ベテルギウスの大減光、気象衛星「ひまわり」の観測データから解明へ 東大

2022年6月1日 17:52

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 オリオン座に赤く輝くベテルギウスは、誰もが知る赤色巨星の代表格だが、2019年後半から2020年にかけて明るさが1.2等級も暗くなる大減光が起き、超新星爆発の前兆かと話題になった。もし超新星爆発が起きたなら、これまでに人類が経験したことのない程の明るさで、昼間でもはっきりと認識できただろう。だがこの時は超新星爆発ではなかった。

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 最新の情報では、ベテルギウスが超新星爆発を起こすのは今から10万年後で、残念ながら我々が生きている間に壮大な天文ショーにお目にかかれる機会は訪れそうにない。だとすれば、なぜベテルギウスで大減光が発生したのかは、非常に気になるところだ。

 東京大学の研究者らは、天体とは無縁と考えられていた気象衛星ひまわりの観測データを用いて、ベテルギウスの大減光の謎に挑んだ。その研究論文は、ネイチャーアストロノミーで公開されている。

 ひまわり8号の観測データにはベテルギウスの画像も含まれ、1日に1度、ベテルギウスの画像を取得できているという。研究者らはそこに着目し、2017年から2021年の取得データを分析。2019年に起きた減光時には、ベテルギウスの表面温度が140度低下していた証拠を見出した。またベテルギウスで新たに生成された星周塵が、光を遮る現象が起きていた証拠も見出すことに成功している。

 表面温度低下と星周塵の発生は、ベテルギウス大減光の原因としてこれまで多くの天文学者たちによって予測されていた。だが特に星周塵からの放射を検出できる中赤外線では、多波長監視観測が不足し、十分な検証ができていなかった。今回研究チームでは、気象衛星ひまわりの撮像画像から、中赤外線波長域でのデータを収集し、ベテルギウス大減光の原因を裏付ける証拠を見出すことに成功したのだ。

 今回の研究は、気象衛星が天体の中赤外線領域での有益なデータをもたらす宇宙望遠鏡として、機能することを実証した。これにヒントを得て、今後様々な天文研究分野に気象衛星が応用されてゆくことだろう。 (記事:cedar3・記事一覧を見る

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