相場展望11月24日号 米国経済指標は、景気後退入りを示唆 日本株は、「過熱感」台頭に留意

2022年11月24日 09:26

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)11/21、NYダウ▲45ドル安、33,700ドル(日経新聞より抜粋
  ・中国での新型コロナ感染拡大を背景に石油株やハイテク株の一角が売られた。ただ、経営幹部の交代を発表したディズニーが買われ、NYダウを支えた。
  ・中国で新型コロナの新規感染者数が増え、一部主要都市でロックダウン(都市封鎖)を実施したと伝わった。中国で経済活動が鈍るとの観測から、米原油先物相場が大きく下げ、一時1バレル75ドル台と期近物として1月以来の安値を付けた。採算悪化への懸念からシェブロンなど石油株が幅広く売られた。
  ・投資家のリスク回避姿勢も誘い、ハイテク株の一角やテスラも下げた。
  ・セールスフォース・アップル・インテルが下洛、ビザ・ナイキなど消費関連も安い。一方、ディズニーは、アイガー氏のCEO復帰を発表し業績改善期待で+6%高。ウォルグリーン・コカコーラなど業績が景気の影響を受けにくいディフェンシブ株が買われたのが相場を支え、一時+100ドル超上げる場面もあった。

【前回は】相場展望11月21日号 露原油の価格制限、滞留資金で株価反発もあり 先回り買いで、年末ラリーは期待薄か?

 2)11/22、NYダウ+397ドル高、34,098ドル(日経新聞より抜粋
  ・米長期金利の低下で相対的な割高感が薄れ、相場を押し上げ、8月中旬以来の高値。
  ・小売企業で予想を上回る決算発表が相次ぎ、年末商戦は堅調との見方から消費関連が買われ相場を押し上げた。ベストバイ、ナイキ、ホームデポなどの上げが目立った。
  ・米連邦準備理事会(FRB)がタカ派姿勢を和らげるとの観測から、米長期金利が3.75%と前日終値3.82%から低下した。ハイテクのセールスフォースやアップルが上昇。
  ・前日に年初来安値に迫った米原油先物相場が一時+3%近く上げ、シェブロンが上昇。
  ・11/24は感謝祭の祝日で株式市場は休場となるため、前倒しで休暇に入った市場関係者も多く、「取引量が通常よりも少なく、少量取引でも値幅が大きくなりやすかったこともNYダウを押し上げた」との指摘もあった。
 
 3)11/23、NYダウ+95ドル高、34,194ドル(日経新聞より抜粋
  ・11月開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨で、多くの参加者が利上げ減速を支持していることが分かった。そのため、金融引締めへの警戒感が後退し、買い優勢となった。
  ・反面、NYダウは8月以来の高値圏にあり、上値は重い。
  ・議事要旨によると、「かなりの大部分」の参加者が「利上げペースの減速が、間もなく適切になる」と判断したという。事前のほぼ予想通りの内容だが、12月のFOMCでの利上げ幅が+0.50%に縮まるとの見方が改めて意識された。
  ・長期金利が3.70%程度に低下(前日3.76%)し、金利低下局面で買われやすいハイテク株が上昇。セールスフォース・マイクロソフト・ディズニーが高い。

●2.米国株:米経済指標は、米国経済のリセッション(景気後退)入りを示唆か

 1)米11月製造業PMIは47.6と、10月50.4から予想外に景気判断を下回る50割れ。米サービス業PMIも46.1と、5カ月連続の50割れ。予想48.0・10月48.2。総合PMIも46.3と予想48.0を下回り、5カ月連続で50割れ。10月48.2。

 2)米製造業の落込みで景気後退懸念が強まり、FRBの大幅利上げ幅の縮小を予想する。

 3)ただ、米10月住宅販売件数は63.2万戸と、予想57.0・9月60.3万戸を上回った。

 4)なお、インフレに関してFOMC議事要旨は、「引続き上方に傾斜」と指摘。インフレ率は、依然として高水準圏で推移すると観測している。

 5)11月FOMC議事要旨の「金利上昇幅の縮小」を受けて、金利は低下し、株式相場は好感し、ハイテク銘柄を牽引役に株価は上昇した。11/23市況:前日比、NYダウ+0.28%高、ナスダック総合+0.99%高。SP500+0.59%高。最近の株式相場は、「楽観論が支配を継続」しており、(1)インフレ率の高値圏推移と(2)景気後退観測から、焦点を外している傾向にあり注意したい。

●3.11月FOMC議事要旨、大多数が「利上げペース減速が近いうちに適切」と判断(読売新聞)

●4.OECD、世界経済は来年の景気後退回避の見込み、経済危機で欧州が最打撃(ロイターより抜粋

 1)多くの国でインフレは鈍化するが、依然、高水準というのが中心のシナリオ

 2)経済成長率予想  2022年 2023年 2024年
     世界     +3.1%  +2.2  +2.7
     ユーロ圏   +3.3   +0.5  +1.4
     米国     +1.8   +0.5  +1.0
     中国     +3.3   +4.6  +4.1

●5.株式の弱気相場は2023年になっても続く見込み(ブルームバーグより抜粋

 1)ゴールドマン・サックス
  ・2023年は今年より良い年になると期待する投資家は失望するだろうと予想した。弱気相場は終わっていない。
  ・株式相場の底を示す状態にはまだ至っていない。目先は下方向の公算が大きい。金利ピークと景気後退を反映したPER(株価収益率)の低下が起こる必要がある。2023年末のSP500は4,000と予想。これは11/18終値を+0.9%上回るに過ぎない

 2)モルガン・スタンレー
  ・来年1~3月にSP500が3,000まで、大幅下落するなど荒い動きを予想。
  ・企業利益へのリスクはまだ織込まれていない。これが新たな安値に導くだろう。

●6.FRB、早ければ来年11月に初回利下げも=格付け会社ムーディーズ(ロイターより抜粋

 1)早ければ2023年11月に初回の▲0.25%~▲0.50%の利下げに踏み切る可能性。その後は、2025年に中立的な政策スタンスにシフトする可能性を予想。
 
 2)インフレは2023~2024年にかけ、総合とコア指数がともに低下する見通しとした。
 
 3)米消費者の購買意欲の減退に伴い、経済活動が弱まる兆候は増大すると指摘。需要が冷え込む中、小売業者が値上げに動くことは一層困難となり、過度の利益率縮小の回避に向けコスト削減が優先されると見込んだ。

●7.米HP、最大6,000人の雇用削減計画、PC需要低下で業績悪化見通し(ブルームバーグ)

●8.暗号資産ジェネシス、資金調達できなければ破産申告すると警告(フィスコ)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)11/21、上海総合▲12安、3,085(亜州リサーチより抜粋
  ・中国経済活動の停滞が不安視される流れとなった。
  ・国内の新型コロナ感染数は連日で2万人を超え、北京市で約半年ぶりに感染者が死亡する中、複数の地域でコロナ防疫措置が強化された。共産党機関誌「人民日報」は連日で、「ゼロコロナ」政策の堅持を強調。経済市場化の遅れも懸念された。
  ・人民元安の進行もマイナス材料。中国人民銀行(中央銀行)は、人民元レートを3日連続で元安方向へと設定した。米金融引締めの長期化観測が根強く、為替市場でも元安で推移している。
  ・銀行貸出しの指標となる最優遇貸出金利は据え置かれた。政策金利は3.65%。
  ・業種別では、消費関連の下げが目立ち、不動産も安い。発電・電力設備は高い。
 
 2)11/22、上海総合+3高、3,088(亜州リサーチより抜粋
  ・中国経済対策の動きが相場を支える流れとなった。
  ・中国人民銀行(中央銀行)と中国銀行保険監督管理委員会(銀保監会)は11/21、インフラ投資支援のため、中長期融資を拡大するよう国内銀行に要請した。ただ、指数は安く推移する場面もみられた。
  ・新型コロナの新規感染者が国内で急増する中、複数地域でロックダウン(都市封鎖)が導入された。早期のリオープン(経済再開)に対する期待が後退している。
  ・業種別では、ゼネコンの上昇が目立ち、金融・エネルギーが高い。医薬品は安い。

 3)11/23、上海総合+7高、3,096(亜州リサーチより抜粋
  ・前日の好地合を継ぐ流れとなった。
  ・当局の景気テコ入れ策に対する期待感が引続き支えになっている。
  ・米長期金利の低下や、原油相場の上昇も相場を後押しした。
  ・ただ、指数は安く推移する場面もみられた。
  ・止まらない新型コロナ感染拡大がネガティブだ。感染者が増加した地域では行動抑制が強化され、経済活動の停滞が危惧されている。早期のリオープン(経済再開)に対する期待も後退した。
  ・インフラ投資支援のため、金融当局は11/21、銀行に中長期融資拡大を要請した。
  ・業種別では、ゼネコン・電力設備などインフレ関連の上げが目立ち、医薬品が安い。
 

●2.中国国有銀行の中国交通銀行、不動産大手の万科に140億ドルの融資枠(ロイター)

●3.中国、追加の金融緩和を示唆、経済先行きに危機感(共同通信)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)11/21、日経平均+45円高、27,944円(日経新聞より抜粋
  ・今週は日米共に休場日を挟むため、積極的に持ち高を傾ける動きが出にくい中、持ち高調整の買いが優勢となり、節目の28,000円を上回る場面もあった。
  ・著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる米投資会社バークシャーの子会社を通じた買い増しが明らかになった商社株の上昇も相場を支えた。
  ・中国の新型コロナ感染拡大への懸念から香港株が大きく値下がりし、日本株の重荷になった。また、28,000円を上回る水準では上値の重さから、利益確定売りを促した。
  ・りそな・帝人・サッポロが上昇、SOMPOが大きく下げ、東海カ・川重も下落した。

 2)11/22、日経平均+170円高、28,115円(日経新聞より抜粋
  ・円相場が141円台後半まで円安・ドル高になり、企業収益が改善するとの期待からトヨタなど輸出関連を中心に買い幅広い銘柄が買われ、一時+200円を超えた。
  ・ただ、上値は限られた。11/23は東京市場が「勤労感謝の日」で休場となる。米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨の公表を控え、午後は様子見となった。
  ・株価指数先物に短期取引の買いが入り、現物株買いに波及した面もあった。相場の流れに乗る商品投資顧問(CTA)や経済情勢などを考慮するグローバルマクロ戦略型のヘッジファンドが先物に買いを入れたとの指摘があった。一方、「国内外の中長期志向の機関投資家は大きく持ち高を掛け向ける動きは限られた」との声が出ていた。
  ・三菱自・SUBARUなど自動車株・丸紅・エーザイが高い。コナミ・アドテストが下落

 3)11/23、祝日「勤労感謝の日」で休場

●2.日本株:テクニカル指標の一部で「買われ過ぎ」が点灯

 1)騰落レシオ(11/22)は、「買われ過ぎ」を示唆
  ・騰落レシオ(25日)は124.52、(6日)は194.14と高水準。

 2)空売りは11/22に、「40.2」と売り方が少ないため、買い優勢となれば上昇しやすい環境となっている。

 3)ストキャスティクスは11/22、FASTが64、SLOWが62と、「過熱感はない」。

 4)本日11/24は、米国株上昇を受けて相場は上昇すると思われるが、朝方は買い優勢・後場は売り買い交錯する展開を予想する。

●3.企業動向

 1)マツダ   EV開発生産に約1.5兆円投資、電動化を加速(HNK)
 2)MS&AD  18%に当たる6,300人削減、2026年3月までに(共同通信)

●4.企業業績

 1)SOMPO  2023/3月期純利益+800億円、予想+1,600億円から下方修正(日経新聞)

■IV.注目銘柄(投資は、ご自身の責任でお願いします)

 ・4502 武田薬品   業績堅調。
 ・4543 テルモ     業績堅調。
 ・8591 オリックス   業績堅調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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