【相場展望】海外要因次第に変化なく、過度な警戒感は後退の可能性
2011年10月9日 16:28
【株式市場フューチャー:10月10日~14日の株式市場見通し】
■米主要企業の7~9月期決算発表が焦点
来週(10月10日~14日)の日本株式市場(10日は休場)では、世界的なリセッション(景気後退)やソブリンリスク拡大に対する警戒感が根強いため、海外要因に神経質な展開に変化はなく、ギリシャのデフォルト(債務不履行)懸念やユーロ圏の金融システム不安の落ち着きが焦点だろう。また11日のアルコアを皮切りに、米主要企業の7~9月期決算発表が始まる。米国の主要経済統計には依然として強弱感が交錯しているが、市場予想を上回る改善内容の指標が増加し、リセッションに対する過度な警戒感が和らぎ始めているだけに、企業業績見通しも注目材料となるだろう。
前週(10月3日~7日)は引き続き海外要因に神経質な展開となった。外国為替市場での円の高止まりも輸出関連企業に対する売り圧力につながり、日経平均株価(225種)、TOPIXともに週間ベースで2週ぶりの下落となった。日経平均株価は5日の取引時間中に8343円01銭まで下落し、東日本大震災直後の3月15日に付けた8227円63銭以来の安値水準となる場面があった。またTOPIXは5日の取引時間中に724.77ポイントまで下落し、3月15日の725.90ポイントを下回る場面があった。そしてTOPIXの5日終値は726.25ポイントとなり、9月26日の728.85ポイントを割り込んで年初来安値を更新した。ただし週後半になると、欧州や米国の株式市場の上昇を受けて、警戒感がやや和らぐ形となった。
3連休明け11日の日本株式市場は、10日の米国株式市場と外国為替市場の動向次第だが、その後はスロベキア議会でのEFSF(欧州金融安定基金)機能拡充案の採決(11日の見込み)や、ギリシャに対するトロイカ(EU、ECB、IMF)合同調査団の査定結果などが焦点となるだろう。G20財務相・中央銀行総裁会議(14日~15日)、EU首脳会議(17日~18日)に向けて、EU域内銀行に対する資本注入に関する動きが具体化するかも注目点だろう。また11日の米アルコアを皮切りに、米主要企業の7~9月期決算発表が始まるため、企業業績見通しも注目材料となるだろう。こうしたイベント次第では波乱の展開となる可能性もあるが、前週のユーロ圏の動きや米国の主要経済統計の内容を見ると、一旦は過度な警戒感が後退する可能性が高いだろう。
ユーロ圏に関する動きを見ると、EU域内銀行に対する資本注入策が注目され始めた。10月3日には、ギリシャ政府が「11年、12年の財政赤字の対GDP(国内総生産)比率が目標を上回る見込みとなった」と発表し、ユーロ圏財務相会合ではギリシャへの融資第6弾の決定が先送りされた。4日には、英紙フィナンシャル・タイムズの「EU各国の財務相が欧州金融機関の資本増強を協調して行なう方法を検討している」との報道が好感された。5日には、スロバキア議会でのEFSF機能拡充案の採決に関する不透明感が嫌気されたが、一方では、メルケル独首相などEU首脳から域内銀行の自己資本増強についての発言が相次いだ。6日には、ECB理事会で利下げが見送られたが、銀行に対する流動性供給策の拡充を決定した。EU各国が域内銀行に対する資本注入に踏み切るとの観測も強まった。7日には、レーン欧州委員が「銀行資本増強策について10月のEU首脳会議で合意できる見通し」と発言し、金融システム不安後退への期待感が高まった。格付け会社フィッチ・レーティングスによるイタリアとスペインの格付け引き下げは、警戒感につながった。EFSFに関しては今回の機能拡充が承認されても規模的に不十分という見方が優勢だが、域内銀行に対する資本注入策が具体化すれば、金融システム不安の後退につながる可能性が高いだろう。
米国の主要経済統計を見ると依然として強弱感が交錯しているが、市場予想を上回る改善内容を示す指標も徐々に増加している。9月30日には、米8月個人所得が前月比0.1%減少して市場予想を下回った。個人消費支出は前月比0.2%増で7月の同0.7%増から鈍化した。一方で、米9月シカゴ地区購買部協会景気指数が60.4に改善して市場予想を上回り、米9月ミシガン大学消費者信頼感指数確報値は59.4に上方修正された。10月3日には、米9月ISM製造業景気指数が51.6に改善して市場予想を上回った。4日には、米8月製造業新規受注が前月比0.2%減少したが、市場予想とほぼ同水準だった。5日には、9月ADP全米雇用リポートで民間部門雇用者数が前月比9万1000人増加して市場予想を上回った。米9月ISM非製造業景気指数は53.0と前月比小幅に低下したが市場予想を上回った。6日には、新規失業保険申請件数が40万1000件となり前週比で増加したが、市場予想ほど悪化しなかった。7日には、米9月雇用統計で非農業部門就業者数が前月比10万3000人増加して市場予想を上回った。
外国為替市場では円の高止まり状況が続いている。前週のドル・円相場は1ドル=76円台後半のドル安・円高水準で一段と膠着感を強めた。ユーロ・円相場は4日の東京市場で1ユーロ=100円70銭台まで円が上昇する場面があり、欧州向け比率の高い輸出関連株に対する売り圧力につながった。ユーロ圏の金融システム不安の緩和や、リセッションに対する過度な警戒感の後退などで、ユーロ買い戻しが期待されるものの、輸出関連企業の売り圧力として引き続き警戒が必要だろう。
テクニカル面で見ると、日経平均株価(前週末10月7日時点)の移動平均線に対するマイナス乖離率は、25日移動平均線に対して0.59%、75日移動平均線に対して6.83%、200日移動平均線に対して11.35%となっている。当面は、上値抵抗線として意識される25日移動平均線の突破がポイントになるだろう。さらに需給面では、外国人投資家の売り越し基調に変化の兆しが見えるかがポイントになるだろう。
■注目スケジュール
来週の注目スケジュールとしては、国内(10日は体育の日で休場)では、11日の8月経常収支、9月消費動向調査、9月景気ウォッチャー調査、12日の8月機械受注、9月工作機械受注、13日の8月第3次産業活動指数、9月首都圏マンション発売戸数、日銀金融政策決定会合議事要旨(9月6日~7日分)公表、14日の9月マネーストック統計、9月企業物価指数などがあるだろう。
海外では、9日の独仏首脳会談、10日の独8月貿易収支、11日のインドネシア中銀金融政策決定会合、英8月鉱工業生産、EFSF(欧州金融安定基金)機能拡充案に関するスロバキア議会での採決(見込み)、米週間チェーンストア売上高、米週間レッドブック大規模小売店売上高、12日の仏8月経常収支、英9月失業率、ユーロ圏8月鉱工業生産、トリシェECB(欧州中央銀行)総裁の講演、米住宅ローン・借り換え申請指数、米FOMC(連邦公開市場委員会)議事録(9月20日~21日分)公表、ピアナルト米クリーブランド地区連銀総裁の講演、プロッサー米フィラデルフィア地区連銀総裁の講演、13日の豪9月雇用統計、韓国中銀金融政策決定会合、英8月貿易収支、米8月貿易収支、米新規失業保険申請件数、プロッサー米フィラデルフィア地区連銀総裁の講演、コチャラコタ米ミネアポリス地区連銀総裁の講演、14日の中国9月PPI・CPI、シンガポール金融政策声明、シンガポール第3四半期GDP、ユーロ圏8月貿易収支、ユーロ圏9月消費者物価指数改定値、米8月企業在庫、米9月輸出入物価、米9月小売売上高、米10月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値、G20財務相・中央銀行総裁会議(~15日)、17日のEU首脳会議(~18日)などがあるだろう。なお、台湾は10日が休場、米国は10日がコロンブスデーで債券市場が休場、ブラジルは12日が休場となる。
また米主要企業の7~9月期決算発表については、11日にアルコア、12日にペプシコ、13日にJPモルガン・チェース、グーグル、18日にはIBM、アップル、インテル、ヤフー、ゴールドマン・サックス、バンク・オブ・アメリカなどが予定されている。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
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