【外国為替市場を検証:ユーロ・円相場】ユーロ圏の銀行資本注入の期待感高まる
2011年10月15日 21:03
【外国為替市場フラッシュ:10月10日~14日の週のユーロ・円相場】
■ユーロ買い戻しで1ユーロ=106円台~107円台に円が下落
10月10日~14日の週のユーロ・円相場(10日の東京市場は休場)は、ユーロ買い戻しが優勢になり、週後半には概ね1ユーロ=106円台~107円台に円が下落した。スロバキア議会がEFSF(欧州金融安定基金)機能拡充案を可決したことや、ユーロ圏の銀行に対する資本注入に対する期待感の高まりで、ユーロ圏のソブリンリスクや金融システムに対して、当面の過度な警戒感が後退した。
ユーロ・円相場の1週間の動きを振り返ってみよう。前週末7日の海外市場では、一時1ユーロ=103円80銭台に円が下落する場面があった。米9月雇用統計で非農業部門就業者数が前月比10万3000人増加して市場予想を上回ったことを好感し、ユーロ買い戻しの動きとなった。しかし、格付け会社フィッチ・レーティングスによるイタリアとスペインの格付け引き下げが警戒感につながり、終盤は1ユーロ=102円60銭台に円が上昇した。
10日の海外市場では、1ユーロ=104円90銭台まで円が下落した。9日の独仏首脳会談で、EU域内金融機関に対する資本増強計画を11月3日のG20首脳会議までにまとめることで合意し、ギリシャ債務問題を含めてユーロ安定に向けた包括的な対策を提案する考えも表明した。このためユーロ圏の金融システム不安が後退してユーロが買い戻された。なお17日に開催予定だったEU首脳会議は23日に延期された。
11日の東京市場では、前日の海外市場でユーロ買い戻しが優勢になった流れを受けて、概ね1ユーロ=104円40銭~70銭近辺で推移した。仏・ベルギー系銀行デクシアの救済は不安後退につながったが、スロバキア議会でのEFSF機能拡充案採決を控えて様子見ムードも強めた。11日の海外市場では、スロバキア議会でのEFSF機能拡充案採決が否決の見通しとなり、ユーロ売りが優勢になって1ユーロ=104円00銭台に円が上昇する場面もあったが、終盤には1ユーロ=104円90銭近辺に円が下落した。EU(欧州連合)、ECB(欧州中央銀行)、IMF(国際通貨基金)のトロイカ合同調査団が、ギリシャに対する80億ユーロの次回融資実行で合意したと発表したことに加えて、スロバキア議会での採決に関しても週内に再採決で可決されるとの見通しが優勢となり、ユーロを売り込む動きにはつながらなかった。
12日の東京市場では、概ね1ユーロ=104円20銭近辺~90銭近辺で推移した。円買いが優勢になる場面もあったが、終盤にはユーロ買い戻しが優勢になった。12日の海外市場では、1ユーロ=107円00銭台まで円が下落する場面があった。スロバキア議会での与野党合意でEFSF機能拡充案が14日までに承認される見通しとなったことや、バローゾ欧州委員長がEU域内銀行の自己資本比率の大幅引き上げを求める方針を示したことで、債務危機拡大阻止に向けた取り組みが進展するとの期待が高まった。終盤は1ユーロ=106円40銭~50銭近辺だった。
13日の東京市場では、ユーロ買い戻しが一巡して概ね1ユーロ=106円10銭近辺~50銭近辺でモミ合う展開だった。13日の海外市場では、前日のユーロ買い戻しの反動で1ユーロ=105円10銭台に円が上昇する場面があった。しかしスロバキア議会がEFSF機能拡充案を可決したため安心感が広がり、終盤は1ユーロ=105円50銭近辺~106円00銭近辺で推移した。
14日の東京市場では、1ユーロ=105円60銭近辺~106円20銭近辺で推移した。格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)がスペイン国債の格付けを引き下げたことを受けて、序盤にユーロ売りが優勢となる場面もあったが、その後はユーロ買い戻しが優勢になった。14日の海外市場では、リスク回避の動きが後退してユーロ買い戻しが優勢になった。また「日本政府が来週にも新たな円高対策を発表する」との一部報道も円売りにつながり、終盤は1ユーロ=107円10銭~30銭近辺に円が下落した。
ギリシャのデフォルト(債務不履行)懸念、イタリアやスペインなど南欧諸国へのソブリンリスク拡大懸念、ユーロ圏の金融システム不安、ユーロ圏のリセッション(景気後退)に対する警戒感が強い状況に変化はない。しかし、トロイカ合同調査団がギリシャに対する80億ユーロの次回融資実行で合意したこと、スロバキア議会がEFSF機能拡充案を可決したこと、さらにユーロ圏の銀行に対する資本注入に対する期待感の高まりで、当面の過度な警戒感が後退した。
EFSF機能拡充案に関しては、スロバキア議会での可決により、ユーロ加盟各国での承認が終了した。ただし、今回の拡充では規模的に不十分という見方が優勢である。そして、域内銀行に対する資本注入の動きが、早期に具体化するかどうかが当面の焦点だろう。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
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