【相場展望】日銀金融政策決定会合に対する思惑が焦点だが波乱含み

2012年7月8日 07:03

【来週(7月9日~13日)の株式市場見通し】

■急ピッチの戻りに対する警戒感にも注意必要

  来週(7月9日~13日)の日本株式市場については、大勢としては過度なリスク回避姿勢が後退して地合いは改善しており、日経平均株価9000円台固めの展開を期待したい。

  しかし、日銀金融政策決定会合に対する思惑や期待感が焦点となり、急ピッチの戻りに対する警戒感もあるだけに、波乱含みの可能性にも注意が必要だろう。

  前週末6日発表の米6月雇用統計で、非農業部門雇用者増加数が市場予想を下回ったことを嫌気して、6日の米国株式市場は大幅下落した。さらに外国為替市場ではユーロ安・円高が進行したため、週初9日の日本株式市場は弱含みのスタートとなりそうだ。

  さらに今週は、11日~12日の日銀金融政策決定会合に対する思惑や期待感が焦点となるだろう。今回の日銀会合では追加緩和実施という見方が優勢だったが、2日発表の6月日銀短観が市場予想以上に強い結果となったことや、5日発表の地域経済報告(さくらリポート)で日銀が強気の景気判断を示したため、今回会合での追加緩和を見送るのではないかという観測が急浮上している。

  前週5日には、中国人民銀行とECB(欧州中央銀行)が相次いで政策金利引き下げを発表したが、景気減速に対する警戒感や材料出尽くし感などで、世界の主要株式市場はややネガティブに反応した。今回の日銀金融政策決定会合での追加緩和も、すでに織り込まれている可能性があるだけに、追加緩和実施でも材料出尽くし感が広がる可能性や、追加緩和に対する事前の期待感が急速に後退して波乱の展開となる可能性もあるだろう。

  また日経平均株価、TOPIXともに前週まで5週連続で上昇した。前週は日経平均株価9000円台固めの1週間だったが、終値ベースでの直近安値となった6月4日から、直近の戻り高値となった7月4日まで、日経平均株価は808円54銭(9.75%)、TOPIXは83.19ポイント(11.97%)上昇しただけに、急ピッチの戻りに対する警戒感もあり、利益確定売りや戻り待ち売りが出やすい水準だろう。

  輸出関連セクターの主力銘柄が買われて、市場全体が本格的に上値を試す展開となるためには、やはり為替の円安進行という支援材料が必要だろう。

  また米国では、9日の米アルコア社を皮切りに、4~6月期の企業決算発表が始まる。市場の関心が世界的な金融緩和期待から、一旦は個別企業の業績見通しにシフトする可能性もあるだろう。

  前週の主要国・地域の動向を簡単に整理すると、ユーロ圏ではESM(欧州安定メカニズム)による流通市場での国債買い入れについて、フィンランドとオランダが反対姿勢を表明したとされ不透明感を強めた。5日には英イングランド銀行が資産買入枠増額を発表した。ECBは政策金利引き下げを発表し、ドラギECB総裁はユーロ圏経済の先行きに慎重な見通しを示した。金利引き下げ幅は予想どおりで、それ以上の政策対応が打ち出されなかったため、株式市場では材料出尽くし感や失望感が広がった。スペイン10年債利回りが上昇したこともあり、外国為替市場ではユーロ売りが優勢になった。

  6日にはスペイン10年債利回りが7%台に上昇し、イタリア10年債利回りも上昇した。ドイツ財務省報道官はEU、IMF(国際通貨基金)、ECBのトロイカ調査団から報告書が出されていないため、9日のユーロ圏財務相会合でスペインの銀行資本増強支援に関する決定を下さない見込みだと語った。またフィンランドがユーロ圏を離脱するとの懸念、ドイツ政府がドイツ銀行にロンドン銀行間取引金利(LIBOR)操作の疑いで調査に入ったとの報道なども嫌気し、外国為替市場ではユーロ売りが優勢になった。

  米国の主要経済指標では強弱感が交錯した。雇用関連では、5日の米6月ADP雇用報告の民間部門雇用者増加数、および米新規失業保険申請件数が市場予想以上に改善した。しかし6日の米6月雇用統計で非農業部門雇用者増加数は市場予想を下回った。このため株式市場では景気に対する警戒感を強めた。米FRB(連邦準備制度理事会)に対する追加緩和圧力が強まるとの見方がある一方で、早期に量的緩和策第3弾(QE3)につながるほどの水準ではないとの見方が優勢のようだ。

  中国では5日、中国人民銀行が政策金利引き下げを発表したが、13日発表予定の4~6月期GDPの大幅減速が警戒される結果となった。

  日本では、2日発表の6月日銀短観(企業短期経済観測調査)で、大企業製造業の業況判断指数DIが改善して市場予想を上回った。5日発表の地域経済報告(さくらリポート)で、日銀は9地域全ての景気判断を上方修正した。強気の景気判断となったため、11日~12日の日銀金融政策決定会合での追加緩和見送り観測が急浮上している。

■注目スケジュール

  来週の注目スケジュールとしては、国内では、9日の5月機械受注、5月経常収支、6月貸出・資金吸収動向、6月景気ウォッチャー調査、6月全国倒産状況、10日の6月マネーストック統計、6月消費動向調査、11日の5月第3次産業活動指数、6月企業物価指数速報、6月工作機械受注速報、11日~12日の日銀金融政策決定会合、13日の5月鉱工業生産確報などがあるだろう。

  海外では、9日の中国6月CPI・PPI、独5月貿易収支、ユーロ圏財務相会合、米5月消費者信用残高、ドラギECB総裁の講演、エバンズ米シカゴ地区連銀総裁の講演、ウィリアムズ米サンフランシスコ地区連銀総裁の講演、10日の中国6月貿易統計、英5月貿易収支、EU財務相理事会、米週間チェーンストア売上高、米週間レッドブック大規模小売店売上高、米3年債入札、ブラード米セントルイス地区連銀総裁の講演、10日~11日のブラジル中銀通貨政策委員会、11日の仏5月経常収支、独6月消費者物価指数改定値、米5月貿易収支、米5月卸売在庫、米住宅ローン申請指数、米10年債入札、米FOMC(6月19日~20日分)議事録公表、12日の豪6月雇用統計、韓国中銀金融政策決定会合、インドネシア中銀金融政策決定会合、ユーロ圏5月鉱工業生産、米6月輸出入物価、米6月財政収支、米新規失業保険申請件数、米30年債入札、ウィリアムズ米サンフランシスコ地区連銀総裁の講演、13日の中国6月鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資、中国4~6月期GDP、シンガポール4~6月期GDP速報値、米7月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値、ロックハート米アトランタ地区連銀総裁の講演などがあるだろう。

  その後の注目イベントとしては、16日のユーロ圏5月貿易収支、米6月小売売上高、米6月ニューヨーク州製造業業況指数、17日の独7月ZEW景気期待指数、米6月消費者物価指数、米6月鉱工業生産、18日の米6月住宅着工件数、米地区連銀経済報告、バーナンキ米FRB議長の議会証言、19日のユーロ圏7月経常収支、ECB理事会(金利発表なし)、米6月中古住宅販売、米6月景気先行指数(コンファレンス・ボード)、米7月フィラデルフィア地区連銀業況指数、20日の中国7月製造業PMI速報値(HSBC)、24日のユーロ圏7月総合・製造業・サービス部門PMI速報値、25日の英4~6月期GDP速報値、27日の米4~6月期GDP速報値などが予定されている。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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