日本車は「国産カメラの世界席捲」が手本だ

2022年6月28日 07:37

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Photo: 1963年頃の高校時代、品薄で発注後半年以上待たされてやっと手許に届いた愛機のNikon-F ©sawahajime

Photo: 1963年頃の高校時代、品薄で発注後半年以上待たされてやっと手許に届いた愛機のNikon-F ©sawahajime [写真拡大]

  • Photo:南米のエンジン車による脱炭素を報じた日経 ©sawahajime

●EV車しか生産出来ない国に向けて

 世界を席捲した国産カメラの様に、内燃機関搭載の「自動車」を諦めて、限定的な用途にしか十分な活躍の場の無い、「EV車」にシフトした各国に対しては、日本が「クリーンディーゼル車」「HV(ハイブリッド)車」「PHV(プラグインハイブリッド)車」「FCV(燃料電池)車」「水素エンジン車」を供給すれば良い。

【こちらも】日本の電力事情とEV車押しの是非

 日本車は国産カメラのポテンシャルを目指せば良いのだ。

●世界のカメラ市場

 現在、海外の報道機関が使用するカメラの殆どが日本製で、日本製品を排除したいとキャンペーンする国も、自国製は無くて、日本製を恥も外聞も無く使用している。

 まともな高性能カメラが自国で調達出来ないから、日本製に頼らざるを得ないのと同様に、高性能な内燃機関を搭載した自動車(HV車、PHV車、クリーンディーゼル車)が自前で対応出来ない国には、日本が手を差し伸べてやれば良いのだ。

●昔の名品カメラは外国製が主流

 昔はカメラと言えばライカ(Leica)、ローライ(Rollei)、ハッセルブラッド(Hasselblad)、リンホフ(Linhof)、スピードグラフィック(Speed Graphic)、コダック(Kodak)といったところが有名で、ドイツ、スエーデン、アメリカといった国々の製品だった。

 フイルム性能との関係から、昔のカメラフイルムは大きなサイズが主流であった。

 大昔の記念写真、集合写真の撮影風景を見ると、三脚にセットした大型カメラに撮影者が布を被って構えている。

 それから少し時代が下がっても、大相撲の土俵下にはスピグラ(スピードグラフッイック)を構えた新聞社のカメラマンが1発勝負の「決定的瞬間」を狙ってシャッターチャンスを待っていた。

 フラッシュ発光電球1回限りの、文字通り一発勝負だった。

 1950年代以前35mmフイルムカメラの主流はあくまでも、レンジファインダーカメラだった。それは、35mmフイルムカメラの元祖であるライカがレンジファインダーカメラであり、他の35mmフイルムカメラはライカがお手本だった。

 そんな歴史を塗り替えたのが1959年に登場したニコンFである。

 35mmフイルムカメラの主流を、それまでのレンジファインダーカメラから、交換レンズも豊富で、超望遠も見たまま撮れる一眼レフカメラへと一挙に塗り替えた。

●スマホのカメラ機能

 現在はスマホのカメラ機能が、一昔前の「コンパクトカメラ」に取って代わったが、「自動車の世界におけるEV車の性能」は、丁度「コンパクトカメラの低レベル版」程度の性能だろう。

 芸術的なレベルの写真を撮影したい人たちや、報道写真、スポーツやファッション写真の撮影者は、それなりの性能を備えた高機能カメラを使用する。

 そんなプロ仕様のカメラに相当する「自動車」は国産車で全てカバー出来る。

●国産カメラが世界市場を席捲

 現在は、国産カメラが世界を席捲している。

 世界のカメラメーカーTOP5のブランドは日経新聞が行った2020年の「主要商品・サービスシェア調査」によると、デジタルカメラはキヤノン、ソニー、ニコンの3社だけで8割を超す世界シェアを握った。

 この市場はもともとスマートフォンの普及で縮小傾向にあり、20年は新型コロナが追い打ちとなり、世界市場は約4割縮んだ。

 デジタルカメラ(出荷台数885万台、-40.3%)
 1)キヤノン 47.9%(+2.5)
 2)ソニー 22.1%(+1.9)
 3)ニコン 13.7%(-4.9)
 4)富士フイルムホールディングス 5.6%(+0.9)
 5)パナソニック 4.4%(-0.3)

 この5社だけで93.7%となるが、この他にもオリンパスやリコー(ペンタックス)があるので、日本のメーカーが世界を席捲しているのが明白だ。

●内燃機関搭載自動車から脱落した国へ

 内燃機関由来のHV車、PHV車、クリーンディーゼル車は、他国がEV車に特化しようとするのなら、日本が世界に対して供給すれば良い。

 加えて、FSV(燃料電池車)や水素エンジン車も日本には存在する。

 他国のEV車は、カメラで言えば「高機能モデル」以外の、「写るんです」の様な簡略カメラと言える。

 限定的な環境での内燃機関自動車の補完的な用途の輸送手段として、夫々の国の技術レベルに合わせて「自国消費」し、EV車以外は日本に任せれば良いのだ。

●「南米、エンジン車で脱炭素」

 ここへ来て、各国の電力事情もあり、殊に新興国に於いては電動車導入のインフラ投資が高コストである事が大きな障害となっている。

 6月22付日本経済新聞には「南米、エンジン車で脱炭素」との記事が掲載された。

 バイオ燃料の先進地である南米市場では、EV車の普及は現実的では無い。

 『未来のクルマ社会はどうなる 開発途上国』(2020年8月24日)で述べた通り、彼等には、内燃機関搭載の自動車以外は考えられない。いい加減に中国のEV推しと、それに追従したヨーロッパのEV転換の思惑に気が付くべきだろう。

 国産車は、高機能カメラと同様、世界市場への供給を担えば良いのだ。「国産カメラの世界席捲」が手本だ。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る

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