人も相場も体力の有無が勝負=犬丸正寛の相場格言

2011年2月28日 11:01

■人も相場も体力の有無が勝負

  体力があれば、風邪を引いてもすぐ治ります。深酒をしても次の日まで持ち越すことはありません。しかし、歳をとって体力が衰えてくると、免疫力が低下して、感染症などに罹りやすくなります。生物はつまるところウイルスとの戦いのようなところがあります。赤ちゃんの肌は張りがあって、水滴を弾き返すように少々のウイルスは追い払っているはずです。内臓も皮膚の一種ですから、若いうちは組織に抵抗力があって外敵から細胞を守ってくれます。残念ながら、歳をとると肌に、それもシワの中で水滴は張り付いたままです。

  株式マーケットも生き物のようなものです。人間と同じように歳をとります。東京証券取引所が戦後、再開された1949年(昭和24年、初立会い5月16日)から、人でいえば還暦を過ぎ62歳です。決して若くはありません。戦後は、育ち盛りの子供のように、企業は作れば、いくらでも売れる時代でした。しかし、食べる量はめっきり減り、ちょっと風邪を引くと肺炎になってしまう心配さえあります。歳をとっているのです。

  もちろん、マーケット参加者には年配者ばかりではなく若い人もいます。しかし、残念ながら投資資金がある主役は年配者です。しかも、もう一方の資本主義のメインプレーヤーである企業も歳をとっています。戦後の頃から比べると売り上げは大きくなったかわりに資本金も大きくなって動きは緩慢で重くなっています。メタボも目立ちます。反面、このような年配者を見ているためか、若い人にも、若い企業にも元気がありません。IPO(株式公開企業)は数えるほどです。

  日本は2003年当時、バブル崩壊で危篤状態に陥りました。なんとか、政府資金のカンフル剤と緊急手術で乗り越えました。08年のリーマンショックも新興国輸出というカンフル剤に支えられて持ちこたえることができました、しかし、本当に体力が回復しているかは疑問です。ここ数年のマーケットが、もたついているのは体力不足が目立つからです。

  長期的観点で将来の日本を担う子供たちを支援することは国の体力を向上させるために非常に大切です。同時に日本が資本主義で歩んで行く以上は、プレーヤーである企業が体力を向上させることに国をあげて取組まないといけません。そうでないと、もうカンフル剤はないのです。(執筆者:犬丸正寛 株式評論家・日本インタビュ新聞社代表)

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