相場展望1月24日号 米国株、取引終了前に急落続く不思議を探る 米金融引き締めサプライズ材料はまだ有り

2022年1月24日 08:42

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・日経平均、高値から▲10.2%減『調整期』入り

■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)1/20、NYダウ▲313ドル安、34,715ドル(日経新聞より抜粋
  ・米長期金利の上昇一服を受け、ハイテク株に買い先行したが、一巡後に景気敏感株を中心に売りが膨らみNYダウは下落に転じ、取引終了にかけて売りが強まった。
  ・FRBが早期に金融引き締めの動きが、米経済の景気減速につながるとの警戒が高まり、化学のダウ・建機のキャタピラー・マイクロソフトも下落に転じた。
  ・今週に入り、米株式市場は取引終了にかけて、売りが強まる展開が続いている。1/20も午後3時以降に急激に売りが膨らみ、安値圏で取引を終えた。市場では「株価が下落トレンドを強めているのを受け、機関投資家が午後に機械的に売りを出している」との見方があった。
  ・一方、好決算銘柄には個別に買いが入った。

【前回は】相場展望1月20日号 米ナスダック総合指数は『調整局面入り』 米金利は、上昇続き10年物は一時1.9% 日銀はインフレ対策の手を速めるべき時期

 2)1/21、NYダウ▲450ドル安、34,265ドル(日経新聞)
  ・6日続落は、2020年2/20~28(7日続落)以来、1年11カ月ぶり。
  ・米ハイテクの先陣を切って1/20に10~12月期決算発表をした動画配信ネットフリックスが▲22%急落し、来週以降に決算発表する主力ハイテク株に売りが広がる。
  ・米連邦準備制度理事会(FRB)の早期金融引き締めが、米景気の減速につながるとの見方が根強く、景気敏感株も引き続き売られた。
  ・米長期金利が1.75%近辺と1/20終値1.80%を下回り、景気後退懸念から金融株がも売られた。
  ・ナスダックは4週連続で下げ、アマゾン▲6%安、テスラ▲5%下げた。

●2.米国株は、『調整期入りが広がる』展開

 1)主要株価指数の下落状況
         最高値     1/21終値 下落幅  下落率
  NYダウ     1/04 36,799 ⇒ 34,225  ▲2,574 ▲ 6.99%
  SP500      12/27 4,791 ⇒  4,397  ▲ 394 ▲ 8.22
  ナスダック総合  11/19 16,057 ⇒ 13,768 ▲2,289 ▲14.26【調整局面入り】
  米・半導体株指数 12/27 4,039 ⇒  3,434 ▲ 605 ▲14.98【調整局面入り】
  日経平均     9/14 30,670 ⇒ 27,522 ▲3,148 ▲10.26【調整局面入り】
  TOPIX       9/14 2,118 ⇒  1,919 ▲ 199 ▲ 9.40

 2)個別株でも売られている状況
         最高値      1/21終値
  アップル 1/04  182.94 ⇒ 160.41 ▲12.32%安、
  テスラ  11/4 1,243.49 ⇒ 943.90 ▲24.09%安

 3)VIX恐怖指数
  ・不安心理が高まった状態と見られる20の水準を、さらに1/21は上昇し一時29.79(終値28.85)を付け、心理的節目の30に近づいた。
  ・30を超えると、不安心理がさらに高まり株は一段と売られやすい傾向がある。

 4)「米利回り低下、米株価下落」は、米景気後退を見た動き?
  ・FRB金融引き締め時の米10年物金利低下が続くと、米景気後退を示唆? 
  ・景気後退すると企業業績も鈍化。

 5)ハイテク株が多いナスダック総合指数は昨年6月以来の低水準、NYダウも下落傾向にあり、
特に、取引終了時間にかけての急落が目立つが、
  ・高すぎるPER(株価収益率)への不安感の増大
  ・金融引き締めによる金利上昇の進展予想
  ・先行きの景気の不安と企業業績伸び率鈍化予想が高くなり
  機関投資家の積極的な買いが続かない、あるいはポジション縮小の売りが考えられる。

 6)とりわけ今週に入って、前場は上昇して始まっても、大引けにかけ上げ幅を縮小またはマイナスに転じているケースが目立つ、のが気になる点だ。バンク・オブ・アメリカ(BofA)の調査によると、機関投資家の判断としてハイテク株は高くなり過ぎとして、評価をアンダーウェイトに下げ、売却してポジションを縮小している、という。

 7)また、一握りの好業績&大型銘柄に買いが集中している、のが最近の株式市場の特徴。
  ・この好業績・大型銘柄は、売買が多いため流動性が高い点にある。「流動性が高い」銘柄への投資は、いざという時に売却して「資金化できる」というメリットがある。つまり、投資家は『いつでも株式市場から逃げる準備をしている』とも言えよう。その点、小型株は出来高が少なく、流動性が低いため、資金化したいときに現金を得られないため、業績良好でも買いが敬遠された結果、株価指数が下落していると思われる。
  ・この状況から、市場参加者において株式市場への信頼感が薄らいでいるのがみてとれる。

 8)ウクライナへのロシア軍事侵攻問題が脚光を浴び、原油・株式市場への影響が懸念。

●3.金融サプライズ・2022年(予想)

 1)金利      織り込み済  サプライズ
  (1)利上げ回数  3回      4回
  (2)利上げ幅   0.25%     0.50%
 2)資産縮小開始月 10~12月   3~8月

●4.米ウクライナ大使館家族に退避命令、米FOXニュース1/22報道

 1)当局者の1人は、米国務省が一般の米国人に対しても民間機で退避を促す見通しを明らかにした。

●5.米FRB、金融引き締めへの「地ならし」を本格化、FOMC開催は1/25~26(時事通信より抜粋

 1)米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)は、1/25~26に金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)を開催する。

 2)インフレ率が約40年ぶりの高水準に跳び上がるなか、FRBは金融引き締めに向けて「地ならし」を本格化すると見られる。

 3)FRBは、国債などの資産購入を通じた量的金融緩和策を3月までに終了する。今回のFOMCでは、3/15~16のFOMCでゼロ金利解除を確認し、さらに今回のFOMCでは次回3/15~16会合のFOMCでのゼロ金利解除が確認の模様。

 4)米国の消費者物価指数は直近の2021年12月に前年同月比+7.0%上昇と、1982年以来の高い伸びを記録した。市場では2022年内に4回の利上げ観測が浮上している。

 5)9兆ドル(約1,000兆円)に膨張したFRB総資産縮小についても、議論される見通し。総資産縮小は長期金利の上昇につながると見られており、FRBは開始時期などを慎重に検討するだろう。

 6)サプライチェーン(供給)制約や人手不足の問題は深刻化し、一段と長期化する恐れがある。一方、過度な金融引き締めには、景気回復に水を差しかねず、難しい舵取りに迫られている。

●6.米先週分新規失業保険申請件数28.6万件、予想22.5・前月23.0から悪化(フィスコ)

 1)3カ月ぶりの高水準で、オミクロンの影響か(ブルームバーグ)

●7.インテル、10年で最大11兆円の半導体工場投資(共同通信)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)1/20、上海総合▲3安、3,555(亜州リサーチより抜粋
  ・新型コロナ感染再拡大が不安をくすぶる流れとなった。
  ・冬季五輪開催を2月に控える首都北京市では、新規感染者数僅かながら増加し、新規クラスターも発生した。
  ・「ゼロコロナ」を目指す中国当局が行動規制を強化するなか、実体経済に対する影響が懸念されている。
  ・米金融当局による大幅利上げ観測が浮上し、新興国からの資金流出を警戒された。
  ・最優遇貸出金利の引下げ発表を好感して買先行したが、引けにマイナスになった。
  ・業種別では、ハイテク関連と医療関連が下げ、金融が高い。

 2)1/21、上海総合指数▲32安、3,522(亜州リサーチより抜粋
  ・中国景気の鈍化懸念がくすぶった流れとなった。
  ・新型コロナの新規感染者数が足もとで減少しているものの、北京冬季五輪の開催目前の2月を控え「ゼロコロナ」政策を進める中国は行動抑制の手を緩めていない。経済活動の停滞が依然として危惧されている。
  ・ただ、金融緩和に対する期待感は根強く、下値を叩くような売りは見られない。
  ・中国人民銀行は、前日に続き厚めの資金を市中に供給した。銀行貸出の指標となる最優遇貸出金利は、市場の予想通り1年物と5年物がそれぞれ引下げられた。
  ・業種別では、医薬品とITハイテク関連が冴えなく、石油・自動車が売られた。

●2.中国、2カ月連続の利下げ、景気下支え姿勢を鮮明化(産経新聞)

●3.中国共産党は、汚職摘発とインターネットプラットフォームの独占の背後にある腐敗行為などを調査する方針を示した(ロイター)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)1/20、日経平均+305円高、27,772円(日経新聞より抜粋
  ・前日は▲790円下げた後で、値ごろ感から幅広い銘柄に買いが入った。
  ・米株価指数先物が堅調に推移したことも、日本株の買い安心感につながった。日経平均は一時+400円を超える場面もあった。
  ・米株価先物が上昇すると、短期筋の買いが入り押し上げた。
  ・先日大きく下げたソニーが+5%超高、トヨタ、ソフトバンクGの主力大型株も上昇

 2)1/21、日経平均▲250円安、27,522円(日経新聞より抜粋
  ・前日の米株式市場の下落を受け、東京市場でもリスク回避の投資家の売りが出て、一時▲600円超となった。
  ・米国はインフレが進むなかで、金融政策を巡る不透明感が強まっている。
  ・外国為替市場では円高・ドル安が進み、輸出採算が悪化するとの思惑から自動車や機械など輸出関連株が下げた。
  ・生産計画の下振れ警戒もあって自動車、高株価の半導体関連の下げが目立った。
  ・売り一巡後は、主力銘柄に値ごろ感から買いが入り、下げを縮めた。大引けにかけては、週末を意識して、売り方の買戻しがあり下落幅を圧縮した。

●2.日本株も【調整局面入り】もしくは【調整目前】と気を抜けない状況

 1)1/20の+305円高は変調、この日経平均上昇は喜べない
  ・日経平均+305円高なのに、新高値8・新安値212と新安値銘柄が多く、日経平均上昇に寄与する僅かな銘柄への買いで上がった歪さがうかがえる。
  ・外資系は先物で▲5,311枚売越し⇒買い上がるエネルギーは国内勢だけは弱い。

 2)NYダウ・日経平均との差異 1/21は 6,703ポイントと幅縮小
   ⇒外国人から見ると日本株割安感なし、むしろ売り材料視のリスク

 3)米利回り低下、米株価下落が米景気後退を見た動きかも?
   ⇒FRB金融引き締め時の米10年物金利低下は、米景気後退を反映?に注目したい。

 4)日経平均は上昇には、米国株の下落率が足枷
  ・直近のNYダウ、ナスダック総合の下落率が、日経平均の下げ率を上回るため、日経平均に相対的な割高感が浮上してきたため。
  NYダウvs日経平均の単純差異 12/30 7,607 ⇒ 1/21 6,703と縮小

●3.貿易収支2021年は2年ぶりの▲1兆4,722億円赤字、資源高騰の影響(朝日新聞)

 1)財務省1/20公表の貿易統計
  ・輸出は、前年比+21.5%増の83兆0,831億円、輸入は+24.3%増の84兆5,652億円
  ・輸出は鉄鋼+48.1%増、自動車+11.9%増、半導体製造装置+23.2%増。
   輸入は原油+49.1%増、液化天然ガス+533.1%増、非鉄金属+64.3%増。

●4.企業動向

 1)住友鉱山  関東電化工業とリチウムのリサイクル技術確立、世界初(時事通信)
        電池から再資源化
 2)ユーグレナ 次世代バイオ燃料の実証試験、JR東海在来線ディーゼル燃料(フィスコ)
 3)トヨタ   国内12工場23ライン生産停止、最大3日間(1/21、22、24)(読売新聞)
         コロナ感染などで部品供給遅れ
 4)宝酒造   220品目を1~8%値上げ、6/1出荷分から(朝日新聞)
 5)日本製紙  約10%値上げ、4/1出荷分から(テレ朝)
 6)ホンダ   三重の鈴鹿製作所を2月上旬に稼働率を1割減(ロイター)
         1月稼働率1割減した埼玉製作所は2月上旬正常稼働の見通し
 7)日本製鉄  タイの鉄鋼電炉メーカー2社を買収し子会社化へ(NHK)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・2502 アサヒ  業績好調。
 ・2607 不二製油 業績堅調。
 ・2726 パル   業績好調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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