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SMBC日興の相場操縦疑惑 東京地検特捜部が加わり、幹部の一斉事情聴取で・・? (下)
ブロックオファーのオーダーに、リスクなく対応する「悪魔のささやき」が株価を維持・上昇させるための買い注文を入れることだ。マーケットが終了する間際の「大引け」に買い注文を入れると、より効果的に終値に反映できることは言うまでもない。
【前回は】SMBC日興の相場操縦疑惑 東京地検特捜部が加わり、幹部の一斉事情聴取で・・? (上)
この大引けに入れる買い注文は「終値関与」と呼ばれ、相場操縦の代表的なテクニックの1つだと言う。そんな見え透いた小細工を、大手証券であるSMBC日興証券の社員がやっていた疑惑から始まった証券取引等監視委員会の強制調査に、東京地検特捜部が加わったと伝えられたのは2月になってからだ。
15日には、東京地検特捜部がSMBC日興証券の幹部に対する一斉の事情聴取を実施したことが判明した。当初から、買い注文に関わった担当者と当該部署や大株主への営業担当部署には疑惑の目が向けられていたが、当該取引を成立させるための情報(価格、数量等か)を、双方の部署で「共有」していた痕跡が確認されたようだ。
証券会社が関わることがあってはならない相場操縦が行われていたとしたら、その取引に関わる全てのものが社内で慎重に扱われていただろうことは容易に想像が付く。それでも説明と矛盾する事象を見つけるのが特捜部だから、何らかの綻びが押さえられている可能性はある。
幹部に対して行われた一斉の事情聴取では、各人との応答内容が詳細に記録され、そこに生じた齟齬(そご)は、緻密に分析されている筈だ。
当初の強制調査で嫌疑が薄まれば調査の頻度や陣容が縮小されて、世間の関心が薄れた頃に、課徴金納付命令や業務改善命令などの勧告による行政処分が下されることになるだろうが、今回の事件は逆方向に進んでいる印象が強く、何らかの形で立件される可能性が感じられる。
そもそも、「ブロックオファー」というシステム自体の見直しが必要という思いが否めない。機嫌を損ねたくない大株主の依頼(市場外で当日終値程度で売却したい)に対して、全くの自然体で臨むことがあるのか、という疑問が湧いてくる。
利益目標に到達していない部署であれば、多少のことには目をつぶるということだってないとは言えまい。もし、そんな取引が日常的に反復されていれば、疚しさを忘れ勝ちになるのが人情だ。会社の資金で「買い」を入れて、投資家に売却して利益を確定させるという一連の行動が、社内だけで完結できるところに非常な危うさを感じる。
これまで相場操縦罪に問われた例は、地場証券で2008年に起訴された1件があるのみだ。今回幹部への事情聴取で「会社ぐるみ」と認定されるようなことがあれば、有力な大手証券会社で発生した破廉恥な事件として、日本の証券市場に対する信用を失わしめる、国際的な問題に発展する可能性まで秘めている。帰趨が注目される所以だ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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