実施企業減少傾向とされる、「株主優待策」の現状と今後の一考察

2022年6月4日 06:58

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「株主優待投資」と言えば、桐谷広人氏。元プロ棋士、7段。1度だけ経済誌主催の講演会で、話を聞く機会があった。「株式資産約4億円」という御仁の投資話だけに、興味深くご高説を賜った。

 桐谷氏が保有している銘柄は「長らく株主優待を続けている企業」で「中長期でみると安定的な(修正後)株価パフォーマンスを残している企業」。かつ株主優待の中身が「金券or現金換算が可能」なこと。「テンバーガー株予備軍など買ったら安心して投資が楽しめない」とも言い、「現金配当+優待策の総合利回りが4%超、というが僕の投資法」とした。

 株主優待に関しては最近、昭栄薬品(東証スタンダード)を取材した際に「隠れ株主優待」というのを初めて知った。「隠れ」と称されるくらいだから、通常とは異なる。昭栄薬品の財務担当者は「かつて、ある目的をもって数期間実行したことがある。だがいまは目的を達成したので行っていない」とし、具体的にこう説明してくれた。

 「中間期毎に株主に対しアンケートを送付。応えてくれた株主に500円分のQuoカードを贈呈した。要は個人株主の求めているものを知りたかった。安定した個人株主を増やすためには、なにが不可欠かをリサーチしたかった」。1つの「株主との対話法」だと感じた。

 ところでいささかデータは古いが、野村IRの調査を基に2021年4月15日の日経新聞電子版が『株主優待、実施企業11年ぶり減 昨年度、業績悪化や配当重視』と題する記事を配信している。具体的には21年3月末で株主優待実施企業は1516社。上場企業の約4割。「個人株主獲得のため2010年代は増加傾向が続いてきたが、20年の新型コロナウイルス感染の拡大で廃止する企業が急増した」という内容。

 確かにコロナ禍の影響を強く受けた「旅行」関連業界や「飲食」関連業界で、廃止が確認できる。前者では、旅行比較サイトを運営する:オープンドア(東証プライム)がQuoカード配布を見送った。後者では庄やなどを展開するかんなん丸(東証スタンダード)が、食事券の配布を休止した。果たしてアフターコロナとなった際には復活するのかどうかは、目下のところは両社とも「定かではない」としている。

 経済状況の変化に伴う株主優待策減少と同時に、こんな指摘もある。「外国人株主への不公平感」。確かに生活の基盤を日本に有さない海外投資家にとって、「金券相当」は「あだ花」と言える。が、外国人投資家が最も重要視するのは「配当」。日本円での配当は円安のいま「ウェルカム」とは言いづらい。だとしたら、1つの方策として例えば「円転換」が出来る外貨建てQuoカードを用意することは不可能だろうか。考慮する価値あり、と思うが・・・(記事:千葉明・記事一覧を見る

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