【映画で学ぶ英語】『サンセット大通り』の映画史に残る名言

2022年9月30日 12:45

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 1950年に公開された映画『サンセット大通り』は、米映画界で1930年代から約半世紀にわたって活躍したビリー・ワイルダーの監督・脚本作。ハリウッドの高級住宅街・サンセット大通りの豪邸を舞台に、映画業界の光と影を描いたブラック・コメディ風のフィルム・ノワールだ。

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 今回はこの映画の結末の名セリフから、closeという基本的な単語の発音と意味を学習しよう。なお、この記事は映画のネタバレを含むため、未鑑賞の人は注意されたい。

■映画『サンセット大通り』のあらすじ

 ハリウッドの駆け出し脚本家・ジョーは、ある日借金取りに追われて、サンセット大通りにある荒れ果てた屋敷に逃げ込んだ。そこでは、サイレント映画時代の名女優・ノーマ・デズモンドが、謎めいた執事・マックスとともに、ひっそりと豪華な暮らしをしていた。

 ノーマは、自分が長年書き溜めた映画『サロメ』の脚本を完成させるため、彼をゴーストライターとして雇うことを申し出る。彼女は、この脚本を名監督・セシル・B・デミルにメガホンを握らせて製作し、自分は主役を演じて映画界に復帰するつもりだ。

 ジョーは乗り気でなかったが、広大な敷地の豪邸は借金取りの目を逃れるにはもってこいの場所なので、この話を引き受ける。

 脚本執筆に専念するということでジョーは、ノーマの屋敷に缶詰にされることになった。ところがノーマは、彼に仕事以外の面でも関心を示し始めることになる。

■映画『サンセット大通り』の名言

 大金持ちのノーマから、高価な服やアクセサリを山のようにプレゼントされ、「ママ活男子」のようになったジョー。だが、彼はノーマに隠れて映画会社の脚本部員・ベティと共同でオリジナルの脚本を執筆するうちに、ベティとの関係も深めていく。

 ノーマとベティの板挟みになったジョーは、ついに2人に真実を洗いざらい話して、ノーマの家から出ていこうとする。しかし、半狂乱になったノーマはジョーを拳銃で射殺してしまった。

 ハリウッドの一大スキャンダルを聞きつけて、詰めかけた報道陣。現実と妄想の区別がつかなくなったノーマは、ニュースのカメラも映画の撮影と勘違いして次のセリフを言う。

All right, Mr. DeMille, I’m ready for my close-up. - 「いいわよ、デミル監督。クロースアップの準備OK」

■表現解説

 写真や映画用語のclose-upは、日本では「クローズアップ」と表記されることが多い。しかしながら、英語の発音は「クロウスアップ」または「クロウサップ」という音に近い。これは、closeという単語が形容詞・副詞と、動詞・名詞とでは発音が異なるからである。

 Closeは「近い、接近した、親密な」という形容詞・副詞と並んで、「閉じる、終える、結末」といった動詞・名詞を表記するのに使われる。前者の発音は最後の子音sが濁らない「クロウス」で、後者の発音は濁る「クロウズ」であるが、文字にするとどちらも「close」になる。

 この発音をあべこべにすると、聞き手には別の意味になってしまう。文脈から言いたいことは伝わるかもしれないが、ちぐはぐな印象をあたえるので注意が必要だ。

 Close-upの場合、「近寄って撮影する」という意味なので、sは濁らないことは明白である。

 しかし、映画のタイトルなどで単に「Closer」と書かれている場合、内容から発音を決めなくてはならない。

 ジュリア・ロバーツ、ジュード・ロウ、ナタリー・ポートマンが共演した映画『クローサー(Closer)』。この映画は男女の「親密な」関係を描いているので、タイトルのsは濁らない。

 これに対して、刑事ドラマ『クローザー(The Closer)』は「事件を終わらせるもの」という意味なので、sは濁る。

 ちなみに野球では、リードして迎えた最終回に抑えで投入する救援投手を「クローザー」と言う。このsが濁るのも、「試合を終わらせる」という意味だからである。(記事:ベルリン・リポート・記事一覧を見る

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