白川総裁:震災で経済活動への影響必至も、7~9月期以降にはGDPプラス転換

2011年4月15日 12:40

 日本銀行の白川方明総裁は14日、ニューヨーク市内で講演し、東日本大震災が日本経済に与える影響について「短期的には、供給能力への打撃から生産を中心に経済活動に大きな影響が及ぶことは必至」だが、7~9月期以降にはGDP成長率は再びプラスに転じるという見方が民間エコノミストの大勢を占めると指摘した。

 日銀が公表した発言要旨によると、白川総裁は日本経済に影響が及ぶ主因として以下の3点を指摘。 
(1)地震の規模が大きく、地域的にも被害が広範に及んでいることに加え、原子力発電所の問題も生じていること。
(2)被災地の工場で生産されている代替可能性の低い部品や素材がサプライチェーンに組み込まれており、その影響が大きいこと。
(3)発電設備が大きく毀損し、需要期の夏場には東京電力管内で電力が再び不足すると見込まれていること。

 これらを踏まえ、1995年の阪神淡路大震災の場合は、実質GDPは減少しなかったが「今回の震災についてはより生産活動への影響は大きいと考えている」とした。

 一方で、同総裁は、ボトルネックとなった部品や素材については復旧の進展や国内の他工場で代替生産の動きが見られること、電力需給については夏場のピーク需要時の使用量削減に向けた対策の準備が進んでいること、復興需要が今後生まれてくることなどを指摘。民間エコノミストの間ではこのような要素を考慮して「第3四半期(7~9月期)以降、GDP成長率は再びプラスに転じる」という見方が多数説になっていると述べた。

 また、震災で特定地域、特定企業へのリスクの集中が意識されるようになったことからコンピューター・センターや物流拠点などの新たな投資を生む可能性があるとの見方も示した。

 日本経済の復興に向けた課題としては、震災発生以前からの課題として「潜在成長率引き上げの努力」だと指摘。生産年齢人口の減少を背景に、労働参加率の引き上げ、生産性向上の努力の重要性が増しており、「潜在成長率を引き上げていく取組みが、これまで以上に重要だ」と説明した。

 復興に必要な資金繰りついては、経常収支の黒字が続いていることからマクロ的にファイナンスが難しい状態ではなく、対外純資産が名目GDPの57%にあたる2.9兆ドルという世界最大の債権国であることから外貨の資金繰り能力も「非常に頑健」で、民間金融機関も「復興の資金需要の増加に十分応えられる状況にある」とした。

 同総裁は、「日本経済は現在の厳しい試練を乗り越えて必ず復興を成し遂げ、より成長力のある経済を作り上げることができると確信している」として講演を締めくくった。

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