【株式市況を検証】欧州各国の国債格付け引き下げでリスク回避の売りが優勢
2011年12月17日 18:26
【株式市場フラッシュ:12月12日~16日の週の日本株式市場】
■欧州各国の国債格付け引き下げに対する警戒感で日経平均株価、TOPIXとともに2週連続の下落
12月12日~16日の週の日本株式市場では、日経平均株価(225種)、TOPIXともに2週連続の下落となった。EU(欧州連合)首脳会議という重要イベントを通過したが、欧州各国の国債格付け引き下げ観測など警戒感がくすぶり、リスク回避の売りが優勢だった。
ユーロ圏の債務危機問題に関しては、8日~9日のEU首脳会議で、財政規律強化に向けた新たな財政協定、IMF(国際通貨基金)に対する融資、ESM(欧州安定メカニズム)の前倒し稼働などを合意した。この結果に対して9日の欧米株式市場は、即効性や資金力などの面で十分とは言えないが、財政統合に向けて一定の成果が得られたとして、一旦は好感する動きとなった。
しかし、格付け会社による欧州各国の国債格付け引き下げ観測が広がり、リスク回避の動きが優勢になった。すでにEU首脳会議前の5日と6日には、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)がドイツやフランスを含むユーロ圏15カ国の国債格付けとEFSF(欧州金融安定基金)債の格付けを引き下げる可能性を発表していたが、12日にはムーディーズ・インベスターズ・サービスが12年第1四半期にEU加盟27カ国の格下げを検討する可能性を明らかにし、フィッチ・レーティングスもユーロ圏各国の格付けに対する圧力が高まったとの見方を示した。このためイタリアの10年債流通利回りが再び7%台に上昇するなど市場は警戒感を強めた。
またフィッチ・レーティングスは、14日に欧州の大手金融機関5行の格付け引き下げ、15日に欧米大手金融機関7行の格付け引き下げを発表し、16日には12年1月末までにイタリアやスペインなど欧州6カ国の国債格付けを引き下げる方向で見直し、フランスの格付け見通しについてもネガティブに引き下げるとした。さらにムーディーズ・インベスターズ・サービスは16日、ベルギーの国債格付け引き下げを発表した。格付け会社のコメント、各国の国債入札や流通利回りの動向に引き続き注意が必要だろう。また今後の焦点は、メルケル独首相が強硬に反対しているユーロ共同債の導入や、ECB(欧州中央銀行)による重債務国の国債購入拡大に関する議論の動向となる。
米国の主要経済統計を見ると堅調な内容を示す指標が増加している。9日には、米10月貿易収支で貿易赤字が434億ドルと前月比1.6%減少して市場予想以上に改善した。米12月ミシガン大学消費者信頼感指数は67.7と11月の64.1から上昇して市場予想も上回った。13日には、米11月小売売上高が前月比0.2%増加にとどまり前月改定値の0.6%から鈍化して市場予想も下回った。15日には、米12月ニューヨーク連銀製造業景気指数が9.53と11月の0.61から大幅改善して市場予想も上回った。米12月フィラデルフィア連銀製造業景気指数は10.3と11月の3.6から大幅改善して市場予想も上回った。米新規失業保険申請件数は36.6万件と前週改定値38.5万件から1.9万件減少して市場予想以上に改善した。米11月鉱工業生産は前月比0.2%減少と11月の前月比0.7%増加から悪化して市場予想も下回った。16日には米11月消費者物価指数(CPI)が前月比0.0%で変わらず、食品・エネルギーを除くコア指数が前月比0.2%上昇となり、いずれも市場予想とほぼ同水準だった。概ね堅調な結果となり、米景気の2番底に対する警戒感は後退している。
外国為替市場では、関心がユーロ圏の債務危機問題に集中したため、ドル・円相場は概ね1ドル=77円50銭台~78円10銭台で小動きに終始した。ユーロ・円相場ではユーロ売り圧力が強まり、1ユーロ=101円台前半に円が上昇した。
テクニカル面で見ると、日経平均株価(16日時点の8401円72銭)の移動平均線に対する乖離率は、25日移動平均線(同8484円25銭)に対しては0.97%のマイナス乖離に転じた。75日移動平均線(同8645円36銭)に対してはマイナス2.81%、200日移動平均線(同9271円64銭)に対してはマイナス9.38%となり、いずれもマイナス乖離幅を広げた。東証1部市場の騰落レシオ(25日移動平均)は16日時点で94.1%となっている。
日経平均株価の終値で騰落状況を見ると、週初12日は前日比117円36銭(1.37%)高で3営業日ぶり大幅反発、13日は前日比101円01銭(1.17%)安で反落、14日は前日比33円68銭(0.39%)安で続落、15日は前日比141円76銭(1.66%)安で大幅に3営業日続落、16日は前日比24円35銭(0.29%)高で4営業日ぶり小幅反発した。日中の値幅は12日が49円12銭、13日が75円52銭、14日が54円20銭、15日が81円07銭、16日が42円20銭だった。
日経平均株価の週末16日の終値は8401円72銭となり、前週末9日の終値8536円46銭に比べて134円74銭(1.58%)下落した。週間ベースで見ると2週連続の下落となった。取引時間中ベースの週間高値は12日の8682円47銭、週間安値は15日の8374円25銭、1週間の取引時間中の値幅は308円22銭だった。
TOPIXの週間騰落状況を見ると、週末16日の終値は723.56となり、前週末9日の終値738.12に比べて14.56ポイント(1.98%)下落した。週間ベースで見ると2週連続の下落となった。取引時間中ベースの週間高値は12日の749.29、週間安値は16日の722.75だった。16日時点のNT倍率は11.61倍で、前週末9日時点の11.57倍に対して0.04ポイント上昇した。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
【関連記事・情報】
・【銘柄診断】ハザマは低位仕手株人気の流れに乗る、信用の需給も厚みを増す(2011/12/17)
・【今日の言葉】『決定と責任を取る民主主義』=橋下徹氏が強調する言葉(2011/12/17)
・クラウドコンピューティング(cloud computing)関連銘柄一覧(2011/06/21)
・【特集】(4)世界最大のSNS!『フェイスブック』登場で関連企業に注目(2011/02/18)