相場展望7月7日 米景気後退近づく、「GDPナウ」「CRB指数」「逆イールド」  日本株、株式先物で外人買い手口がピークアウト、注意

2022年7月7日 09:34

印刷

■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)7/4、祝日「独立記念日」で休場

【前回は】相場展望7月4日 米国株のセリングクライマックスは、これから 日本株は7月上旬、ETF分配金確保の売りに注意

 2)7/5、NYダウ▲129ドル安、30,967ドル(日経新聞より抜粋
  ・欧州株式相場が下落した流れを受け、米景気が後退局面に入るとの懸念が強まり、資源や金融など景気敏感銘柄を中心に売りが広がり、一時▲700ドル超下落した。
  ・米原油先物相場が大幅安となり、一時97ドル/バレル台前半と4月下旬以来の安値。金や銅などの国際商品も軒並み下落した。
  ・米債券市場では、長期金利の指標となる10年債利回りが一時2.78%まで低下。利回りで10年債が2年債を下回る「逆イールド」が再び発生した。逆イールドは景気後退の予兆とされ、高インフレと米連邦制度理事会(FRB)による金融引締め加速で、「米景気後退を見込むリスク回避の取引が本格化してきた」との声があった。
  ・午後に、長期金利の低下を受け、金利上昇局面で売られた高PERのハイテクが買い直され、下げ幅を縮小した。
  ・石油のシェブロン、建機のキャタピラー、航空機のボーイングの下げが目立った。長短金利差の縮小で収益の逆風になりやすい金融も下げた。
 
 3)7/6、NYダウ+69ドル高、31,037ドル(フィスコより抜粋
  ・ISM非製造業景況指数やJOLT求人件数が予想を上回ったため景気後退懸念が緩和し上昇。しかし、6月開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)の6月議事要旨の公表を控えた警戒感で売りが強まり下落に転じた。その後、7/6に発表された議事要旨が、「景気を減速させてもインフレ抑制のための、  大幅な利上げ継続」姿勢を示したが、予想範囲内として米国株は買い直された。
  ・業種別では、半導体関連が上昇した一方で、エネルギー関連が下落した。

●2.米国株 :米景気後退が近づく、「GDPナウ」「商品先物CRB指数」「逆イールド」が示唆

 1)アトランタ連銀の「GDPナウ」は、米景気後退が近づくと示唆
  ・4~6月期の経済成長率を、6/30時点の前期比年率▲1.0%減から、7/1に▲2.1%減と更に引下げた。
  ・1~3月期に続き、2四半期連続のマイナス成長となれば、「景気後退」と看做される。

 2)国際商品先物のCRB指数は下落トレンド、景気後退を意識か。
  ・CRB指数の推移 6/9高値329.59⇒7/6安値276.13へ、高値から▲16.2%下落。チャートでは、今までの上昇支持線を下に抜け、明確に下落トレンド入りした。
  ・銅の先物価格も下落傾向にある。景気先行指標とされる銅は、2008年金融危機以来の大幅な下落となった。
    銅価格の推移 : 3/4高値493ドル⇒7/5安値341ドル  ▲30.8%安
    世界の銅需要の半分を占める中国の経済回復が懸念されるところでもある。

 3)「逆イールド」の発生は、景気後退の予兆
  ・中心的な「米10年債利回りと米2年債利回り」で、利回りの逆転「逆イールド」が7/5から2日連続で発生した。
  ・逆イールドの状況
    7/6時点の10年債利回り2.934%―2年債利回り2.996%で、▲0.062%の逆転。
    加えて、5年債・2年債の利回りでも、逆イールド▲0.016%が発生。
    なお、30年債利回りは3.127%と、2年債利回りとはかろうじて逆イールドならず。

●3.シティの見方、景気後退が直撃なら、原油は年末65ドル、2023年末45ドル(ブルームバーグ)

●4.LME銅価格は1年7カ月ぶり安値、世界的リセッション懸念根強い(ブルームバーグ)

●5.米6月ISM非製造業景況指数は55.3と、25カ月連続で活動拡大(フィスコ)

●6.米5月JOLT求人件数は1125.4万件数、予想を上回り、求人が依然十分にある(フィスコ)

 1)なお過去最高近辺で、前月比で減少も労働需要底堅い(ブルームバーグ)
 2)総失業者数595万人の2倍の求人が十分にあることを証明した。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)7/4、上海総合+17高、3,405(亜州リサーチより抜粋
  ・中国経済対策の期待感が相場を支える流れ。
  ・先週の国務院常務会議では、約6兆400億円の債券を発行し、重大プロイジェクトを支援する方針が示された。
  ・中国政府はこのところ、産業支援や消費拡大、雇用安定などの対策を矢継ぎ早に策定しており、足元の製造業景況感が改善した点も改めて材料視された。
  ・国内の新型コロナ感染再拡大などを不安視した売りが先行したものの、下値は堅く、プラスに転じた。
  ・業種別では、医薬品の上げが目立ち、発電も高く、エネルギー・軍事関連が買われた。反面、ハイテクは冴えず、不動産・銀行・保険・自動車・空運が売られた。

 2)7/5、上海総合▲1安、3,404(亜州リサーチより抜粋
  ・米国による対中国関税を巡る警戒感がくすぶる流れとなった。
  ・バイデン米大統領は早ければ今週中にも、中国の消費財に対する関税の一部撤回を発表する可能性があると伝えられる一方、中国政府の産業補助金に対する新たな調査を始動するとの観測が広がった。新たな調査については、テクノロジー製品など戦略的分野での更なる関税につながる恐れがあるという。
  ・また、中国の新型コロナ再拡大が不安材料だ。感染拡大が顕著な中国東部の安徽省では、7/1までに複数エリアで封鎖措置を導入した。
  ・関税の一部撤廃をはやした買いが先行したものの、上値は重く、マイナスに転じた。
  ・業種別では、ITハイテク関連の下げが目立ち、消費関連も安い。エネルギーは高い。

 3)7/6、上海総合指数▲48安、3,355(亜州リサーチより抜粋
  ・中国の新型コロナ感染再拡大が不安視される流れとなった。感染拡大が顕著な安徽省で封鎖措置が一部導入されたことに続き、西安市でも7/6から7日間の移動制限措置が実施された。また、コロナ防疫戦の「勝利」を先月宣言した上海市政府は7/5に大規模検査を再開する方針を示した。社会活動の停滞が景気を冷やすと懸念された。
  ・原油安も逆風。WTI原油先物は▲8.2%安と急落、一時4月下旬以来の安値を付けた。
  ・業種別では、エネルギーが下げを主導し、非鉄・鉄鋼・建材・不動産が安い。
     

●2.新興国の債務軽減交渉、債権大国の中国が協力せず(ロイター)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)7/4、日経平均+218円高、26,153円(日経新聞より抜粋
  ・米長期金利の低下を受けて、7/1の米株式相場が上昇し、東京市場でも投資家心理が上向き、上げ幅は一時+300円を超えたが、戻り待ち売りや利益確定売りで伸び悩んだ。
  ・7/1の米国ハイテク株の物色が活発、東京市場でも高PER(株価収益率)の成長株や自走車・機械など幅広い銘柄に買いが入って、相場を押し上げた。
  ・日経平均は7/1までの3営業日で▲1,100円超下げたため、自律反発狙いの買いや、売り方の買い戻しが入りやすかった。
  ・米市場が独立記念日の休場で、外人の市場参加者が少なく、上値追いの勢いを欠いた。
  ・「米景気の先行き不透明感の根強さなどから、積極的に買いを入れる状況ではない」との声もあった。
  ・エムスリーやリクルートが上昇、東電・関西電が買われ、三井物産・三菱商事も高い。反面、Jフロント・三越伊勢丹が売られ、リコー・エプソン・KDDIが下げた。

 2)7/5、日経平均+269円高、26,423円(日経新聞より抜粋
  ・米株価指数先物高を受け、主力株の一角に買いが入り、136円まで円安となったのも追い風となり、上げ幅が一時+370円超となる場面があった。
  ・日経平均の影響度が大きいファストリが+4%高となり、1銘柄で103円押し上げた。
  ・26,500円を上回る水準では戻り圧力が強くなり、5日移動平均26,467円も意識され、上値が重くなった。
  ・今週7/8にはETFの決算が集中し、分配金捻出に絡んだ売りへの警戒も重荷だった。
  ・バンナム・ソフトバンクG・KDDIが上げ、海運・不動産が軒並み下げた。

 3)7/6、日経平均▲315円安、26,107円(日経新聞より抜粋
  ・米国の積極的な金融引締めなどを背景に、世界景気後退の懸念が広がっており、東京市場でも投資家心理の重荷となった。
  ・前日の欧州株式市場では、ロシアによる天然ガス供給停止への不安に伴うエネルギー高が景気悪化を招くとの懸念が強まった。
  ・米債券市場では、景気後退の予兆とされる「逆イールド」が発生し、世界景気の後退懸念が重荷となって、東京市場では景気敏感銘柄を中心に売りが出た。
  ・一方、前日の米長期金利の低下を背景に、グロース(成長)株の一角が買われた。
  ・日揮・東ガス・東電・住友鉱・川重・第一生命が売られ、エーザイが買われた。

●2.日本株 : 外人の株式先物買い手口の増加がピークアウト、注意

 1)外国人株式先物の買い状況
  ・7/1から+1,087枚と買い開始⇒7/5+5,879枚⇒7/6+2,043枚と、買いピーク過ぎる。
  ・外国人の買い枚数が減少に転じると、国内勢の売り圧力が優勢となり、日経平均は下落に転じるパターンが最近の状況になっている。6/22~7/1のケースに似た動きであり、注意したい。

 2)短期筋の外国人による買い仕掛けであるため、短期回転狙いとなっている。
  ・野村が、外国人短期筋の逆張りで対抗しているのも特徴。

●3.5月実質賃金は▲1.8%減、4月は▲1.7%、物価高で2カ月連続マイナス(時事通信より抜粋

 1)新型コロナ感染拡大で経済活動の停滞が響いた2020年7月の▲1.8%以来の大きさ。

 2)厚生労働省の毎月勤労統計調査で、物価高が家計に与える影響が鮮明になってきた。

●4.企業業績

 1)ニトリ   第1四半期決算の営業利益は前年比▲13.7%減の+369億円(フィスコ)
 2)アスクル  2023年5月期純利益+94億円、前期比+2%増 (日経新聞)
 3)クスリのアオキ 2022/5月期営業利益+140億円(フィスコ)
          2023/5月期予想営業利益+152億円・+8.0%増
 4)イオン   第1四半期の営業利益+12%増の+439億円(フィスコ)

■IV.注目銘柄(投資はご自身の責任でお願いします)

 ・1942 関電工    業績堅調
 ・4443 Sansan    業績好調
 ・8267 イオン    業績好調

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

記事の先頭に戻る

関連キーワード

関連記事