武田科学振興財団、「2017年度 武田医学賞」受賞者を発表~11月13日(月)ホテルオークラ東京にて贈呈式を開催~

プレスリリース発表元企業:公益財団法人 武田科学振興財団

配信日時: 2017-09-21 11:00:00

木下 タロウ 博士

小川 誠司 博士

公益財団法人 武田科学振興財団(理事長 飯澤 祐史:所在地 大阪市中央区)は、このほど「2017年度 武田医学賞」を下記の2氏に贈呈することを決定しました。
受賞者には、賞状、賞牌・盾のほか一件につき1,500万円の副賞が贈呈されます。なお、贈呈式は、11月13日(月)午後6時よりホテルオークラ東京において行います。
「武田医学賞」は、医学界で顕著な業績を挙げ、医学ならびに医療に優れた貢献を果たされた学者・研究者に贈呈されるもので、1954年に武田薬品工業株式会社の創業170周年記念事業の一つとして設けられ、1963年 当財団の設立と同時に継承され今日に至っています。
今年で61回目を迎える「武田医学賞」の受賞者総数は、本年度を含めて126名となります。


■木下 タロウ 博士(きのした たろう)
大阪大学 寄附研究部門 教授(65歳)
受賞テーマ:「タンパク質GPIアンカーの生合成と欠損症」

■小川 誠司 博士(おがわ せいし)
京都大学 教授(55歳)
受賞テーマ:「成人T細胞白血病の分子基盤とがんの免疫回避に関わる新たなメカニズムに関する研究」


■木下 タロウ 博士 略歴
<学歴・職歴>
1974年 3月 東京大学農学部 卒業
1977年 3月 東京大学大学院農学系研究科 修士課程修了 農学修士号取得
1981年 3月 大阪大学大学院医学研究科 博士課程修了 医学博士号取得
1981年 4月 日本学術振興会奨励研究員(大阪大学医学部)
1982年 2月 大阪大学医学部助手(細菌学教室)
(1982年8月~1985年8月 ニューヨーク大学医学部にて海外研修)
1988年 4月 大阪大学医学部講師(細菌学教室)
1990年10月 大阪大学微生物病研究所教授(免疫不全疾患研究分野)
1998年 7月 大阪大学遺伝情報実験施設長
2001年11月 大阪大学評議員
2002年 4月 大阪大学総長補佐
2003年10月 大阪大学微生物病研究所所長
2007年11月 大阪大学免疫学フロンティア研究センター副拠点長、
教授(糖鎖免疫学研究室)
2008年 4月 大阪大学総長補佐
2017年 4月~大阪大学微生物病研究所寄附研究部門教授
(籔本難病解明寄附研究部門)

<賞罰>
2001年 第19回大阪科学賞
2010年 文部科学大臣表彰(科学技術賞:研究部門)
2015年 International Glycoconjugate Organization (IGO) Award 2015


■木下 タロウ 博士 研究業績
<受賞テーマ:タンパク質GPIアンカーの生合成と欠損症>
ヒトの様々な細胞の表面には数千種類のタンパク質があり、細胞間あるいは細胞と周囲の環境との相互作用に働いている。そのうちの150種類以上のタンパク質は、GPIアンカー型タンパク質である。これらはグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)と呼ばれる糖脂質によって細胞膜に結合している。GPIアンカー型タンパク質の中には、病原微生物を破壊する補体の作用から自身の細胞を保護する補体制御因子などが含まれている。
木下博士はタンパク質GPIアンカーが生合成されるメカニズムを解明し、その基盤的研究の成果に立脚し、補体の自己・非自己識別機構の解明、その破綻を来す発作性夜間ヘモグロビン尿症の病態解明、先天性GPIアンカー欠損症の発見と疾患概念の確立、自己炎症を伴う新たな発作性夜間ヘモグロビン尿症症候群の発見、抗補体薬の治療への応用に関する貢献、病原性トリパノソーマにおけるGPIアンカーの機能解明などの研究を展開し、GPIアンカーの生理的・病理的意義を明らかにした。


■小川 誠司 博士 略歴
<学歴・職歴>
1988年 3月 東京大学医学部医学科卒業
1988年 6月 東京大学医学部附属病院 内科研修医
1992年 3月 東京大学大学院医学研究臨床第一医学専攻卒業
1993年 4月 東京大学医学部附属病院 非常勤医員
1996年 2月 日本学術振興会特別研究員
1997年 4月 東京大学医学部附属病院 第三内科 助手
2002年 9月 造血再生医療寄付講座 特任准教授
2006年10月 21世紀COEプログラム 特任准教授
2008年 4月 東京大学がんゲノミクスプロジェクト 特任准教授
2013年 4月 京都大学大学院医学研究科 教授
2015年 7月 スウェーデン カロリンスカ研究所 客員教授 兼任

<賞罰>
1996年度 ベルツ賞(共同受賞)
1997年度 日本癌学会奨励賞
2010年度 日本癌学会Mauverney賞
2012年度 2012年ナイスステップ研究者
2013年度 日本血液学会賞
2013年度 日本医師会医学賞
2014年度 佐川特別賞
2014年度 持田記念学術賞
2016年度 高松宮妃癌研究基金学術賞
2016年度 上原賞


■小川 誠司 博士 研究業績
<受賞テーマ:成人T細胞白血病の分子基盤とがんの免疫回避に関わるメカニズムに関する研究>
成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)は、我が国を主要な流行地域の一つとするHuman T-cell leukemia virus type-1(HTLV-1)の感染によって発症する高度に難治性のT細胞腫瘍である。しかし、HTLV-1感染のみではATLの発症に至ることはなく、従来、乳児期の初感染からATLの発症にいたる数十年の間に感染T細胞に蓄積するゲノム変異がATLの発症に必須の役割を担うことが示唆されてきたが、具体的な変異標的についての知見に乏しく、その解明が待たれていた。
小川博士らは、300例を超えるATLのコホートについて、全ゲノムシーケンスを含む、統合的なゲノム解析を行うことにより、T細胞受容体/NFκBシグナル経路(PLCγ1、PKCβ、CARD11、RHOA、IRF1、CD28/CTLA4等)やT細胞分化に関わる一群の転写因子(IKZF2、GATA3、TBL1XR1等)、G蛋白共役受容体(CCR4、CCR7、GPR183)や、エピジェネシス制御因子、細胞周期やDNA修復に関わる遺伝子など、少なくとも50以上の遺伝子群が、系統的に体細胞性変異を生じていることを明らかにした。
本研究は、HTLV1の発見以来、ATLの病態解明に関するもっとも重要な成果であって、これまで殆ど不明であったATLにおける遺伝子変異の全体像が一挙に解明されたことにより、ATLの分子病態の解明が大きく前進するとともに、PCLγ1、PKCβを含む、主要な変異分子を標的とする分子創薬の端緒が開かれた。一方、ATLの網羅的ゲノム解析を契機として見いだされたPD-L1遺伝子の構造異常とこれによるがん免疫回避のメカニズムの解明も注目に値する。
すなわち、同氏らは、PD-L1遺伝子の3’-UTRを含む構造異常がATLの約1/4の症例で生じており、これによってPD-L1の顕著な発現上昇が誘発されること、これによる免疫監視機構からの回避がATLの発症に決定的な役割を担っていること、また、同様のメカニズムは、ATLのみならず、他の悪性リンパ腫や固形腫瘍においても広く認められること、さらに、これらの異常を有する腫瘍の増殖がチェックポイント阻害剤によって抑制されることを明らかにした。
同研究によって、その3’-UTRを介したPD-L1の新たな発現調節機構が見いだされたことは、PD-L1を介したがんの免疫回避のメカニズムの解明に新たな視点を提供するのみならず、3’-UTRを含む構造異常は、チェックポイント阻害剤が著効すると期待されるがん患者を同定するための有用なバイオマーカーとなる可能性が示唆されており、がん免疫研究に大きく貢献した。


■FAQ
Q.武田医学賞は国際賞ですか
A.武田医学賞は日本人研究者を対象に贈呈しております。国際賞ではありません。

Q.武田医学賞の選考方法は
A.財団の理事・評議員等の推薦をもとに、選考委員会で審議・決定いたします。選考委員長は岸本 忠三 先生(元大阪大学 総長)にお願いしています。その他の選考委員については公表を控えさせていただいております。

Q.武田医学賞の起源について教えてください。
A.1954年:武田薬品工業株式会社の創業170周年記念事業の一つとして
和敬翁(五代 武田 長兵衞氏)の発意を受け、
六代 武田 長兵衞氏により武田医学賞の褒賞事業が始まる。
1963年:武田科学振興財団設立
武田医学賞を武田薬品工業株式会社から当財団に移管

Q.武田科学振興財団の財源は?
A.1963年財団設立以来の武田薬品工業株式会社の寄附金、および1980年、武田 彰郎氏(当時武田薬品工業株式会社副社長)の遺志により寄贈を受けた同社株式の配当金が基盤になっています。当財団は同社株式の2.27%を保有する第5位の株主です(2017年3月末現在)。詳細につきましては武田科学振興財団ウェブサイトをご覧ください。
( http://www.takeda-sci.or.jp/ )


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