同友会・長谷川代表幹事「ドル高、電力不足」からの打開策を語る

2011年8月4日 10:54

■「霞ヶ関発・兜町着」直行便

  為替相場が1ドル77円台という円高水準を続け、電力不足への懸念も深刻さを増す日本経済。この厳しい環境を経済界はどう受け止めているのか。いまや経済界きっての「論客」となった経済同友会の長谷川閑史代表幹事は、先月末、記者会見で次のように発言した。

  1. 産業界では五重苦や七重苦(円高、FTA、労働規制、法人税等の税制、電力の安定供給および電力コスト、温室効果ガス25%削減)などと言われており、(日本企業にとって国際競争力上の経営環境が)タフな状況にあることは事実である。(震災被害からの)サプライチェーンの復活など少し明るい兆しが見えてきたと思っているところに、急な円高が進むことは懸念材料である。ファンダメンタルズを比較すれば日本が必ずしも良い状態であるわけではないにもかかわらず、今や国際的には自国通貨の価値を低くすることによって経済を刺激する傾向が見られ、日本が蚊帳の外で円の独歩高が進むことを懸念している。日銀はタイミングを見て必要な措置を取っていただきたい。

  2.節電問題は個々の会社によって事情は違うが、影響は大きいと言わざるを得ない。特に、震災を受けて、生産拠点の東日本から西日本へのシフトを実行、あるいは検討している企業では、関電エリアも節電となると極めて対応が難しい。今年度は如何ともしがたいだろうが、来年以降を考えた場合、当面は原発の再稼動ということになると思うが、政府から明確な解決策が早急に示されない限り、国際競争の中で生き残っていくためには海外へのシフトを考えざるを得ないという状況がますます強まってくる。企業はそういった事態も想定して相当準備をし、できるものは備蓄生産をするなどの対応をしているので、ある程度は乗り切れると思うが、このような状況が再度出てくるということは、企業にとって更なる海外シフトを考えざるを得ない要因にはなるだろう。

  3.円高進行の深刻さや電力不足による海外への生産シフトについては、それほど簡単に海外に出ることができるのか。工場を移転するにしても人員の確保にもある程度の時間がかかるし、受入国の電力供給が確保できるかという懸念もある。来年は(安全性を確保した上で原発を)再稼動してでも、今年よりは電力供給を改善することを政府として明確にしていただければ、そう簡単に海外移転ができるわけではないので、抑制のファクターになると思う。ただ、それがないままに(電力不足が)何年続くか分からないという状況が長引けば長引くほど、数年がかりでも海外にシフトしていこうという判断を促進する材料になる。日本の状況を見て、電力の安定供給はもちろんのこと、法人税も数年間は大幅に割り引くなど(他国からの)具体的勧誘があると聞いている。国際競争の環境下に晒されていることを政府はよく認識した上でお考えいただきたい。

  長谷川発言は、四方八方に目の行き届いた、的確な経済情勢分析と見通しであるといえよう。政治と行政が機能を失い、この経済の非常時になんら有効な政策手段を発揮できていない中、経済人のこの判断と知見が、「菅以後」のステージで存分に生かされることを期待したいものである。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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