【相場展望】リスク回避姿勢後退して大勢は買い戻し優勢、日経平均株価9000円台固め

2012年7月1日 15:41

【来週(7月2日~6日)の株式市場見通し】

■当面は日経平均株価9000円台固めの展開

  来週(7月2日~6日)の日本株式市場については、大勢としてはリスク回避姿勢が後退し、買い戻し優勢の流れが継続しそうだ。

  利益確定の売りや戻り待ちの売りが出やすい水準であることに加えて、5日のECB理事会や6日の米6月雇用統計を控えて外国為替市場の動向に注意が必要であり、一本調子の戻り歩調となる可能性は低いが、底入れ感や潮目変化が鮮明になった前週の流れが継続し、当面は日経平均株価9000円台固めの展開だろう。

  前週(6月25日~29日)は週間ベースで日経平均株価、TOPIXともに4週連続の上昇となり底入れ感を強めた。結果的には29日のEU首脳会議でのポジティブサプライズが大幅上昇につながった形だが、それ以前にも前々週後半の21日と22日が、外部環境の悪化にもかかわらず意外なほどに堅調な展開だったことで、日本の株式市場に関しては底入れ感や潮目変化を印象付けていた。

  そして前週も、EU首脳会議に対する期待感の後退に加えて、為替がやや円高方向に傾く状況だったにもかかわらず、内需関連セクターへ物色シフトする形で概ね堅調な展開だった。そして週末29日には、EU首脳会議でのポジティブサプライズが強い追い風となり、底入れ感や潮目変化が鮮明になった形だろう。

  終値ベースで直近安値からの上昇率を見ると、日経平均株価は6月4日の終値8295円63銭から6月29日の終値9006円78銭まで711円15銭(8.58%)上昇し、TOPIXは6月4日の終値695.51から6月29日の終値770.08まで74.57ポイント(10.73%)上昇しただけに、一旦は利益確定の売り、あるいは戻り待ちの売りも出やすいだろう。

  また為替の水準を見ても、前週末29日午後以降に円高修正が進んだとはいえ、29日の海外市場で終盤は1ドル=79円80銭近辺、1ユーロ=101円00銭近辺の水準であり、前々週末22日の海外市場の終盤1ドル=80円40銭近辺、1ユーロ=101円10銭近辺の水準に比べると、依然として円高水準となっている。

  輸出関連セクターの主力銘柄が買われて、市場全体が本格的に上値を試す展開となるためには、やはり為替の円安進行という支援材料が必要だろう。当面はどこまで円高修正が進むかが焦点になるが、5日のECB理事会では追加利下げという見方が有力であり、6日には米6月雇用統計を控えている。ユーロ買い戻し一巡後に様子見ムードを強めて円の高止まりが継続すれば、輸出関連セクターを中心に利益確定の売り、あるいは戻り待ちの売りが出やすくなるだろう。

  このため一本調子の戻り歩調となる可能性は低いが、物色シフトなどで潮目変化を鮮明にしているだけに、内需関連セクターへの物色が継続して日経平均株価9000円台固めの展開となる可能性は高いだろう。

  また国内では、小売・外食セクターの3~5月期の決算発表が本格化している。ここで堅調な業績が確認されれば、内需関連セクターへの物色が継続するとともに、7月下旬から始まる主力企業の4~6月期決算発表に向けて、安心感につながる可能性もあるだろう。

  前週の主要国・地域の動向を簡単に整理すると、ユーロ圏では25日、スペイン政府が銀行資本増強問題で金融支援を正式要請し、キプロス政府もEUに対して金融支援を要請した。格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスはスペインの銀行28行の格付け引き下げを発表した。

  26日には、スペイン短期債入札で落札利回りが急上昇し、外国為替市場でユーロ売り優勢になった。ユーロ共同債に関してメルケル独首相の「私が生きている限り債務の共有はない」との否定的発言が伝わったこともユーロ売りにつながった。27日には、メルケル独首相とオランド仏大統領の会談で欧州統合を深化させることで一致した。イタリア議会では労働市場改革法が可決・成立した。

  現地時間28日に始まったEU首脳会議では、ファンロンパイEU大統領が日本時間29日未明、EU首脳は1200億ユーロ規模の成長促進策で合意したと発表した。欧州投資銀行(EIA)による融資拡大やインフラ向けのプロジェクト債が含まれることも明らかにした。

  さらに日本時間29日昼(現地時間29日未明)の共同記者会見で、ユーロ圏の銀行監督機能の一元化案を年末までにまとめ、新制度にはECB(欧州中央銀行)が関与し、7月に設立するESM(欧州安定メカニズム)による金融機関への直接資本注入を一定の条件下で可能とすることにユーロ圏首脳が合意したと発表した。スペインへのEFSF(欧州金融安定基金)とESMによる支援融資には、民間債権者より上位となる優先弁済権は付けないとした。さらにユーロ圏加盟国の金融市場安定に向けて、南欧諸国の国債買い入れなどにEFSFとESMを柔軟で効率的な方法で活用できるようにするとした。

  米国の主要経済指標では強弱感が交錯した。25日の米5月新築住宅販売件数、26日の米4月S&Pケース・シラー住宅価格指数、米5月住宅着工許可件数改定値、27日の米5月住宅販売保留指数など、住宅関連指標は改善が目立ち、住宅市場回復への期待感が広がった。27日の米5月耐久財受注、29日の米6月シカゴ購買部協会景気指数も改善した。

  一方で、25日の米5月シカゴ地区連銀全米活動指数、26日の米6月消費者信頼感指数(コンファレンス・ボード)は悪化した。28日の米新規失業保険申請件数は前週比で減少したが、依然として高水準だった。29日の米6月ミシガン大学消費者信頼感指数確報値は速報値から下方修正された。28日の米1~3月期実質GDP確定値は前回改定値と同水準だった。29日の米5月個人所得、米5月個人消費支出はほぼ横ばいだった。

  28日には、米医療保険改革法を巡る裁判で米最高裁が予想外に事実上合憲の判決を下したことや、米JPモルガンチェースのデリバティブに絡む損失額が当初の想定を上回り最大90億ドルに膨らむ可能性があるとの報道を嫌気して、米国株式市場は急落する場面があった。

■注目スケジュール

  来週の注目スケジュールとしては、国内では2日の6月日銀短観、自動車販売台数、3日の5月毎月勤労統計、6日の5月景気動向指数速報値などがあるだろう。

  海外では、1日の中国6月PMI(国家統計局)、2日の中国6月PMI改定値(HSBC)、ユーロ圏5月失業率、ユーロ圏6月製造業PMI改定値、米5月建設支出、米6月ISM製造業景気指数、米6月製造業PMI改定値、ユーロ圏トロイカによるキプロス調査着手、3日の豪中銀理事会、ユーロ圏5月生産者物価指数、米5月製造業新規受注、米5月耐久財受注改定値、米6月自動車販売台数、米週間チェーンストア売上高、米週間レッドブック大規模小売店売上高、3日~4日のスウェーデン中銀金融政策決定会合、4日の豪5月小売売上高、中国6月サービス部門PMI(HSBC)、ユーロ圏5月小売売上高、ユーロ圏6月総合・サービス部門PMI改定値、4日~5日の英中銀金融政策委員会、5日の豪5月貿易収支、マレーシア中銀金融政策決定会合、独5月鉱工業受注、ECB理事会(金利発表と記者会見)、米6月ADP雇用報告、米6月企業人員削減数、米6月ISM非製造業景気指数、米6月チェーンストア売上高、米新規失業保険申請件数、米住宅ローン申請指数、6日の仏5月貿易収支、独5月鉱工業生産、米6月雇用統計などがあるだろう。

  その後の注目イベントとしては、9日の中国6月CPI・PPI、独5月貿易収支、ユーロ圏財務相会合、10日の中国6月貿易統計、英5月貿易収支、EU財務相理事会、10日~11日のブラジル中銀通貨政策委員会、11日の仏5月経常収支、米5月貿易収支、米FOMC(6月19日~20日分)議事録公表、11日~12日の日銀金融政策決定会合、12日の韓国中銀金融政策決定会合、13日の中国6月鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資、中国4~6月期GDP、米7月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値、16日のユーロ圏5月貿易収支、米6月小売売上高、19日のユーロ圏7月経常収支などが予定されている。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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