相場展望10月2日号 NYダウ、高値から▲20%超下落し、弱気相場入り 日経平均、▲15%超下落と、弱気相場入りに対して 踏ん張る

2022年10月3日 10:01

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)9/29、NYダウ▲458ドル安、29,225ドル(日経新聞より抜粋
  ・前日に急降下した米長期金利が再び上昇し、ハイテク株を中心に売りが広がった。
  ・世界的金融引締めが景気を冷やし、企業業績悪化の懸念も相場の重荷になった。
  ・9/29の米長期金利は3.7%台後半と前日終値3.73%を上回って推移した。前日は英イングランド銀行(中央銀行)が一時的に長期債を買い入れるとの発表を受け、米国でも長期金利が低下したが、1日で流れが反転した。米連邦準備理事会(FRB)が政策金利を大幅に引上げるとの見方は強く、金利低下は続かなかった。
  ・9/29発表の週間の米新規失業保険申請件数が19.3万件と、前週から▲1.6万件減り、市場予想21.5万件をも下回った。市場では「労働市場は底堅く、賃金上昇を受けインフレ観測が続く」と受け止められた。
  ・9/29発表のドイツの9月消費者物価指数(CPI)の伸びが加速し、欧州中央銀行(ECB)の大幅利上げ観測が強まったのも、米株相場の重荷となった。
  ・長期金利が上昇すると相対的な割高感が意識される高PER(株価収益率)のハイテク株が下げを主導した。テスラ▲7%安、AMD▲6%安が目立った。ドル高も海外売上高が高いハイテク企業の売りを誘い、アップルが▲5%安。
  ・市場では「FRBによるインフレ抑制に向けた仕事はまだ多く残っており、長期金利とドルの先高観が強い。米株相場を支えてきたアップルの連日の下げで市場心理が悪化しハイテク株の売りが勢いづいた」との声が聞かれた。
  ・景気敏感株が売られ、ボーイング▲6%安、ハネウェルやダウ、ナイキが安い。

【前回は】相場展望9月29日 NYダウ9/28の反発は一時的、金利引上げは継続 この反発局面は「利益確定売り」の好機

 2)9/30、NYダウ▲500ドル安、28,725ドル(日経新聞より抜粋
  ・世界の主要中央銀行による急速な金融引締めが景気を冷やし、企業収益を圧迫するとの懸念から幅広い銘柄に売りが出て、年初来安値を更新した。29,000ドルを割込むのは2020年11月以来の、2年ぶり。
  ・インフレ加速を示す米経済指標も相場の重荷だった。
  ・スポーツ用品のナイキが▲1割強下落し、NYダウの下げを主導した。大幅な減益決算と通期の売上高総利益率見通しの下方修正が嫌気された。
  ・アップルも、新型スマートフォンの需要低迷観測が重荷となり、続落した。
  ・米8月個人消費支出(PCE)物価指数は、エネルギーと食品を除くコア指数が前月比+0.6%上昇と、7月+0.0%から伸びが加速した。インフレの高止まりを警戒した売りも出た。

●2.米国株:米NYダウ29,000ドル割れで年初来安値、2年ぶりの新1番底の奈落へ

 米FRBは2023年も金利引上げ継続で、先が見えない状況に突入の可能性
 1)米国株の推移:6/17年初来安値を、9/30に割込み、新1番安に
        1/4     6/17   8/16   9/30    下落幅   下落率
  NYダウ  36,799ドル 29,888  34,152  28,725  1/4比▲8,074、▲21.94%
  SP500 (12/27)4,791  3,660   4,305  3,585 12/27比▲1,206、▲25.17%

 2)SP500は9/30、前日比▲54安の3,585と、連日で年初来安値を更新した。ハイテク比率の高いナスダック総合指数も続落し、前日比▲161安の10,575で終え、6/16につけた 年初来安値10,646を下回った。

 3)金利上昇が2023年も継続予想のため、株式は全面安が続く可能性
  ・米国のインフレ抑制は、労働需給の逼迫による賃金上昇がサービス価格高騰を引き起こしているため困難が予想される。
  ・さらに、英国トラス首相の大規模減税政策が金融市場混乱の発端となり、米国金利の上昇にも波及している。英イングランド銀行(中央銀行)は、英国債の無制限買入措置(9/28~10/14)で、英株式・債券・為替市場の動揺の鎮静化を図っているが、見極めが必要と思われる。
  ・米金利上昇は、米国内事情に加えて、英金融市場の影響も受け、2023年も避けられないと思われる。

 4)米国内の金利上昇の背景
  ・セントルイス連銀のブラード総裁発言「利上げ継続について、市場は正しく解釈している」。クリーブランド連銀メスター総裁発言「政策金利の上昇はまだ続く」。このFRB高官の発言もあって、「金利上昇を背景に、株式相場は全面安の展開」となった。
  ・このような背景からしても、米国内の金利上昇は2023年も継続する見込となり、米株式相場は「金利上昇に対して割高」と見られやすいため、米株式の新1番底形成に、注意が必要と思われる。

●3.アップル株が下落、BofAが投資判断を引下げ、優位性危ういと指摘(ブルームバーグより抜粋

 1)アップルのサービス需要は既に減速、商品需要もそれに続く可能性。

 2)海外売上高比率が高いため、ドル高による圧力で厳しさは増す一方だと、指摘した。

●4.米8月コアPCE価格指数は前年比+4.9%上昇、予想・7月の+4.7%を上回る(フィスコ)

 1)個人消費支出(PCE)の上昇で、FRBの利上げを正当化した。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)9/29、上海総合▲3安、3,041(亜州リサーチより抜粋
  ・中国景気の先行き不安が投資家心理の重石となる流れとなった。国際機関や投資銀行は、中国GDP成長見通しの下方修正が相次いでいる。
  ・中国不動業を巡る不透明感も再燃した。上海を拠点とする不動産デベロッパーの旭輝HDにも債務不履行(デフォルト)観測が浮上した。不動産デベロッパーを巡っては、資金不足などにより建設工事が中断した未完成住宅や巨額債務の問題が不透明要因としてくすぶる状況にある。
  ・また、中国では9/30に、9月製造業PMIが公表される他、国慶節の祝日に伴う休場を10/3~7に控えている。これらが買い手控えの要因として意識された。
  ・人民元安の一服や、当局の景気テコ入れスタンスが相場の支えとなった。
  ・業種別では、不動産の下げが目立ち、銀行・空運が安い。医薬品はしっかり。

 2)9/30、上海総合▲16安、3,024(亜州リサーチより抜粋
  ・国慶節の祝日に伴い10/3~7は休場となるため、買いが手控えられる展開となった。
  ・欧米の金融引締め加速も懸念、高金利による世界的なリセッション(景気後退)も意識されたが、大きく売り込む動きは見られなかった。
  ・中国政府の景気テコ入れに対する期待感で、指数はプラス圏で推移する場面もあった。
  ・9月中国製造業PMIは50.1で着地、予想49.7・8月49.4から改善している。一方、非製造業PMIは50.6と、前月52.6から低下。
  ・業種別では、ハイテク関連の下げが目立ち、消費関連も安い。不動産は高い。

●2.中国、主要国有6銀行に不動産業界の支援を要請、840億ドル規模(ロイター)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)9/29、日経平均+248円高、26,422円(日経新聞より抜粋
  ・前日の欧米長期金利の低下や米株式相場の上昇を受けて、東京市場でも買い安心感が広がり、上げ幅は一時+280円を超えた。
  ・足元の相場の下げが急ピッチだったため、短期的な反発を狙った買いも入った。
  ・英イングランド銀行(中央銀行)は9/28、英国債の一時的な買い入れを発表した。欧州だけでなく米国でも長期金利が低下したことで、米株式市場では主要3指数が揃って上昇した。東京市場でも足元で下落していた主力株やグロース(成長)株に買い直しが入った。
  ・日経平均は9/28までの4営業日で▲1,000円超下落。テクニカル指標では、25日移動平均から下方乖離率が5.7%と、「売られ過ぎ」の目安とされる5%を上回っていたため、短期的な自律反発狙いの買いや売り方の買戻しが相場を支えた。
  ・今日は9月末の配当権利落ち日で、配当落ち分の223円程度、日経平均は下押した。
  ・エーザイがストップ高で比例配分され、ヤマハ・楽天・塩野義の上げが目立った。

 2)9/30、日経平均▲484円安、25,937円(日経新聞より抜粋
  ・前日の米株安で投資家心理が悪化し、日本株にも幅広い売りが強まり、節目の26,000円を下回り、7/1以来およそ3カ月ぶりの安値となった。
  ・世界的金融引締めが景気を冷やし、企業業績悪化につながるとの警戒感も重荷となった。
  ・米長期金利の再上昇を受け、前日の米株式市場ではハイテク株を中心に売りに押された。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は▲2%超下落し、東京市場にも売りが波及し、半導体関連株が大きく下げた。現物株では大型株の下落が目立った。
  ・市場では「海外機関投資家による日本株への売りが強かった」との声があった。
  ・四半期末のため国内機関投資家が新たな持ち高を構築しにくく、下値を拾う動きが限定的だったとの見方も出ていた。
  ・ファストリが大きく下げ日経平均を▲100円近く押し下げた。東エレク・アドテスト・ソニー・トヨタ・ホンダ・SUBARUなど自動車株も大きく下げた。第一三共・アステラスなど医薬品株の一角が上昇、イオン・高島屋も小幅に上げた。

●2.日本株:昨年高値からは下落率が▲15%程度で、米国株に比べて「底堅い」

 1)日経平均の推移
        2021/9/14  3/9  3/29  6/20  8/17  9/30  9/14比下落率
  ・日経平均  30,670円 24,717 28,252 25,771 29,222 25,937   ▲15.43%

 2)米国株は▲20%超下落し「弱気相場入り」したが、日本株は「弱気相場入りを前に、踏ん張る」状況。
  ・NYダウは最高値から▲21.94%下落。日経平均は▲15.43%の下落にとどまっている。

 3)テクニカル指標からは、「売られ過ぎ」のサインが出ており、自律反発の可能性がある。
  ・ストキャスティクスは、RSI 25、FAST 13、SLOW 10。
  ・騰落レシオも9/30で、(25日)80.76、(6日)が63.64。    
  ・VIX(恐怖)指数も、9/30で26.33と、投資家の不安心理を示す30以下にある。
  ・ただし、チャートでは下落途上にあり、自律反発の「アヤ戻し」となる可能性がある点に留意したい。 

●3.食品など値上げ、10月は6,699品目で今年最多、家計の負担が増大(NHK)

 1)今年1年間の値上げは再値上げ含めて20,665品目で、値上げ幅は平均14%。

●4.企業動向

 1)ニトリ    米国事業は収益改善難しく撤退、東・東南アジアへ再配置(TBS)
 2)積水ハウ   内装建材メーカー「マルホン」を買収し完全子会社(時事通信)
 3)コクヨ    「ぺんてる」の全保有株を「プラス」に売却(読売新聞)
          2019年に始まった争奪戦は終結

■IV.注目銘柄(投資は、ご自身の責任でお願いします)

 ・1332 日本水産    業績回復期待。
 ・4471 三洋化成    業績堅調。
 ・6201 豊田自動織機  業績堅調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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