続々と登場する車の新機構、普及するまでにある不都合にも注目を

2023年1月20日 11:00

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参考画像提供:国土交通省

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 ロボット博士の古田貴之氏(ロボット技術研究センター所長)が、黒柳徹子さんの番組で「最新技術で切り開く“未来”」との興味深い話をされた。その中で車椅子と一緒に置かれていて、デモンストレーションをした8輪のロボットで、縦横に動くものがあった。

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 対談の中で、「縦列駐車」も、真横にスライドして簡単に出来る様な話が出ていた。しかし将来展望に関しては、全く異論は無いが、現場を知る人間からは、この機構の搭載は「ちょっと待って欲しい」と思った。

 思い出したのは、導入初期にあったABS装着車の被災事故の話である。

●ABS装着車の被災事故

 ABS=アンチロック・ブレーキシステム(Anti-lock Brake System)は、急ブレーキをかけた際に、思い切り床まで踏み込んでもブレーキがロックしてそのまま滑って行く様な事態を防いで、制動距離を縮める効果が絶大だ。

 ABSが登場する以前は、「チョンチョン・ブレーキ(ポンピングブレーキ)」とか言って、運転に慣れたドライバーは、急ブレーキをかけてタイヤがロックする直前で少し緩めて、再度踏み込む動作で出来るだけタイヤのグリップ面がロックして空走するのを防ぐドライブテクニックを用いていた。

 未だABS装着車が極めて少なかった頃、北海道の幹線道路をドライブしていた際に知人が遭遇した被災事故の話。

 後方にダンプトラックが追従していたが、それなりの車間距離もあり順調に走っていた。ところがそんなに直近では無かったが、側道から唐突にトラクターが合流して来たので、咄嗟に急ブレーキをかけたところ、後方のダンプに追突された。

 追突して来たダンプの運転手が、「普通の車なら、そんなにギリギリで無くて止まれたはずだが、想像していた制動距離よりも、大きく手前で停車したので当たってしまった」との話だった由。

 つまりABSが普及していれば、相互の制動距離も同じくらいだが、知人のABS装備車の制動距離が、当時の平均的な制動距離より相当短かったのが原因だった。

 現在では殆どの車には装備されているABSも、その仕組みと働きを正しく認識しておく必要がある。

 例えばABSが作動すると、ブレーキペダルが細かく振動したり、「グググ」という音が出ることがあるが、故障では無いので、そのまま強く踏み続けなければならない。

 詳しくは国土交通省の自動車総合安全情報というページに、ABSの働きとその効果として掲載されている。(参考画像提供:国土交通省)

●横移動して縦列駐車すると

 縦列駐車が不得意だと言う人は、少なからずいる。駐車中の車が2台あり、その間に駐めるには、間隔が短いと結構苦労する。

 だがその場合は、運転の上手下手によっては、その場所に駐車するのを諦めて他所へ行く場面もある。間に入られた前後の車も、何とか切り返し回数が余計にかかっても、出られるはずだ。

 だが真横にスライドする機構を備えた車が、ギリギリの間隔だけ残して駐車した場合、戻って来た前後の車のドライバーは、同様の機構を備えた車で無い限り出すことが出来なくなる。

 殆どの車に、真横に移動する機構が備えられたら、前後の車も真横にスライドして離脱すれば良い。だがそんな時代が来るまでは、適度な前後間隔がとれないスペースに駐車される側の迷惑も考えて、普及ペースを考慮しておいて欲しいものだ。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る

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