美徳経営とは~欧米的経営と日本的経営の違い~

2011年12月12日 12:46

■欧米的経営と日本的経営
 以前、一橋大学名誉教授の野中先生の講演を聞く機会があった。野中先生はドラッカー、マイケルポーター等世界の著名な経営学者20名の中で、唯一アジアから選出されている方で、ドラッカー亡き後ドラッカースクールの名誉スカラーも務められている。

 私が経営コンサルタントになった時に、あるコンサル会社の社長からお祝いに野中先生が書かれた「企業進化論」という本を頂き、この本を今まで私のバイブルにしてきた経緯があり、非常に期待を持って講演を聞いた。

 講演内容は、経営が量から質に変化し、欧米流のマイケルポーターに代表される論理的戦略的経営(左脳的経営)に対して、現場体験に基づいた実践知をベースにした日本的経営(右脳的経営)の必要性を説かれていた。

 欧米的経営の企業価値観が株主に対する配当重視の考え方から利益思考が強く、企業はマネーメイキングマシーンであると捉えているのに対し、日本的経営は各企業が経営理念、社是社訓を掲げているように、その目的が利益ではなく社会貢献等にある。いわば社会の為というような「共通善」を前提にした経営を実践している。

■美徳経営とは
 欧米的経営は収益をあげる事を目的とし、マイケルポーターの競争優位戦略のような論理的経営を重要視し、現場で日々起きている事を経営に取り入れる実践経営は重視していない。

 一方、日本的経営は経営の目的が社会貢献であり、売上、収益はその結果であると考えており、3現主義の言葉にあるように現場の状況をリアルタイムにとらえて経営に生かす実践経営を推進している。このような社会の為というような「共通善」を念頭に現場の実践知を生かす経営を「美徳の経営」と話をされていた。

 確かに過去に破綻したGMを考えてみると、社会、顧客の為に小型車、環境対策車を積極的に開発するのではなく、配当を重要視した短期的な経営政策、現場情報を活用しないトップダウンの経営を推進してきた。

 欧米の論理的経営が一方的に悪いとは思わないが、コンサルティングを長年実施してきた経験から、これからは欧米流の論理的経営と野中先生が提唱されている現場の実践知を活用した経営手法をミックスして活用していく事が必要と考える。

 また、この美徳の経営を実践する為のリーダーの条件も参考に紹介する。

■美徳経営を実践できる賢慮型リーダーの条件
(1)良い目的(社会の為、人の為)を作る能力がある
(2)議論できる場をタイムリーに創発する能力がある
(3)アクチュアリティ(現実)を直感する能力がある
(4)直感を概念、コンセプトに変換する能力がある
(5)概念を結晶化(周囲にといて説得する)する能力がある
(6)賢慮(1から5の能力のある人材を育てる)を組織化する能力がある

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