債券下落、保険会社は窮地か?

2025年5月30日 09:55

印刷

●生保会社が債券下落で含み損

 東京海上ホールディングス(HD)、SOMPOHD、かんぽ生命などの生保・損保株が、一時軟調となっている。

【こちらも】米国債格下げが株式市場に与える影響は?

 ブルームバーグは5月26日、国内大手生命保険4社が保有する国内債券の含め損が、合計で8兆5450億円にまで膨れ上がり、前年から約4.2倍に拡大していると報じた。明治安田生命は1兆3858億円で、前年から約8.6倍と大きく拡大している。

 損害保険大手3グループは2026年3月期、政策保有株の売却益の減少などを背景に、2社が減益を見込んでいる。25年3月期は、政策保有株売却による利益が大きかったことへの反動もある。

 日本の保険会社は、多くの米国債や国内債を保有しており、債券価格に影響を受けやすい。

 4月にはトランプ関税の影響で国債が売られる場面があり、日銀の利上げも予想される中、今後も保険会社は影響を受けるのだろうか?

●保険会社と国債の関係

 2023年1月、生損保各社は前年12月のYCC(イールドカーブコントロール)修正を受け、超長期国債の売り越しに転じた。

 生命保険会社は期間の長い保険商品を販売しており、円建て商品が多く、集めた保険料で国内の公社債や株式で運用する。金利リスクを減らすために償還期間の長い債券が主な運用資産となる。

 利上げとなると債券価格が下落するため、保険会社は債券の含み損が増加する。金利上昇により、新たに販売される貯蓄性の生命保険の保険料が安くなるため、既存の保険の解約が増える可能性がある。

●今後も保険会社は苦境が続くのか?

 5月にフィッチが米国債の格付けを格下げするなど、トランプ関税への不透明感が国債への不信感を招いている。

 インフレや人件費の高騰が続いており、保険料も見直さざるを得ない状況である。

 30年債、40年債の超長期金利の国債利回りは過去最高を記録。基本的に債権は満期まで保有することが前提であり、売却しない限りは実損にはならない。

 5月29日には、米連邦裁がトランプ関税の一部差し止め命令を出したことが好感され、株価全体が上昇、生損保各社株も上昇した。

 トランプ関税は一時期の混乱からは落ち着きを見せている。ただ、トランプ関税のリスクが後退すれば、日銀の利上げが意識される。

 同じ金融株の銀行株ほどの期待感はないだろう。(記事:森泰隆・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事