を問わず、人によって生み出されるあらゆるものが対象となっている。

 そして、2012年度も3,000件以上の応募の中から1,108件が受賞したが、昨年、東日本大震災という大きな災害を経験した日本社会が、大きく変化をしていくにあたり、"デザイン"という概念もまた新たな変化の年を迎えている。審査委員長を務める深沢直人氏は会見の場で、その変化を「物ではなくコミュニティが発達していく要素(仕組み)」「単純な発明でも今後の核となるもの」「残すべき過去の優れたデザイン」「社会や個人が抱える問題を洗練された方法で解決したもの」「経験価値」と、5つの傾向として捉え、審査のステイトメントは従来の概念を超えて、"仕組み"や"一部の部品"にもフォーカスするべきとしている。

 このような大きな変化は、今年度の新しい試みとして形となっている。

 中でも最も特徴的なものとして、受賞対象の中から各分野を通じて特に高く評価したデザインを「グッドデザイン・ベスト100」と位置付け、先日東京・六本木ではそのデザイナーたちがプレゼンテーションを行い、また、現在行われている「グッドデザインエキシビション2012」では、会場の中央を貫く位置にグラフィカルな演出で展示されているという試みがあげられる。他にも、そのエキシビション会場内に展示されるデザインは、全てが受賞作という史上初のスタイルをとっている。

 このベスト100のデザインは大賞候補、特別賞候補を含む上位100件ということもあり、見応えのある受賞作が会場内の特設スペースに並ぶ。

 ホンダが昨年末に発売し、今年スタートから売れ行きが好調だった「Nシリーズ」や、NHN Japanの新しいモバイルコミュニケーションツールとして世界中で7,000万人以上のユーザーが利用する「LINE」、先日発売され、世界中でも話題となった日本マイクロソフトの「Windows8」、東日本大震災でログハウス住宅の建設を行った芳賀沼製作らの「仮設住宅」、話題の社食レシピ本を出した計測器の大手タニタが出店する「タニタ食堂」、ハウスメーカーが抱える「大工不足と育成」に寄与し、企業のCSR活動としても評価の高かったアキュラホームの出張授業である「木望の未来プロジェクト」など、多領域に渡る受賞作には、多くの来場者が興味を持って鑑賞する姿が見受けられた。

 11月25日まで行われる「グッドデザインエキシビジョン2012」の会場内では大賞候補となる受賞作に来場者の一般投票が行われ、これに審査員の評価が加わり、大賞が決定するというシステムも導入され、盛り上がりを見せている。

 大賞が発表される11月26日には、従来のデザインに加え、仕組みや考え方という新しいデザインの方向性でもある「社会を変えていくデザイン」がどのように世間に評価されるのか、注目したい。

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